2014-06-10 松尾芳郎
図:(CFM International)GE-Safran合弁のCFM社が開発中の「CFM Leap-1」エンジン。ボーイング737X (CFM Leap-1B)とComac C 919 (CFM Leap-1C)には独占供給が決まり、エアバスA320neoではPW1100G-JMとCFM Leap-1Aのいずれかを選択できる。これまでにオプシオンを含め約6,000台の受注がある。一方のPW1000GシリーズはA320neoの半分とボンバルデイアCSeries、三菱MRJなどを含め5,500台以上の注文を得ている。
2013年9月にCFM Leap-1A初号機が地上試運転を開始、A320neoに搭載され就航するのは2016年7月を予定している。
Leap-Aの諸元は次ぎの通り。ファン直径78㌅(2.0m)、バイパス比11:1、全体の圧力比40:1、推力24,500~32,900lbs (109~146kN)。内部構成は、ファン+3段LPC+10段HPC+2段HPT+7段LPT。
737MaxはA320neoに比べ軽いのでLeap-1Bでは、ファン径が69㌅(1.8m)と小さくなり、これに伴いLPTの段数も5段に減っている。
図:(Safran)CFM Leap-1Aのファンブレード。ファンブレードとファンケースは共に炭素繊維複合材製で、フランスのサフランが開発、製造を担当している。
3次元炭素繊維編込み式ファンフレードは、737Max用のLeap-1Bでは18枚が使われる。前縁には耐久性を増すためにチタン合金板が嵌め込んである。素材の炭素繊維は、ヘクセル(Hexcel)社の”HexTow IM7”で、Leap-1のファンおよびファンケースに使われる。さらにA320neoのエンジンナセルもサフランが用意するが、これにはヘクセル社のHexPly炭素繊維プレプレグが使われる。
図:(Pdxlight)Pdxlightが調査した今年5月21日現在の次世代狭胴型機の発注状況と、エンジンの発注状況。機数ではオプションを含めて737Maxの3,000機に対し、A320neoは約4,000機とややリード。エンジンでは、737Maxを独占するCFM Leap-1がA320neoの半分を併せて2884機,つまり台数で5,768台を受注し60%のシェアを獲得、PWの20%を引き離している。
CFM Leap-1を製造するCFM Internationalは、米国GE社とフランスのサフラン(Safran)社が折半出資する合弁会社であることは、ご存知の通り。
サフランは、CFM Leap-1エンジンの受注が6,000台に達したことを受け、去る4月に米国ローチェスター(Rochester, N.H.)に、地元の有力企業アルバニー・インターナショナル社と共同でファンブレード製造工場を立ち上げた。既存のフランス工場と併せて年間1,400枚のファンブレードを製造する。そして順次設備を拡張、2019年には生産量を31,000枚まで引上げる予定だ。
アルバニー社は、サフランに「3次元に織り込んだ炭素繊維を樹脂注入成型法(RTM=Resin Transfer Molding)で成型したファンブレード」を供給する。素材の炭素繊維はヘクセル(Hexcel)社から購入、織機で3次元に編み上げ、必要な形に仕上げて樹脂と共にオートクレーブに入れ、真空、焼結する。1枚のファンブレードに使われるヘクセル製極細炭素繊維はおよそ17kmの長さにもなる。普通の2次元の含浸布を積層するブレードに比べ、3次元編み上げ構造は剥離が起きにくく、耐久性に勝れている。そしてブレード前縁にはチタン合金を貼付け鳥衝突や異物による損傷を防いでいる。
完成したファンブレードは、現在のCFM56-7に使われているチタン合金製ブレード(24枚使用)に比べ、1枚当りほぼ半分の重さだ。
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本稿作成の参考にした記事は次ぎの通り。
Seattle Times Dec. 6, 2012 “737MAX engine will push the envelope” by Dominic Gates
Reinforced Plastics.com 20 June 2013 “Paris Air Show 2013; Safran and Hexcel sign composite materials supply agreement for all LEAP-1 engines”
Aviation Week april 21, 2014 page 36 “Fanning Out” by Michael Bruno
Pdxlight May 21, 2014 “Airbus A320neo + Boeing 737MAX-orders and commitments