ロシア機が本州沿岸に接近、北朝鮮の弾道ミサイルに備える我国の防空体制を偵察


2016-02-08(平成28年) 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部の発表によれば、ロシア海軍の長距離哨戒機Tu-142型機2機が2月6日(土)に我国の東北地方沿岸に接近、暫く滞空してから立ち去った。航空自衛隊は戦闘機を緊急発進させて領空侵犯を防いだ。

折から北朝鮮弾道ミサイル発射に備え、青森県航空自衛隊車力分屯地にある米軍のTHAAD迎撃ミサイル用レーダーが作動中だったと思われる。ロシア機は、このレーダーを含む我国のBMD(弾道ミサイル防衛)活動に関わる情報収集が目的で接近飛行をしたようだ。

翌7日には北朝鮮が弾道ミサイルを発射した。これに対し我国は事前にSM-3迎撃ミサイル搭載のイージス艦3隻を日本海と東シナ海に展開、またペトリオットPAC-3ミサイルを首都圏3箇所と沖縄県の宮古島など4箇所に配置して万一に備えた。

02-6ロシア機

図1:(統合幕僚監部)航空自衛隊が2月6日に撮影したツポレフTu-142対潜哨戒機。これは空軍のTu-95戦略爆撃機を改造した海軍用の哨戒機で、1972年から配備が始まり改良を重ね、ロシア海軍では現在15機を運用中。全長53.1 m、翼幅50 m、離陸重量185㌧、エンジンはクズネツオフ(Kuznetsov) NK-12MPターボプロップ15,000軸馬力4基。行動半径6,500 km。

02-06 Tu-142

図2:(統合幕僚監部)2月6日(土)ロシア海軍の長距離哨戒機Tu-142の2機が秋田県男鹿半島沖合の日本海上空で暫く旋回、滞空してから青森県の沿岸を北上し、樺太方面に立ち去った航跡を示す。男鹿半島の北、青森県つがる市には航空自衛隊「車力分屯地」があり、ここにはペトリオット対空ミサイルPAC-3を持つ第6高射群の2個高射隊が配備され、さらに2007年から米軍のTHAADミサイル用XバンドレーダーAN/TPY-2が設置されているので、これらを調べに来たようだ。

THAADミサイルとは「終末高高度防衛ミサイル(Terminal High Altitude Area Defense missile)」の略で、敵の弾道ミサイルが大気圏に再突入する直前に交戦、撃破する防空ミサイル。「弾道ミサイル防衛(BMD)」システムの一つで、イージス艦のSM-3による大気圏外での撃破、ペトリオットPAC-3による大気圏内での撃破、の中間の高度で迎撃するのがTHAADシステムである。我国にはTHAADは配備されておらず、レーダーのみが配置されている。

 

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