2016-03-29 (平成28) 松尾芳郎
統合幕僚監部の発表によれば(2016-03-28)、午前4時半頃ロシア海軍艦艇3隻が対馬海峡を南下して東シナ海に入った、またほぼ同時刻に中国海軍艦艇2隻が鹿児島県南の大隈海峡を通過、太平洋に向かった。
すなわち;—
ロシア艦艇3隻が、上対馬の北東74 kmの海域を南西に進み東シナ海に入るのを、厚木基地第4航空群所属の哨戒機「P-3C」と下関第43掃海隊所属の「とよしま」が発見、追尾した。ロシア艦は「ウダロイI級」ミサイル駆逐艦1隻、「ドウブナ級」補給艦1隻、および「バクラザン級」救難曳船1隻だった。
中国艦艇2隻が屋久島の西130 kmの海域を東シナ海から太平洋に進むのを、佐世保基地第8護衛隊所属の護衛艦「すずつき」と、鹿屋基地第1航空群所属の哨戒機「P-3C」が発見、追尾した。中国艦は「ジャンカイII級」フリゲート1隻と「ダージャン級」潜水艦救難艦1隻であった。潜水艦救難艦が現れたのは珍しい。
図1:(統合幕僚監部)「ウダロイI級」ミサイル駆逐艦、艦番号572。同艦は去る2015-02-05に対馬海峡を南に航行した。ウダロイ(Udaloy)I級ミサイル駆逐艦は満載排水量8,500㌧の大型対潜艦。強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、対潜ヘリコプター2機、それにSA-N-9型個艦防空ミサイルを装備する。1980年から1991年にかけて12隻が就航し、現在8隻が現役にある。太平洋艦隊にはこの内4隻が配備されている。
図2:(統合幕僚監部)ドウブナ級補給艦(IRKUT)。満載排水量11,000トン、全長130 m、速力15ノット、艦船用燃料2,100トン、デイーゼル燃料2,000トン、真水900トンなどを搭載できる。太平洋艦隊に所属する補給艦は合計8隻、そのうちドウブナ型は2隻である。昨年8月16日に対馬海峡を北上した同級補給艦の姉妹艦。
図3:(統合幕僚監部)バクラザン級救難曳船(FOTIY. KRYLOV(SB135))
図4:(統合幕僚監部)中国海軍ジャンカイII「江凱II」級フリゲート、艦番号550「濰坊(Weifang)」は2013年に就役した新鋭艦。満載排水量約4,000㌧。潤沢な国防支出で現在同型艦は24隻に増えている。前甲板上の矩形状は対空ミサイル発射機32セルのVLS。艦中央には対艦ミサイル発射機2基が見える。
図5:(統合幕僚監部)潜水艦救難艦「大江」級(Dajiang)艦番号861「長興島(Changxingdao)。3隻が建造された。救難は、全甲板にある揚力58トンのクレーンで救助艇(DSRV)を吊り下げて行う。満載排水量12,000トン、全長150 m、後甲板にヘリ2機を搭載。
最後に今回ロシア艦艇を発見した掃海艇「685とよしま」と中国艦艇を発見した護衛艦「117すずつき」について簡単に紹介しておく。
図6:(海上自衛隊)写真は同級ネームシップの「681すがしま」。同級の掃海艇は「685とよしま」を含み、英国海軍「サンダウン級」機雷掃海艇(Sandown-class minehunter)を範にして建造された。「とよしま」は、「681すがしま」型掃海艇12隻中の5番艇で、2002年に就役、佐世保地方隊下関基地隊に配属されている。満載排水量590トン、全長54 m、速力14ノット、乗員45人、艇体はほとんど木製である。対機雷装備は英「サンダウン」級と同じC41STARと呼ぶ情報処理装置・機雷探知機・機雷処分装置が搭載されている。
図7:(海上自衛隊)護衛艦「117すずつき」。「115あきずき」級4隻の3番艦。同級は基準排水量5,050トン、ガスタービン4基、2軸、64,000馬力、速力30ノット、全長151 m、乗員200名、艦橋側面に見える大小のアンテナ(白色)はFCS-3A射撃指揮システムで、米国製発展型シースパロー対空ミサイル(ESSM)と組み合わせて使う。弾道ミサイル防衛に専念するイージス艦の護衛を主な任務とする。
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