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「明治日本の産業革命遺産」 ユネスコ登録から10年

本稿は鳥居徹夫氏の論考である。
「明治日本の産業革命遺産」が、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産に2015年(平成27年)登録されて10年になる。
幕末のペリー来航からわずか半世紀で、日本は世界有数の技術立国へと成長し、近代国家としての基盤を築いた。それまで幕府は、200年余の長きに渡って鎖国政策をとり、西洋科学に門戸を閉ざしていた。
その東洋の島国が、わずか半世紀で工業立国の土台を築き、急速に産業化した道程を、時系列に沿って物語っているのが『明治日本の産業革命遺産』である。
世界遺産登録から10年の節目にあたり、明治の先駆者の気概に思いを馳せながら、未来の技術革新と国際連携を見据え、あらためて更なる発展を期待したい。

世界が驚愕した明治日本、産業を興し近代国家へ

《教科書で教えたい近現代史(その9)》
本稿は鳥居徹夫氏による論考である。6年前の平成30(2018)年は明治150年であった。日本は、ペリー来航からわずか50年あまりで近代的な産業国家を建設した。幕末から明治にかけてのアジア地域は、ヨーロッパ諸国の強大な武力によって抑圧され、その波が日本にも押し寄せようとしていた。ペリー来航の10数年前、1840~42年のアヘン戦争で、中国大陸の大国「清国」がイギリスに大敗し、領土の割譲(香港など)と莫大な賠償金を支払わされた。鎖国をしていた日本が開国し、西洋技術を取り入れながら、自国の伝統の技を融合させながら、自らの力で人を育て、産業を興した。海外の科学技術と自国の伝統の技を融合し、産業化を成し遂げた。150年前の明治維新という変革期、また明治という時代は、困難な状況下でありながら、産業国家を作り上げた。主権と独立を守った明治日本の先駆者たちの苦闘とその気概を、あらためて認識することが、いまを生きる私たちに問われている。