ノースロップグラマンが開発中のX-47B無人機が2011年2月4日午後、カリフォルニア州エドワーズ(Edwards)空軍基地で初飛行に成功した。
試作1号機[AV1]は、同基地ランウエイ4Rを180ktの速度で離陸し5000ft(1700m)に上昇240ktに加速、飛行中はランデイングギアを出したまま速度を160ktおよび140ktに落とし操縦特性を確認しながら基地上空を周回し、29分後に着陸した。
着陸は、空母着艦を想定して行われ、ランウエイ中心線上で目標着地点の20m手前に正確に着地。これは空母艦上に設置されているアレステイングワイヤの1本目に相当する位置で、これで搭載されているフライトコントロール用ソフトウエアの完成度の高さが証明された。
米海軍は航空部隊の次の百年の目標として、ステルス性を備えた「空母搭載用無人偵察機[Uclass] (Unmanned Carrier-Launched Surveillance Systems)」プログラムを掲げているが、X-47Bの今回の成功はその重要な第一歩となる。
試作機[AV1]は2月中に、さらに3回の飛行を行なって無尾翼機の耐空性能を確認してから、3月に重心位置に関係する燃料システムの改修をする。その後試験飛行を再開し、運用可能限界を徐々に広げる。2011年末にはメリーランド州パチュ−ジェント(Patuxent)の海軍航空基地に送られ、ここでカタパルトを使った離陸実験とアレステイングワイヤを使った制動試験を含むブロックII試験を実施する。そして2012年後半にはバージニア州ノーフォーク(Norfork)基地、それからニュージャーシー州レイクハースト(Lakehurst)基地で空母運用を想定した試験を行なう。2013年からは「無人戦闘機システム実証試験計画(UCAS-D = Unmanned Combat Air System-Demonstrator)」の一環として空母での本格的な運用試験を開始する。自律的空中給油試験はその後に予定されている。
試作2号機[AV2]は既に完成していて、設計制限荷重の130%を加えるテストを実施、無事に完了している。これで空中給油時に想定される最大荷重2.4gに耐えられることを証明した。2011年3月にエドワーズ空軍基地に送られ、9月から飛行試験に入り、[AV1]機と共に速度、高度、荷重の限界を拡大する試験を続ける。
図:X-47Bの3面図、平面図に重ねて薄く示してあるのがF/A-18E/F、これでX-47Bの大きさが想像できる。右にある性能、諸元の表を和訳すると;—
Altitude: | 運用高度 | 40,000ft(12,000m)以上 |
Speed: | 時速 | High Subsonic(亜音速) |
Weapons Payload | 搭載兵装 | 4,500lbs(2,04kg) |
Max Unrefueled Range: | 無給油航続距離 | 2,100nm(3,900km)以上 |
MaxUnrefueled Endurance | 無給油航続時間 | 6時間以上 |
Sensor Provisions: | 装着可能センサー | EO/IR/SAR/ESM* |
Air refueling Provisions: | 空中給油方式 | 海空軍、両規格に適合 |
CV Demo TOGW: | 空母離艦重量 | 44,567lbs(20.4ton) |
Spot Factor (F/A-18C) | F/A-18C対比の専有面積 | 0.87 |
(注)*マークセンサーの意味:EO=Electro Optical (電子光学センサー)、IR=Infra Red(赤外線センサー)、SAR=Search and Reconnaissance(探索、偵察用レーダー)、ESM=Electronic Support Measures(電子戦支援システムの意味でレーダー妨害機能を含む総称した能力)
この他の諸元は;—
全長:11.6m(38.2ft)、翼幅:18.9m(62.1ft)、高さ:3.2m(10.4ft)、エンジン:P&W F100-220U推力23,700lbs
要約すると、X-47Bは全備重量20ton、大きさはF/A-18スーパーホーネットと同じ、ステルス性を持ち6時間以上(空中給油すれば10時間以上)飛び続け、広範囲な偵察機能、電子戦機能を備え、それに勝れた攻撃能力を持つ、と云う次世代の万能艦載機、と云ってよい。
図:2013年以降、実戦配備についたX-47Bが空母を離陸する想像図。
米海軍は前述の[Uclass]プログラムとして、X-37Bによる一連の試験が成功すれば、2018年には8機の無人艦載機を調達する予定だ。出来れば今年中にも各社に対しRFP(提案提出要求)を行ない、競争入札で本稿のノースロップグラマン製X-47Bの他に、同様なステルス性を備えた次世代型無人機である「ボーイング製X-45の改良型」、「ゼネラルアトミックス製アベンジャー(Avenger)」、「ロッキードマーチン製ポールキャット(Polecat)」等の提案提出を得て、機種を決める考えだ。
−以上-