−ヘリ空母タイプ「ひゅうが」級護衛艦の拡大改良型−
2013-08-04 松尾芳郎
2013-08-28 Revised
図:(海上自衛隊)「ひゅうが」DDH 181、基準排水量13,950㌧、満載排水量19,000㌧、全長197m、
図:(海上自衛隊)「いせ」DDH 182、「ひゅうが」型の2番艦
図:(海上自衛隊)搭載するSH-60Kヘリ、SH-60Jヘリを海自/三菱重工で独自に改良した性能向上機
図:上は「いずも」22DDH 183、基準排水量19,500㌧、甲板長さ248m、下は就役中の「ひゅうが」艦番号181、基準排水量13,950㌧,甲板長さ197m、の比較。 「いずも」は一回り大きい。航空機の出し入れに使うエレベーターは右舷後部の舷外と飛行甲板やや前部にそれぞれ装備。右舷中央には車両搭載に使うランプが用意されている。艦橋上部のレーダーは対空捜索と航空管制用のOPS-50。 下の「ひゅうが」は、エレベーターは甲板上に2ヶ所あり、艦橋上のレーダー・アンテナは三菱電機開発のFCS-3多機能レーダー用、艦首水面下にはOQQ-21ソナーの大型ドーム(長さ40m)を備えている。
図:(海上自衛隊)DDH22「いずも」の完成想像図、2015年3月に完成、就役の予定。
図:(Raython)SeaRAM対艦ミサイル防御システムは米独共同開発の近接防空ミサイル、ファランクスCIWSよりも遠距離で飛来する超音速飛翔体を捕捉撃破する。ミサイルは、AIM-9サイドワインダー空対空ミサイルをベースにFIM-92ステインジャー携帯型対空ミサイル用シーカーを組合せてキャニスター内に11発装備し、ファランクスCIWSに組込んだシステム。22DDHには左舷後方と右舷艦橋前に設置される。
平成22年(2010)と同24年(2012)に各1隻が認められ建造中の基準排水量19,500㌧型護衛艦の1番艦22DDH 183は8月6日に進水。進水式はジャパンマリンユナイテッド社磯子工場で午後3時15分から挙行され、艦名は「いずも」命名された。本艦は「ひゅうが」級護衛艦の拡大改良型で、本格的なヘリ空母タイプ、進水後艤装が行なわれて2015年3月には就役する予定。2番艦の24DDH(艦番号184)の完成予定は2017年。
「ひゅうが」級は基準排水量13,950㌧で、長さ197mの飛行甲板を備えたヘリ空母だが、護衛艦的要素も残し、対空ミサイルシースパローSAM 16基/対潜用アスロックSUM 12発用の16セル型VLS、それに対潜用魚雷など多数の兵装を備えている。
これに比べ22DDH「いずも」は「ひゅうが」より51m長い全長248mの飛行甲板を備え、空母的色彩をより鮮明にし、航空機運用能力を高めているのが特徴。搭載ヘリコプター機数は「ひゅうが」の10機から14機に増えている。満載排水量は公式発表で24,000㌧(Defense Industry Daily紙は30,000㌧と報道)の大型艦なので、対潜水艦戦闘などは行なわず、艦隊の中核としての運用を想定している。つまり単艦ではなく、イージス艦や僚艦防空能力のある「あきずき」級護衛艦などを伴い行動する予定。このため装備を簡略化し、結果として建造費は「ひゅうが」級とほぼ同じ1,200億円に収まっている。
「いずも」の備える兵装は、近接防空火器、すなわち「ファランクス20mm機関砲 CIWSブロック1B 」を2基と、対空ミサイル11発を収納する新しい「Sea RAM Mk15 Mod 31」を2基である。 搭載機は、ヘリコプターとされているが、状況の変化によっては固定翼機の運用も可能である。
米海兵隊は、強襲揚陸艦「ワスプ(USS Wasp)」(基準排水量28,000㌧、満載排水量41,000㌧、甲板長さ257m)級8隻にF-35B短距離離陸垂直着陸型機(STOVL)を搭載、運用を予定しており、現在離発着艦試験を繰り返している。「いずも」は「ワスプ」よりやや小型と云うもののF-35B運用にはさしたる支障はないと見られ、早くもF-35B搭載を期待する声が挙っている。
「いずも」は、海上自衛隊保有の艦船の中で最大の艦型となり、第二次大戦中の我が海軍の正規空母「飛龍」(基準排水量17,300㌧、甲板長さ227m)を超え、また主要戦力として活躍した「翔鶴」級(基準排水量25,700㌧、甲板長さ257.5m)に迫り、米海軍の「ヨークタウン(Yorktown)」(基準排水量19,800㌧、甲板長さ247m)級と同サイズとなる。 22DDH「いずも」の進水で我が海自の評価は一段と高まり、就役した暁にはその存在は国民的誇りになるであろう。一日も早い完成が待たれる所以である。
−以上−