JAXA新型ロケット「イプシロン」を8月22日に打上げ


2013-08-06  松尾芳郎

2013-08-28 Revised

イプシロンロケット

図:(JAXA)「イプシロン」発射の想像図。全体は3段式ロケットで重量90.8㌧、全長24.4m、直径2.6m。軌道投入能力は低軌道で1,200kg、太陽同期軌道で450kg。前身のM-5に比べ安価で即応性の高い小型ロケットとして開発された。

 

去る5月21日にJAXA(宇宙航空研究開発機構)は、開発中の固体燃料ロケット「イプシロン」(Epsilon Launch Vehicle)を8月22日の午後鹿児島県内之浦から打上げると発表したが、27日に延期され、これも再度延期とななったが、何れにしても数日中には発射される予定。

「イプシロン」はJAXAとIHIが開発する新型ロケットで、2003年5月に小惑星探査機「はやぶさ」を打上げたM-5ロケットの後継機。M-5ロケットは開発完了後13年経過した、その後進展のなかった固体ロケットシステム技術の継承と発展を目的に開発されたのが「イプシロン」である。併せて、M-5と比べ大幅な費用削減も狙っている、すなわち打上げ費用では75億円から38億円に、ランチャー据え付けから発射までの日数は42日から7日に、衛星最終アクセスから発射までは9時間から3時間に低減する。

開発費は205億円でM-5の4割減としたが、これは既存の技術の活用に依る所が大きい。すなわち「イプシロン」は全体が3段構成となっている。この内、1段目モーターはH-IIAロケットの固体燃料ブースターを転用、2段目、3段目のモーターにはM-5ロケットのそれぞれ3段目と4段目のモーターを改良して搭載してある。

打上げ能力の比較では、地球低周回軌道投入の重量(つまり衛星の重さ)はM-5の1,800kgに対し「イプシロン」は1,200kgで7割と少なくなるが、軌道投入精度は液体ロケット並みで格段に勝れている。

「イプシロン」の開発で特筆すべきは、ロケットの知能化で、搭載機器の点検をロケット自身が自律的に行なう点である。云ってみれば何処にロケットがあってもネットワークにパソコンを接続するだけでロケットの管制ができる“モバイル管制”で、「究極の管制システム」とJAXAは呼んでいる。

今回打上げる衛星は、日本電気が製造した惑星分光観測衛星(SPRINT-A)で重量340kg、高度約1,000kmの地球周回軌道に乗せる予定。搭載する分光器は紫外線領域でX線に近い最も波長の短い「極端紫外線(EUV)」領域をカバーするセンサーである。

[SPRINT-A]は地球周回軌道から金星、火星、や木星などの大気がどのようにして宇宙空間に逃げ出しているか、これに太陽風がどのような影響を及ぼしているのか、そのメカニズムを調べる宇宙望遠鏡である。金星では水分が逃げ出したため二酸化炭素が中心の乾燥灼熱の世界となり、火星は炭素成分の多くが逃げ出し、寒冷の世界となっている。このなぞを調べようと云う世界初の試みである。

惑星分光観測衛星

図:(JAXSA)惑星分光観測衛星(APRINT-A)が地球周回軌道に投入された様子。

 

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