–航空自衛隊F-2戦闘機スクランブル発進で警告行動—
2013-08-24 小河正義
写真:(航空自衛隊)玄界灘上空で領空侵犯をしたロシア空軍Tu-95戦略爆撃機。
図:(航空自衛隊)露空軍Tu-95の飛行コース、沖の島北西で領空を侵犯した。
ロシア空軍の戦略爆撃機2機編隊が8月22日正午過ぎ(日本時間)九州北部の玄界灘上空で公然と領空侵犯した。航空自衛隊のF-2戦闘機のべ4機が緊急発進(スクランブル)し警告行動に出た。露空軍機は警告を無視し1分39秒間、日本の領空を侵犯した。露軍機の領空侵犯は今年に入って2月7日,北海道北西沖のスホーイ戦闘機2機編隊に次ぎ2度目。航空自衛隊が日本上空のスクランブル任務を引き継いで以降,旧ソ連時代も含め露軍機の領空侵犯はこれで35件目。日本政府は外務省を通じ駐日露大使館に厳重抗議した。
防衛省の公式発表によると、ロシア空軍機の領空侵犯事件が発生したのは平成25年8月22日午後零時9分31秒から同11分10秒間の1分39秒間。侵犯機は露空軍所属トゥポレフTU-95『ベア』4発エンジンの戦略爆撃機2機編隊だった。航空自衛隊西部航空方面隊の防空レーダーが朝鮮半島西方の黄海上空から九州方面に南下接近する複数の国籍不明機を発見。防空識別圏越えが確実で、福岡県東部・築城基地にスクランブル発進命令が下った。24時間待機体制の第6航空隊所属F-2要撃戦闘機2機が直ちに発進。国籍不明機を露空軍爆撃機2機編隊と確認し、日本領空侵犯の可能性が強いと再三警告した。しかし露側は警告を無視し、福岡県沖の島北西,玄界灘上空(東経129度52分、北緯34度15分~東経130度00分、北緯34度27分)の日本領空を公然と侵犯した。その間1分39秒。航空自衛隊はのべ4機のF-2要撃戦闘機で対応したが、露空軍機の国際法無視を食い止められなかった。警告射撃の有無は明らかではない。レーダーの追尾記録では露空軍爆撃機編隊は朝鮮半島沖の日本海を北上後、反転し再び壱岐、対馬の両島の間を領空間際で引き返し西北方へ飛び去った。
露空軍機の領空侵犯の背景は明らかではない。ただ東京の国際軍事筋は今月19~30日にかけて米軍3万人、韓国軍5万人を投入した朝鮮半島有事を睨んだ米韓合同演習『ウルチ・フリーダム・ガーディアン2013』への威嚇と偵察が絡んでいると見る。しかし、何故日本領空を侵犯したのか航法ミス, 航空自衛隊のスクランブル体制のチェック両面から今後分析が必要だ。
防衛省によると露軍機の日本領空侵犯の最新の事例は平成25年2月7日北海道利尻島南西海上で露空軍戦闘機スホーイSU-27機戦闘機2機編隊のケースがある。千島列島のうち南部の北方4島帰属を巡る、日露領土問題の解決へ向け安倍・プーチン首脳会談で事務当局間の交渉加速が動き出し、ラブロフ露外相訪日の地ならしが進行しているかに見える。しかしクレムリンの権力の深層は軍、治安機関からなる”シロビキ”勢力が圧倒的だ。日本外交当局者の対露観は甘すぎると欧米外交筋の評価だ。今年に入り2度目の露軍機の日本領空侵犯事件は、はしなくもそうした見方を裏付けた。スクランブル任務につくF-4EJ改『ファントム』老朽化への対応でF-35『ライトニングⅡ』の導入が決定はした。が開発製造の遅れで要撃戦闘機戦力に”空白”が生じてはならない。尖閣列島周辺での中国軍の不気味な動きと露空軍の動向等から、F-15SEサイレントイーグル、ユーロファイターいずれかの導入による防空体制危機乗り切り策が今後浮上するかもしれない。
☆ 『露国防省,領空侵犯を否定』
ロシアの有力メディア『ノーボスチ通信』は露国防省が「露空軍爆撃機編隊の領空侵犯の事実は無いと否定した」と報じた。同国防省は露空軍の戦略爆撃機トゥポレフTU-95『ベア』が2機編隊で福岡県沖の島近くを飛行した事実は認めたものの,あくまで公海上を飛行し領空侵犯の日本側の抗議は当たらないと退けた。
[(航空自衛隊)露空軍・戦略爆撃機編隊が日本領空を侵犯した航跡]
[(航空自衛隊)公然と日本領空を侵犯した露空軍・戦略爆撃機トゥポレフTu-95″ベア”]