ー露骨になった威嚇飛行、実効支配で日本を揺さぶるー
2013-09-09 小河正義
図:(防衛省)中国空軍爆撃機H-6の2機編隊が沖縄本島–宮古島間を通過した経路
図:(防衛省)領空に接近し飛行した中国空軍爆撃機H-6、空自F-15戦闘機が撮影
中国空軍の核武装可能な爆撃機が2機編隊で、日本の南西諸島に接近し航空自衛隊はスクランブル(緊急発進)で警戒監視に当たった。第一列島防衛線といわれる沖縄本島ー宮古島の空域を通過し西太平洋への往復飛行を実施した。中国側のこの種のフライト確認は7月24日のY8早期警戒機接近以来。爆撃機の通過確認は初めて。中国は、尖閣列島の”実行支配”に向け南西諸島での空、海軍の対日圧力を着実にエスカレートし始めたのが気がかりだ。
防衛省統合幕僚監部によると、9月8日午前、沖縄県・南西諸島へ向け東シナ海を南下する複数の国籍不明機を航空自衛隊、南西航空混成団の防空レーダーがキャッチした。領空侵犯を食い止めるため、那覇基地で待機中のF-15『イーグル』戦闘機、2機にスクランブル(緊急発進)を命じた。該当機はパイロットの目視確認の結果、中国空軍の双発ジェット爆撃機H-6『轟』2機編隊と識別された。日本側が警戒監視する中で、中国の爆撃機は沖縄本島ー宮古島の空域を通過、西太平洋に一旦進出後、同コースを引き返し中国大陸方面に去ったという。幸い領空侵犯の事実は無かった。しかし空軍の核積載能力を持つ爆撃機が2機編隊で日本の南西諸島に接近飛行するのは尋常ではない。東京の国際軍事筋は尖閣列島の実行支配への中国側の巧妙な戦略が背後に読み取れると警戒している。
2020年の東京五輪開催で祝賀ムードに湧く日本に逆に”冷や水”を浴びせる格好で、サンクトペテルブルグのG20首脳会議で日中両首脳が短時間接触した等と浮かれてはならない。外交当局は甘すぎる。習近平政権の冷徹さが窺われる行動だ。
中国空軍の爆撃機H-6『轟』は旧ソ連が開発した双発ジェット爆撃機トゥポレフTU-16『バジャー』のライセンス生産の機体。1950年代の初飛行だが、中国空軍は同型機を空軍爆撃機部隊の主力機にしており、核兵器の搭載が可能だ。空中発射巡航ミサイルを搭載するH-6K型の性能向上機体を最近15機、導入したとの情報もある。