海上自衛隊、次期対潜哨戒機(P-1)10月飛行再開へ


『海上自衛隊、次期対潜哨戒機(P-1)10月飛行再開へ』

ー飛行中の全エンジン停止、原因解明。燃料供給ソフトウェアの改修で対応可能ー

2013-09-29   小河正義

飛行中の”全エンジン停止”という想定外のトラブルで飛行を停止していた海上自衛隊、次期対潜哨戒機(P-1)の飛行再開が決まった。10月から実施する。防衛省が原因を特定、部分改修でフライト再開に安全上問題ないと判断した。同型機の今後の導入は予定通り行なう。中国海軍が初めてSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)装備の新型原潜で来年から太平洋を作戦海域に本格的核の哨戒行動を起こすという。海上自衛隊の次世代対潜哨戒機の実戦配備加速は日米共同のハンター・キラー作戦遂行で重要な役割を担う。

海上自衛隊の次世代対潜哨戒機(P-1 )は、現有の主力機ロッキード、P3C『オライオン』が経年劣化に加え原潜の技術革新で性能上の限界が指摘され、後継機として開発、実用化が急がれてきた。防衛省技術研究本部が軸となり川崎重工(機体担当)、IHI(エンジン担当)が加わり実用化に漕ぎ着け、今年3月から神奈川県・厚木基地へ本格配備が始まった。しかし、引き渡し前の5号機のメーカー社内テストで高高度の高速機動飛行を実施中、4発のエンジンが停止する想定外のトラブルに見舞われた。手動でエンジン再起動が成功。機体は無事着陸したが、海上自衛隊は事態を重視し、再現実験等で原因の特定を急いでいた。

防衛省の発表だとトラブルの原因はP-1の量産化の過程でエンジンの燃料噴射弁の肉厚を増やす設計変更だった。それが裏目となり急激な機動飛行を行なうとエンジンの燃焼が一時的に不安定に陥り、4発のエンジン停止に繋がったという。同省では同種トラブルの再発防止対策として、エンジン制御ソフトウェア改修で対応出来る事を確認。改修後、飛行再開に踏み切っても飛行の安全性確保ができると判断した。厚木基地に配備済みの2機と製造過程の2機についてエンジン制御ソフトウェアの改修を実施。地上運転試験後、10月中に飛行再開の予定だ。

在京国際軍事筋によると最新の中国海軍動向分析で2014年に中国海軍はSLBMを搭載した新型原潜(タイプ094)を太平洋海域に進出させ、史上初の核の海中パトロールを開始するという。JL-2ミサイルを1隻あたり12発搭載、米国にとって新たな”核の第一撃の脅威”としてペンタゴンは対策に追われている。最近、沖縄本島-宮古島間の第一列島防衛線で中国の航空機、艦船の動きが顕著なのはSLBM原潜の本格行動開始の前触れとも見られている。

海上自衛隊の対潜哨戒能力は米軍からも折り紙付きの評価。P-1の実戦配備の計画通りの実施は日米共同のハンターキラー作戦遂行に欠かせない。

日米の対潜哨戒作戦で新戦力となるP-1は随所に革新的航空技術を採用した。『フライ・バイ・ライト操縦システム』実用化はは軍民を通じ世界初。パイロットの操作を光信号に変換、機内の光ファイバーをつうじて操縦翼面を制御する。敵の電磁波攻撃に抗耐性があり、高速大容量の伝送が可能で小型軽量化をもたらした。対潜水艦作戦では音響、磁気探知、光波、レーダーの各システムで最新技術を投入し、探知識別能力が著しく向上。高速、自動化された戦闘指揮システムと衛星通信システム採用で有事の際、戦闘能力に磨きがかかった。4発のターボファン・ジェットエンジン装備で敵潜水艦への到達時間が大幅に短縮された。米海軍が導入中のP-8A『ポセイドン』新対潜哨戒機にも遜色の無い性能を有する。各国が同機の実力を注視しており『中国海軍は新型、SSBN潜水艦(タイプ094)の”天敵”』(香港の軍事専門家)と警戒感を露にしている。機体、エンジンとも完全な純国産で、兵器国産化路線に新時代を開いたと言える。機体の性能仕様は次の通りだ。全長38m。全幅35.4m。全高12.1m。最大離陸重量80㌧。巡航速度833km。実用上昇限度13,250m。エンジンはIHI製XF7-10、ターボファンエンジンを4基、装備している。乗員は13人。