安倍総理の動静に全米が刮目。国益主張を貫いた"千両役者"(その1)


『安倍総理の動静に全米が刮目。国益主張を貫いた”千両役者”』(その1)

ー米有力メディアを虜にした存在感。”ウォール街のロックンローラー”の賛辞もー

2013-09-28     政治評論家   伊達国重

日本の総理が、米国訪問時にこれほど迄にスポットライトを浴びた事があっただろうか。ウォール街で、シンクタンクで、国連総会で安倍晋三のスピーチに全米のマスコミが刮目した。簡にして明瞭な中身。主張すべき、とりわけ国益が係わるテーマはひるまず訴えた姿勢がもっといい。在留邦人の大多数が、戦後初めて、あるべき日本の指導者像を見たと感激した。米国の反応も歴代総理と大いに違った。連日、有力メディアは安倍首相の動静を追い、ついには『ウォール街のロックンローラー』と巧まざる政治パフォーマンスに脱帽するほどだった。衆参両院選挙の大勝という政治基盤を背に安倍晋三は内外で”千両役者”の階段を上り始めた。

『皆さんが私を右翼の軍国主義者と呼びになりたいのであれば、どうぞ、そうお呼び頂きたい』。ニューヨークの共和党系シンクタンク『ハドソン研究所』で安倍晋三は一段と力を込めた。今回の訪米で白眉だったシーンの一つである。満席の聴衆はしばし沈黙の後、一斉に拍手したという。理不尽で無責任な批判には断固反駁し、一国の首相として国民の生命・財産を守ると決意表明を内外に鮮明にした瞬間だった。日本の総理が見せたかっこいい”開き直り”だった。いつまでも我慢しないぞとの愛国心の吐露である。

安倍総理の決意表明の真意を正しく理解すべく、同研究所での講演の要旨をおさらいしたい。安倍総理は、軍備増強に自信を得て、近隣諸国への領土的野心、侵略的な拡張主義を露にしている中国を念頭に名指しを避けながらこう切り捨てた。『軍事支出が少なくとも日本の2倍で、米国に次いで世界第2位という国がある。この国の軍事支出は毎年、10%以上の伸びを20年以上続いている。日本の防衛予算の増額は(対前年比)0.8%に過ぎない。もし、皆さんが私を右翼の軍国主義者とお呼びになりたいのであれば、どうぞ、そうお呼び頂きたい』。自民党政権時代も含め、訪米時、ここまできっぱり言い切った総理の事例を寡聞にして聞いたことはない。防衛費や対中批判は”タブー視”され、とにかく逃げの戦法だけが際立った政治が半世紀以上繰り広げられきた。安倍総理の台詞は歌舞伎役者の大見得が客席からやんやの喝采を浴びるシーンを彷彿させる。筆者も叫びたいくらいだ。『安倍晋三、よくぞ言ってくれた——』。

中国の軍事費の実態は、厚いベールに覆まれている。中国政府が好戦的な体質批判を恐れ、真相を隠蔽し続けているからだ。中国政府の発表だと2013年の国防予算は11兆1,100億円。対前年10.7%像で1989年以来のニ桁増の伸び。内部情報に詳しい北京ウォッチャーは『この数字には外国製兵器の調達費用は除外してある』。米国防総省の推計は『実際の公表額の約2倍、20兆円』と見る。それに比べると日本の防衛費は2013年度で4兆7,538億円。中国の四分の一だ。しかも大半は自衛隊員の給与等人件費が占める。航空機、護衛艦、戦車等装備の調達に当てる費用は限られる。こんなに少なくて大丈夫かと心配すら覚える。

日本の4倍の国防費を貪り軍拡路線をひた走る中国が安倍首相を『右翼軍国主義者』と断罪する理由をただしたい。悪意を込めたデマ宣伝そのものと言わざるを得ない。逆に『軍国主義者』のレッテルは北京の中国共産党指導部にそっくりおかえしする言葉だ。(続く)