令和6年3月、我国周辺での中露両軍および北朝鮮の活動と我国/同盟諸国の対応


2024(令和6年)-4-10 松尾芳郎

令和6年3月、我国周辺における中露両軍および北朝鮮の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し各方面から多くの発表があった。今月の注目すべきニュースは次の通り。

(Military threats from Chinese, Russian Forces and North Korean are tensed up in February 2024. Japan and Allies conducted multiple large scale exercises for retaliation. Following were main issues.)

以下にこれらニュースのうち、重要なものについて述べる。

3月2日発表:空自戦闘機は日本海および東シナ海上空で米B-52爆撃機と共同訓練

3月1日、空自小松基地第6航空団F-15戦闘機4機、築城基地第8航空団F-2戦闘機4機の合計8機は、入間基地中部航空警戒管制団と春日基地西部航空警戒管制団のレーダー支援を受けて、米空軍B-52H爆撃機2機と日本海および東シナ海空域で、各種戦術訓練を行なった。

図1;(航空自衛隊)3月1日、日本海から東シナ海の空域共同訓練中の米B-52H爆撃機と空自F-2戦闘機の編隊飛行。B-52Hはルイジアナ州バークスデイル空軍基地(Barksdale Air force Base, Louisiana)の第2爆撃航空団(2nd Bomb Wing)第96爆撃中隊(96th Bomb Squadron)所属機。

3月6日発表:中国の2024年国防予算、前年比7.2 %増の34.7兆円

中国政府は、2024年次国防予算を「台湾および南シナ海における緊張の高まり」に対処するため、前年対比で7.2 %増やすと発表した。議会に相当する全国人民会議(NPC=National People’s Congress)で、2024年次の国防費を2314億ドル(34兆7000億円)にすることを決めた。これは我国の同年度・令和6年度防衛予算7兆7000億円)のほぼ4倍に達する額。

中国の国防費は米国に次ぐ世界第2の規模になっており、兵員数では米国を上回っている。海軍が保有する戦闘艦艇の数では中国軍が米軍を凌駕して数年になり、今では世界最大の海軍国になっている。空軍 (陸海軍機を含む、練習機は除く)では、米軍の約4000機に対し中国軍は3,150機で米軍が優位にあるが、中国は最新の第5世代戦闘機J-20の年間生産数を100機に増やしているので、間も無くこれもに逆転される(Air&Space Forces Magazine March 28, 2024)。

このような実態を、我が国政府は、議会、マスコミを含めて、もっと正確に国民に知らせる必要がある。

図2:A-20戦闘機は2022年珠海航空ショーで公開された。もっとも洗練された第5世代戦闘機の一つ、先進センサー、ステルス形状、長射程空対空ミサイルを装備する。最大離陸重量36.3 ton、戦闘行動半径2,000 km、エンジンはロシア製AL-41FISまたは中国製WS-15ターボファン2基を搭載する、推力偏向ノズルは無いようだ。すでに200機以上が配備されている。

3月8日発表:防衛省、カイロス・ロケット能力向上型の開発を契約

防衛省は3月5日にスペースワン(Space One)KKと、同社が開発中のカイロス・ロケット能力向上型の研究支援を行う契約を締結した。契約内容は「アッパーステージ(Upper Stage)能力向上に関する研究」で、国家安全保障会議決定(2022-12-16)」・同閣議決定、および「宇宙開発戦略本部決定(2023-6-13)」に基づき契約したもの。

概要は、カイロス・ロケットのアッパーステージを大型化し、防衛省が計画する各種衛星網の構築に使う主力小型ロケットにしようと言うのが目標である。

図3:(防衛省/スペースワン株式会社)「カイロス現行型」は、基本構成は「固体燃料3段式+液体推進系キックステージ(PBS)」、高さ18 m、直径1.25 m (フェアリング直径は1.5 m)、重量約23 ton、打上能力は地球周回低軌道(LEO)・高度500 km250 kg。防衛省が研究を推進する「カイロス増強型」は、固体燃料アッパーステージ」を延長・推力増加して打上げ能力を増加するもの。

「スペースワン」社は、キャノン電子、清水建設、IHIエアロスペース、日本政策投資銀行、の4社が出資、2018年に設立した会社。2021年に和歌山県串本町に発射基地「スペースポート紀伊」を設置した。2024年3月13日に「カイロス」初号機を打上げたが、打上5秒後にロケット本体に組込まれている「飛行中断システム」が作動、空中爆発を起こして失敗した。このシステムは、ロケットの飛行経路、速度、内部機器等の異常を検知すると、搭載炸薬が爆発・本体を破壊して地上に危害を及ぼさないようにする安全システムである。

スペースワンでは、システムが誤作動した可能性も含め飛行データの解析をし原因を調べている。

次に打上げる2号機、3号機に搭載する衛星はすでに決定済みで、同種事故の再発防止に努めると語っている。その上で2030年代には年間30機ペースで打上げるのを目標にしている。

3月18日発表:北朝鮮、318日日本海に向け弾道ミサイル3発を発射

防衛省は、北朝鮮が3月18日早朝、北朝鮮西岸から3発の弾道ミサイルを日本海に向け発射、と発表した。落下したのはいずれも日本の排他的経済水域(EEZ)の外側である。

1発目:7時44分発射、高度50 km、飛行距離350 km、

2発目:7時44分発射、高度50 km、飛行距離350 km、

3発目:8時21分発射、高度50 km、飛行距離350 km、

図4:(防衛省)318日早朝、北朝鮮西部から弾道ミサイル3発が日本海に向けて発射された。

3月4日〜18日発表:中国海軍艦艇と空軍機、西太平洋海空域で頻繁な行動

  • 3月2日午後、ジャンカイII級フリゲート2隻(529, 532)が東シナ海・宮古海峡を通過、太平洋に進出
  • 3月9日午前、Y-9哨戒機が東シナ海・宮古海峡を通過、太平洋に進出、宮古島南方空域で旋回飛行、その後往路を同じ経路で東シナ海に退去
  • 3月10日午前、Y-9哨戒機が前日と同じ航路で太平洋に出て宮古島南方の空域で旋回飛行の後、前日と同じ経路で東シナ海に退去
  • 3月12日午前、Y-9情報収集機1機とH-6爆撃機2機が東シナ海から宮古海峡空域を通過、太平洋で旋回飛行し、往路と同じ経路で東シナ海に退去、この間無人機1機が同空域を飛行、退去
  • 3月15日午前早朝、ドンデイアオ級情報収集艦(799)が、東シナ海から対馬海峡を通り日本海に向け航行
  • 3月3日~14日の間、ジャンカイII級フリゲート2隻(529, 532)が石垣島南東210 kmの海域を遊弋。これらは3月2日宮古海峡を通過太平洋に出たものと同一
  • 3月16日午前、ジャンカイII級フリゲート(576)およびフチ級補給艦(903)が東シナ海から対馬海峡を通り日本海に向け航行、同日午後から17日午前に掛けてルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(123)が対馬海峡を通り日本海に航行
  • 3月21日・22日中国軍機延36機が台湾北部、南西部に飛来、艦艇6隻が台湾南部に接近
  • 3月22日午前、シュパン級測量艦(26)が尖閣諸島魚釣島西を南下、与那国島と西表島の間を通り太平洋に進出
  • 3月23日午前、ジャンカイII級フリゲート(549)およびルーヤンII級ミサイル駆逐艦(150)が東シナ海から奄美大島と横当島の間を通り太平洋に航行
  • 3月25日早朝シュパン級測量艦(29)が太平洋/台湾東の海域から与那国島と西表島間の海峡を通過、東シナ海に航行
  • 3月26日午前、偵察型無人機「WZ-7」1機が大陸方面から日本海に飛来、旋回ののち大陸方面に退去
  • 3月27日昼間、Y-9情報収集機が東シナ海から宮古海峡を通過、先島諸島南方/台湾東部の空域を飛行した後往路と同じ航路で東シナ海・大陸方面に退去

このように中国軍は3月1ヶ月間に13件もの我国の周辺、接続水域、領海内で頻繁な活動をしている。あまりの多さでニュース価値が薄れたためか、大半はマスコミで報道されない。中国政府はそこを狙い、中国軍による第1列島線の通過・往復を既成事実化し、将来の台湾・沖縄列島の占領を狙っている。

以下に、これら13件に関わった中国軍の艦艇・航空機と、それらの航跡を紹介する。

これらの中には3月7日~16日の10間、海自輸送艦と米海軍強襲揚陸艦が東シナ海から沖縄周辺・西太平洋城で共同訓練を行ったが、これの通信傍受、訓練動向を偵察する行動を含んでいるらしい。

図5:(統合幕僚監部)39日と10日の両日、Y-9哨戒機が先島諸島南の空域で旋回飛行をした航路。

図6:(統合幕僚監部)39日と10日の両日、先島諸島南で旋回飛行をしたY-9哨戒機。Y-9系列機の一つで[KQ-200]対潜哨戒機のようだ。

図7:(統合幕僚監部)ドンデイアオ級(東調級/815型)情報収集艦は、排水量6,000ton、全長130 m、速力20 kts、艦尾にヘリ用甲板、中央に弾道ミサイル追跡レーダー、艦橋上部に巡航ミサイル短距離追跡レーダーおよび電子情報傍受アンテナ、などを装備。815815A815A IIなど合計で9隻ある。

図8:(統合幕僚監部)ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲート、満載排水量4,000 ton、全長134 m、速力27 kt、HQ-16対空ミサイルを32セルVLSに収納。対艦ミサイルYJ-83型を中央の4連装発射機2基に搭載。外洋艦隊の護衛が任務。同型は40隻が就役済み。

図9:(統合幕僚監部)ジャンカイII級フリゲート2隻(529532)は、32日に宮古海峡を通り太平洋に進出、先島諸島南の海域で遊弋、その後与那国島と台湾の間の海峡を通り、東シナ海に戻った。

図10:(統合幕僚監部)312日、H-6爆撃機と共に先島諸島南の空域を飛行したY-9情報収集機。これはY-9系列機の一つ「Y-9JB」、機首・胴体側面の前・後にアンテナを装備する、前掲の「Y-9対潜哨戒機」の尾部にある潜水艦探知用のMADブームはない。

図11:(統合幕僚監部)「H-6」は、ロシアTu-16爆撃機を西安航空機で国産した機体。H-6H、H-6K、H-6M、H-6Nなどがある。3月12日の機種は機番からH-6Hらしい。H-6Kからは機番が5桁表示になり、兵装搭載量がH-6Hの9 tonから12 tonに増え、翼下面に巡航ミサイルCJ-10Aを6発携行できる。

図12:(統合幕僚監部)312日、Y-9情報収集機とH-6爆撃機2機(機番5356)が宮古海峡を通過、先島諸島南の太平洋上で旋回飛行、往路と同じ経路で退去した。これに無人機1機が同行した。

図13:(統合幕僚監部)シュパン級測量艦は別名「636A型海洋総合調査艦」、排水量6,000 ton、長さ130 m、速力17.5 ktsの外洋測量艦。水深調査、海底地形・地質測量、水温、海流、など各種調査を行い、潜水艦の作戦行動に必要な資料作成を任務とする。このため鹿児島県・沖縄県にある多数の海峡に出没、領海侵入を繰り返している。同型艦は数隻存在する。

図14:(統合幕僚監部)322日には、シュパン級測量艦(26)が与那国島西表島間を通り太平洋へ進出。325日には別のシュパン級測量艦(29)が太平洋から与那国島西表島の間を通り、東シナ海に立ち去った。

図15:(統合幕僚監部)323日午前、奄美大島と横当島の間を通過して太平洋に出たジャンカイII/江凱II級フリゲート(549)とルーヤンII/旅洋II級ミサイル駆逐艦(150)。ジャンカイII級は「図:8」を参照。旅洋II/052C型「蘭州級」、6隻が配備、排水量7,000 ton、6セル回転式VLSを8基装備、合計48発のミサイルと搭載する。写真は「長春(150)」。

図16:(統合幕僚監部)323日午前、ジャンカイII級フリゲート(549)およびルーヤンII級ミサイル駆逐艦(150)が東シナ海から奄美大島と横当島の間を通り太平洋に向け航行。

図17:(統合幕僚監部)325日にシュパン級測量艦(29)が、太平洋から与那国島西表島の間を通り、東シナ海に立ち去った。詳しくは「322日のシュパン級測量艦(26)が同海峡を通り太平洋に進出」、の説明を参照。

図18:(統合幕僚監部)326日午前、能登半島北西の日本海空域を飛行したWZ-7偵察型無人機。WZ-7は旋回飛行をした後大陸方面に立ち去った。WZ-7は翼幅23 m、全長14 m、離陸重量7.5 ton、航続距離7,000 km、の大型機。RQ-4グローバル・ホーク無人機に匹敵する。下の写真は2006年珠海航空ショーで展示された同機。

図19:(統合幕僚監部)327日、Y-9情報収集機が東シナ海から宮古海峡を通過、太平洋へ出て先島諸島南/台湾東方を遊弋、同じ経路で東シナ海に戻り、ここで旋回飛行ののち立ち去った。

図20:(統合幕僚監部)227Y-9情報収集機の飛行経路。

36日発表:海自輸送艦等は東シナ海・沖縄周辺海域で米強襲揚陸艦・輸送艦などと共同訓練

3月7日~16日の間、海自輸送艦「くにさき」、掃海艦「えたじま」等は米強襲揚陸艦「アメリカ」、ドック型輸送揚陸艦「グリーンベイ」、掃海艦「ウオーリア」等と共同訓練を実施した。前項に述べた中国軍の活動は、この日米訓練のモニター/通信傍受等をするが目的と思われる。

図21:(Wikipedia)海自輸送艦「くにさき/LST-4003」は満載排水量13,000 ton、全長178 m、「おおすみ」型3番艦で2003年就役。LCACエアクッション揚陸艇2隻を搭載、甲板にはCH-47大型ヘリ3機を搭載可能、上陸兵員330名大型トラック60台、90式戦車18両を搭載する。

図22:(防衛省)掃海艦「えたじま/MSO-306」は「あわじ/MSO-304」(写真)級の3番艦で2021年就役、満載排水量780 ton、全長66.8 m。全体が繊維強化プラスチック(FRP)製で、木造に比べ3割ほど軽量化している。機雷探知用にOZZ-4水中無人機、深深度機雷探知用として送受信機を吊り下げ曳航するZQS-4 ソナー(100 K Hz ?)を装備。探知した機雷は後述のドイツ製「シーフォックス」に似た三井造船開発の自走式機雷処分弾薬(EMD)を使う。同型艦は4隻、追加2隻を建造予定。

図23:(Wikipedia) 三井造船製自走式機雷処分弾薬EMD)

図24;(Wikipedia)強襲揚陸艦「アメリカ/USS America LHA-6」は満載排水量46,000 ton、全長257.3 m、「アメリカ」級の1番艦で2014年就役。LCACは搭載しない。搭載機はF-35B STOVL戦闘機なら20機、MV-22Bオスプレイなら42機の搭載可能、上陸部隊1,900名を収容する。同級3番艦以降は、ウエルデッキを復活、LCAC2隻搭載、排水量50,000 tonになる。同型艦は2隻、9隻建造予定。

図25;(Wikipedia) ドック型輸送揚陸艦「グリーン・ベイ/USS Green Bay LPD-20」は満載排水量26,000 ton、全長208 m、「サン・アントニオ」級の4番艦で2009年就役。LCAC2隻搭載、CH-46輸送ヘリコプター4機またはMV-22Bオスプレイ輸送機2機を搭載、上陸兵員700名を収容する。ステルス性に配慮した艦容、後部甲板には発着スポットが2個ある。同型艦は12隻が就役済み、追加4隻が建造中。

図26;(Wikipedia)掃海艦「ウオーリア/USS Warrior MCM-10」は満載排水量1,400 ton、全長68 m、の小型で「アベンジャー」級の掃海艦(MCM=mine countermeasures ship)10番艦で1993年の就役。対深深度機雷の探知に優れた性能を持つ。磁気機雷の反応を防ぐため全艦木造・一部複合材構造。機雷探知機はレイセオン・タレス共同開発のソナー・システムAN/SQQ-32を搭載する。機雷破壊システムには、使い捨て型の「シーフォックス(Seafox)」ドローンを搭載している。

3月8日発表:事故で3ヶ月間運用停止中の「V-22オスプレイ」が飛行を再開

昨年(2023年) 11月に鹿児島県沖で発生した米空軍の「CV-22オスプレイ(Osprey)」墜落事故 (8名死亡)で、海兵隊・空軍・海軍で運用中の「V-22オスプレイ」(400機以上)の飛行停止をしていた措置が3月8日に解除された(国防総省の発表)。

最大のユーザー海兵隊は348機を受領済み、内240機を17個中隊に配備、運用している。

これを受けて3軍は、訓練方法・整備方法を改定し順次飛行訓練を再開する。機体構造や装備システムの改修は飛行再開の要件にない。

しかし、飛行訓練等が再開されても、新飛行訓練に期間(2ヶ月以上)が掛かるので、完全な実戦配備状態に復帰するのは数ヶ月先になると見られる。

新訓練方式3軍間で多少違いがあるもののほぼ同じで、次の3段階;―

フェイズ1:地上実機訓練、シミュレーター訓練、整備記録の読み方、編隊飛行時の相互通信(プロトコール)訓練

フェイズ2:飛行訓練、編隊飛行訓練、悪天候遭遇時の訓練、など2ヶ月間実施

フェイズ3:戦闘演習、展開訓練

空軍の報道担当長官パトリック・ライダー(Patrick S Ryder)空軍大将は「オスプレイの安全性に疑問はない、75万時間以上の飛行実績があり、安全確保が第一、訓練方式の改善が重要」と語っている。

V-22オスプレイは、「プロペラを垂直にしてヘリコプターのように垂直上昇・下降、空中停止」と「プロペラを水平にして飛行機と同じ水平飛行」の二つができる航空機。

昨年11月の事故は空軍にとっては2010年の死亡事故以来の2度目の事故、しかし海兵隊では2022年以降3件の死亡事故で12~20名が犠牲となっている。

1991年以来オスプレイの死亡事故は合計で10件、57名が死亡した。

空軍では、これとは別に2件の故障事例を受け2022年に飛行停止したことがある。故障は、2基のエンジンの片方が故障した場合他のエンジンのパワーを故障エンジン側に伝えるための「フェイルセーフ・システム」にあるクラッチが滑る/旨く噛み合わない「ハード・クラッチ・エンゲイジメント(HCE=Hard Clutch Engagement)という問題がある。こちらはまだ未解決、当面は当該部品に800時間の使用制限を付けて対処している。

現在V-22オスプレイを使っているのは米軍と我が陸上自衛隊で、今後の入手予定を含めると合計で約470機になる。

海兵隊輸送機   MV-22B    360機

空軍特殊作戦軍 CV-22B      53機

海軍艦上輸送機 CVM-22B    44機

陸自輸送機     V-22B       17機

我国メデイアでは、57名の犠牲者を出した「オスプレイ」は欠陥機、とする主張が多いが、これは正しくない。

世界中で多数使われている大型輸送ヘリCH-47チヌークは、米軍に限っても2020年までに合計238名の死者を出している。また世界中で広範に使われている多用途ヘリコプターUH-60ブラックホークの場合は、米軍だけで970人の死者が出ている。これらに米国以外の国々で起きた事故を加えると、その数はさらに大きくなる。

オスプレイは2000年代から配備が始まりこれまでに400機以上が生産されている。CH-47チヌークは1960年代に実用化、生産数は1,000機以上、まだ生産が続いている。UH-60ブラックホークは1970年代からこれ迄に5,000機が生産されている。

これらから比較すると、機数が10倍で使用年数が2倍以上のUH-60ブラックホークは死者数は1000人近くあり、V-22オスプレイのほぼ20倍になる。我国メデイアが、単純に犠牲者数で安全性を問題にするのは不正確、その主張には政治的な匂い(反米感情)が感じられる。中国の沖縄・台湾侵攻を助けるだけだ。

図27:(U.S. Air Force/Tech. Sgt Darius Sostre-Miroir)海兵隊第164中型テルトローター中隊(Marine Medium Tiltrotor Squadron 164 (VMM-164))所属のMV-22Bオスプレイが空軍の第920救難航空隊(929th Rescue Wing)HC-130J給油機から給油を受けている写真。場所はカリフォルニア州で2023-12-6撮影。V-22オスプレイは最大離陸重量27.4 ton、乗員4名・兵員24~32名が乗り、巡航速度446 km/hrで、3,560 km飛行できる。CH-47チヌーク大型ヘリより時速・航続距離で格段に優れ、離島奪回作戦では有力な輸送手段となる。

314日発表:空自戦闘機は沖縄周辺の空域で米空軍・海兵隊戦闘機等と共同訓練を実施

3月13日、空自沖縄基地第9航空団F-15戦闘機4機は南西航空警戒管制団のレーダー支援を受けて、米空軍F-35A戦闘機8機、F-15戦闘機4機、F-16戦闘機2機の合計14機と共同訓練を実施した。これには米空軍からKC-135空中給油機2機およびHH-60救難ヘリコプター2機、それに海兵隊航空隊のKC-130空中給油機が支援のため参加した。

南西航空警戒管制団には、沖縄本島与座岳/FPS-5長距離レーダーを始めとし、沖永良部島/FPS-7、宮古島/FPS-7、久米島/FPS-4のいずれも最新のレーダー基地がある。

図28:(航空自衛隊)沖縄本島与座岳に設置されている「FPS-5」レーダー、中国本土のほぼ3分の1、北京、西安、海南島を含む広大な区域の上空を監視する。

図29:(Wikipedia)沖永良部島分屯基地のFPS-7レーダー、ステルス機、巡航ミサイルへの対応性が向上、弾道ミサイル探知能力も備える。レドーム内に近距離用3面と遠距離用1面の別個のアンテナが入っている。日本電気製。

330日発表:沖縄本島勝連駐屯地に「第7地対艦ミサイル連隊」を新編・配備

沖縄本島うるま市陸自勝連(かつれん)駐屯地に「第7地対艦ミサイル連隊」が配備され、3月30日に記念式典が行われた。

これは南西諸島の地対艦ミサイル防衛網を強化するため、九州・沖縄で進める再編計画に基づくものである。「地対艦ミサイル部隊を統括する「西部方面特科隊」を「第2特科団」に格上げし、2024年度中に300人規模の「地対艦ミサイル連隊」2個・すなわち「第7」および「第8」を創設することになった。このうちの「第7地対艦ミサイル連隊」が今回勝連駐屯地で発足した。

「第8地対艦ミサイル連隊」は2025年3月に大分県湯布院駐屯地に設置される予定。さらに2026年度中に、大分県大分分屯地に弾薬庫2棟を新設する。

「西部方面隊」で地対艦ミサイル連隊を統括する「第2特科団」には、既に発足済みの熊本県建軍駐屯地の「第5地対艦ミサイル連隊」がある。

「第7地対艦ミサイル連隊」の傘下には、鹿児島県瀬戸内分屯地の第1中隊、沖縄県宮古島駐屯地の第2中隊(2019年開設)、同石垣駐屯地の第3中隊(2023年開設)、同勝連分屯地の第4中隊、があり、これで離島防衛能力機能が大きく向上する。各駐屯地分屯地にはそれぞれ地対空ミサイル(03式中SAM改)部隊が配備され、地対艦ミサイル部隊の防空任務を担当する。

今回発足した「第7地対艦ミサイル連隊」には「第15高射特科連隊・第2中隊」が配属され防空任務に当たる。

まとめると九州・沖縄の防衛強化のため、12式地対艦ミサイルを運用する「第2特科団」隷下には、既存の「第5地対艦ミサイル連隊」に今回「第7地対艦ミサイル連隊」が加わり、来年(2025)には「第8連隊」が増え、3個連隊編成になる。

「12式地対艦ミサイル(SSM 12)」システムは、1個中隊セット編成は次の通り;―

・捜索標定レーダー装置2基

・中継装置1基

・指揮統制装置1基

・射撃管制装置1基

・誘導弾6発搭載の発射機1~4両(通常は4両編成)

・弾薬運搬車1~4両および予備弾6発を搭載するトラック

「12式地対艦ミサイル」については、TokyoExpress 「12式地対艦誘導弾(能力向上型)開発の現況」2022-08-15を参照されたい。

図30:(防衛白書)「12式地対艦ミサイル・12 SSM(改)」発射の様子。「12 SSM」は円筒形で主翼は「能力向上型」に比べ小さい。射撃姿勢は垂直に近く、目標の方向に関係なく空中で向きを変え飛翔する。発射機は全長18 m、既存の重装輪回収車 (8 WD)後部にミサイル6発搭載にした車両。「能力向上型」も同じ。

「12式地対艦ミサイル・12 SSM」は(改)を含めて、2012年度から配備が始まり2022年度までに発射機車両で22セットが調達され、陸自富士学校(2セット)と第5地対艦ミサイル連隊(熊本健軍駐屯地)から配備が始まった。熊本、沖縄本島から射程1,000 kmの範囲には韓国全土、北朝鮮の大半、中国の東シナ海沿岸地域全てが入る。「能力向上型」の配備が完成すれば相当な抑止力効果が期待できる。

「12 SSM能力向上型」の開発は2021年度に始まり、2024年度末に「地発型」試作完了、2025年度に納入、部隊配備を開始する予定。続いて「艦発型」、「空発型」の開発が行われる。

「能力向上型」の特徴をまとめると;―

  • 大型化と主翼の装備で射程が「12 SSM」の200 kmから1,500 kmに延伸、敵の攻撃圏外から攻撃できる「スタンド・オフ能力」が著しく向上する
  • ステルス形状でレーダー反射面積(RCS)が小さく、亜音速だが迎撃され難い
  • 衛星データ・リンク・システムを搭載、常時最新のデータを入手、移動目標の追尾能力が向上する

長射程ミサイルについては、このほかに米国製巡航ミサイル「トマホーク」の取得を当初計画を1年前倒しして2025年度から導入する事に変更、既に要員の訓練が開始されている。

図31:(防衛白書)左「03式中SAM」、右「地対艦ミサイル・12SSM」。共に重装輪回収車 (8 WD)の後部に誘導弾6発搭載するよう改造した車両なのでよく似ている。「03式中SAM」は「SAM-4」とも呼ばれ、射程は未公表だが60 km以上と言われる。改良型の「03式中SAM改」は低空を飛来する巡航ミサイルへの対処能力が向上し、ネットワーク能力が向上したことで防衛可能なエリアが拡大、対処時間を短縮している。

―以上―