–グリーンスボロ工場でいよいよ量産機の生産を開始—
2013-11-06 松尾芳郎
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図:(Honda Aircraft) 北米ノースカロライナ州グリーンスボロ(Greenspboro)、ピドモント国際空港(Piedmont Triad International AP)のホンダエアクラフト社の全景。133エーカー(約532,000m2)の敷地に、製造工場、塗装工場、顧客訓練センター、研究所、顧客引渡しセンター、などを含む合計面積56,000m2のコンプレックスが展開する。ホンダ創業以来の夢“空への進出”実現の第一歩だ。
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図:(Honda Aircraft)2014年末の型式証明取得後直ちに顧客に引渡すべく量産が始まったホンダジェット。
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図:(Honda Aircraft)FAA型式証明取得に供されている4機のホンダジェット、合計6機が作られ、2機が地上強度試験用、4機が飛行試験用に使われる。今年5月から加わった1機は内装を量産機仕様に作り主に内装の試験に使われる。現在は証明取得の最終段階の試験中で、2014年末の取得が目標。
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図:(Honda Aircraft)HA-420ホンダジェットは6人乗りビジネスジェット、このクラス最高の性能、快適性、品質、燃費効率を誇る。“エンジンを主翼上面に取付ける”(Over-The-Wing Engine Mount=OTWEM)方式を採用、これで抵抗低減により燃費を大幅に削減できた。さらにOTWEM採用により、キャビン騒音の低減、広いキャビン、大容量の荷物室、化粧室の設置、など数々の利点が得られた。HA-420は、胴体は軽量複合材製、主翼はアルミ合金を加工した1枚シートで作り表面をスムースに仕上げ層流域を拡大し、燃費改善をしている。コクピットはタッチスクリーン仕様のガーミン(Garmin) G3000システムを採用。
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図:(Honda Aircraft)エンジンはGEとホンダが折半で設立したGE-Honda 社製のHF120ターボファン。ホンダは自社で1999年に原型となるHF118を完成済みだったが、これを基本にGEと協力してHF120を開発。構成はファン1段、LPコンプレッサー2段、HPコンプレッサーはTi製遠心式、タービン2段、離昇推力2,050lbs、同クラスのエンジンに比べ35%燃費改善している。
ホンダジェットの原型機は2003年末に初飛行、2005年7月にオシュコシュ(Oshkosh)の試作機航空ショウ(AirVenture air show)で一般公開された。翌2006年秋には米国ホンダモーター社が100%出資する「ホンダエアクラフト(Honda Aircraft Co.)」を設立して販売活動を開始した。
以来「ホンダエアクラフト社」は、北米ノースカロライナ州グリーンスボロ(Greenspboro)のピドモント国際空港(Piedmont Triad International AP)に本社を含む工場群の設置をスタート。いまでは133エーカー(約532,000m2)の広大な敷地に、製造工場、塗装工場、顧客訓練センター、研究所、顧客引渡しセンター、などを含む合計面積56,000m2コンプレックスを建設、これ等の設備投資額は1億2,000万㌦に達すると云う。
これ等の建物群は、超近代的な工具、治具、コンピュータ、多数の試験、検査装置、で満たされ、800人の従業員により量産型機の生産が始まっている。この近代的な工場からは、これから単価450万㌦のホンダジェットが年間70~100機の割合で出荷される予定だ。顧客引渡しセンターのハンガーは、現在FAA型式証明取得のため試験飛行中の機体の整備施設に使われている。5機目のホンダジェットは2013年5月16日に初飛行した。
ビジネスジェット業界に詳しい米国一部には、このような巨額な投資は果たして450万㌦の1機種だけの販売で回収できるのか?と疑問視する声がある。
これに対しホンダエアクラフトの藤野道格社長は「グリーンスボロ工場は1機種だけで終わらせるつもりはない、HA-420型ホンダジェットに続く新機種を検討中だ」と述べている。
また別のホンダの幹部は云っている。「2006年のホンダジェット設立は、その20年以上前からホンダが抱いてきた航空機の研究、開発と云う夢の具体化の始まりだ。ここノースカロライナで我々は航空機の開発、製造への第一歩を踏み出した。今後ホンダはその名に相応しい先進技術を駆使した航空機を作り世に問うことになる。これからの50年が楽しみだ」と。
親会社のホンダ技研は1948年創業以来、8,000万台の自動車と2億5000万台のオートバイを送り出した、年間売上12兆1千億円(1,210億㌦)、営業利益7,800億円(78億㌦)の世界有数の大自動車メーカーだ。創業者本田宗一郎の夢だった“飛行機を作る”ことが、ホンダジェットの誕生で間もなく実現する。一日本人として、またホンダ車を愛用する1人として“ホンダの飛行機”実現を心から期待する。
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