シリア情勢に異変?イスラエル空軍機ミサイル貯蔵庫空爆


2013-11-02       ジョン・ボスニッチ(ベオグラード)

シリアを巡る情勢に新展開が起きるか。欧米の軍事関係者が、今後の中東情勢の推移を固唾を呑んで見守っている。イスラエル空軍が10月30日深夜から翌31未明にかけ、シリア国内のミサイル貯蔵庫に空爆を強行。レバノンの武装勢力『ヒズボラ』に渡る直前の地対空ミサイル等多数の兵器破壊に成功したとBBC,NBCなど欧米の有力メディアが報じた。露、中国製で固めた防空機能が役に立たなかったわけだが、シリアの梃入れにクレムリンが乗り出すか否かは不透明だ。イスラエルが主張しているイランの核武装阻止でシリアの武装解除はイラン空爆への途を容易にする。

イスラエル空軍のシリア軍事施設への空爆ニュースは欧米のメディアに登場する迄、半日以上かかった。イスラエルの有力紙『ハーレッツ』は空爆でたてつずけに夜空を焦がす火柱と轟音のビデオ映像をシリア国内で情報が錯綜する段階で速報した。報道管制が当たり前のイスラエル・メディアでは珍しいケースだ。空爆直後からイスラエル空軍の標的が『地中海沿いのラタキア海軍基地に近い軍ミサイル貯蔵施設』(反アサド政権組織)と推測されていた。

BBC等は破壊されたのは地対空ミサイルなどヒズボラに移送予定の大量の武器だと報じている。もし渡れば、イスラエル軍の東地中海上空の制空権確保の妨げとなるのは間違いない。7月にも同様の空襲にイスラエルが踏み切ったが、結果は失敗だったという。今回は是が非でも破壊する必要があった。同時にロシアが提供した対艦超音速巡航ミサイルP-800『ヤーホント』(ルビーの意味)も狙い通り仕留めたとの情報もある。同ミサイルは最大射程距離300㌔、海上すれすれから高度14,000㍍迄を自在に飛行。米、イスラエルの艦船が東地中海で軍事行動を起こす際、目障りな存在。

イスラエルの空爆は戦果を上げたようで、シリア上空の飛行で相当な自由度を得たと軍事アナリストは分析する。イスラエルがイラン核施設、奇襲空爆で第3の飛行ルートを確保したのも同然。

ラタキアの南方、タルトゥースには露海軍機動部隊が地中海で作戦遂行に欠かせぬ基地がある。イスラエルの更なるシリアへの空爆を事前に探知する為、露国防省は電子情報収集船の追加派遣を決めたという。大量の武器を破壊されたヒズボラが今後どのような反撃に出るのか。イランがイスラエルの攻撃シナリオにどう反応するのか。一旦、落ち着いたシリア情勢がにわかにキナ臭くなってきた。