−ドバイ航空ショウの初日で259機、950億㌦の成約を得、ローンチに踏切る−
2013-11-18 松尾芳郎
Revised 2013-12-29
図:(Boeing)ボーイングが11月17日に公表した777-9X(上)と777-8X(下)の完成予想図。就航予定は-9Xが2020年中期、-8Xは18ヶ月後となる。胴体長は-9Xが76.5m、-8Xは69.5m、翼幅は両者同じで71.1m、翼端を折り畳むと64.8m。最大離陸重量も同じで351.5㌧となっている。エンジンはGE90の改良型GE9X推力105,000lbs(470kN)である。複合材主翼の採用が目玉。
ボーイングは、昨日(17日)アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催された航空ショウで、域内航空会社から大量の受注を得て懸案であった777-Xの正式ローンチを発表した。
受注内容は、エミレーツ(Emirates)航空から150機、カタール(Qatar)航空から50機、エチハッド(Etihad)航空から25機、それに既報のルフトハンザ(Lufthansa)からの34機の777-9Xを含めて、合計259機、公示価格で総額950億㌦(9兆5000億円)に達する規模だ。
明らかになった発注内容は、エミレーツは777-9Xを115機と-8Xを35機、エチハッドは777-9Xを17機と-8Xを8機それにオプション12機。
さらにエチハッドは、30機の787-10プラス12機のオプションを同時に発注したと発表した。これで同社はこれまでに発注済みの787-9 41機を含め、合計の787発注機数は71機となる。この発注で787の受注機数は1,000機に達し、エチハッドはANAを抜き世界最大の787オペレーターとなる。
双胴型機の大型発注で持ち切りのドバイ航空ショウだが、新参のフライ・ドバイ(Flydubai)航空が737MAX-8を100機と737-800を11機注文したことも注目すべきニュースだ、これ等の引渡しは2017年から始まる。
777Xは運行中の双発広胴型機の70%以上を占める777型機の後継で、777-8Xと胴体延長型の777-9Xの2機種が開発される。新開発のGE9Xエンジン、推力約105,000lbsを2基、現777より翼幅の長い複合材で作る新しい主翼を装備、-9Xは現在の777-300ER対比で燃費16~17%の改善を目指している。
数ヶ月以内にサプライヤーを選定し、製造開始は2017年、最初の引渡しは777-9Xで2020年を目標で開発に取組む。777-8Xは18ヶ月後(2022年?)に就航する予定。
大型の777-9Xは、3クラス乗客400名以上を乗せ航続距離15,000km以上、座席当たり運航費は民間機中の最低を目指す。
777-8XはエアバスA350-1000に相当する機体で、乗客350 名、航続距離は17,000km。
777-9Xの就航予定は2020年中頃を目標にしているが、このためには、ボーイングは2014年初めまでに主翼その他の重要部位の製造工場を決めなくてはならない。特に主翼に関しては、一時シアトル南のペインフィールドに隣接したピュージェット・サウンド(Puget Sound)工場になるのではないか、との観測が流れたが、決まっていない。
ボーイングは当初777Xの主翼をピュージェット・サウンドで作る案で、労働組合に対し8年間の改訂労働協約を提案したが、数日前に交渉が不調に終わった。
ボーイング民間航空機レイ・コナー(Ray Conner)CEOは主翼製造に関して次ぎのように語っている。
「主翼を炭素繊維複合材で作ることは、われわれは日本以外では経験がない。三菱重工が787用の複合材製主翼を製造中なのは念頭にある。」「何処で作るかは色々な要素を含めて検討しなくてはならない。製造技術について我々はすでに充分な情報を持ち合わせている。国内で作るのであれば、教育、税制上の優遇措置等を考慮せねばならず、国外であれば工場規模や技術等を考えなければならない。」
「IAM(International Association of Machinists & Aerospace Workers)との労働協約改訂交渉は不調に終わったが、ピュージェット・サウンド工場の使用を諦めた訳ではない。しかし今のところIAMと再交渉する予定はない、彼等の対応の変化を待つだけだ。」
今や複合材主翼の製造は777Xの完成時期を左右する鍵であり、製造拠点を何処にするかに注目が集まっている。経験実績それに納期を重視すれば国外発注/三菱重工となるだろうし、IAMとの交渉がまとまればピュージェット・サウンド地区となり、新たに教育訓練や工場新設などに投資が必要となり、加えて能期確保に努力が求められることになろう。
−以上−