2014-01-03 航空評論家 小河正義
無人偵察機『グローバルホーク』導入などを骨子とする日本列島周辺、海空の『常続監視体制整備』が本格的に動き出す。安倍政権は昨年暮れに『中期防衛力整備計画』(平成26~30年)を閣議決定し、尖閣諸島を脅かす中国軍の動きにいち早く対処すべく、最新鋭ハイテク無人偵察機などハード、ソフト両面での抜本的強化策を決めた。
図:(Northrop-Grumman) 無類の偵察能力を持つ米空軍のグローバルホーク(写真は海軍用の機体)。U-2型機を寄せ付けぬ性能。
無人偵察機RQ-4グローバルホーク(Global Hawk)はロッキードU-2の後継機として開発され、高解像度の合成開口レーダー(SAR=synthetic aperture radar)と長距離用電子光学赤外線センサ(EO/IR=electro-optical/infrared)を備え、目標区域を長時間滞空可能な偵察機。一日で10万km2の区域を監視できる。米空軍は2013年現在RQ-4B (ブロック30)型を45機導入中である。ブロック30型は搭載するセンサ類を改良し、監視可能な半径を100kmに拡げ、一度に10km2範囲を照射してその解像度は1.8mと云う。米海軍は広域洋上哨戒機(BAMS=broad area maritime surveillance)として2008年にMQ-4Cトライトン(Triton)の開発導入を決めている。
最大の目玉は米空軍が世界の空で監視警戒の目を光らす無人偵察機、グローバル・ホーク(ノースロップ・グラマン社製)の導入。数々の危機対応でその力を見せつけた。米軍事関係者によると
1)アフガン戦争(2001年),
2)イラク紛(2003~11年)、
3)ビン・ラディン捕獲作戦(2011年)、
4)リビア・カダフィ政権崩壊(2011年)ーなどが主要な戦果だという。
大規模自然災害でもその能力は抜きん出た。東電原発事故を含む東日本大震災、ハイチを襲った大地震(2011年)、カリフォルニアの大規模山火事、などでも被害状況の迅速な把握、対策策定で不可欠の存在となった。
こうした能力を支えるのがRQ-4グローバルホークの類いまれなる飛行性能。離陸後の無着陸飛行時間は32時間に達し、航続距離はニューヨークを出発した場合、地球上のどこでも到達が可能。飛行高度はジェット旅客機の2倍の12マイルを優に超す。地対空ミサイル、最新戦闘機も敵ではない。
搭載する昼夜兼用の高解像度カメラ、強力な探知レーダー、電子シグナル傍受機能など、いずれもCIAの有力な情報収集の手段である。飛行1回あたりの経費はU-2型機の半分と試算される。無人のためパイロットを危険にさらすこともないし、遠隔地からのリモートコントロールが可能。ノースロップグラマン社は機体価格を6,600万ドルと公表している。NATO、ドイツ空軍も同型機を導入し運用中だ。
航空自衛隊が導入すれば、日米間の日本列島周辺の偵察情報収集、相互連携がより円滑となろう。
図:(US Navy/Wikipedia)写真は2008年7月に米海軍のRQ-4グローバルホークが北部カリフォルニアで起きた山火事の様子を捉えたもの。同機は24時間この地区上空を旋回しながら映像を送り続け消火活動を支援した。RQ-4は世界中どこへでも24時間以内に飛ぶことができ、米海軍は洋上監視用として最適としている。
防衛省は『常続監視体制の整備』でE-767 AWACS機のコンピュター等電子装備品の最新システムへの切り替え、E2Cホークアイの後継機種導入も盛り込んでいる。海上自衛隊関連では対潜哨戒機として完全国産の4発ジェット機、川崎重工製のP-1型機の実戦配備が始まるほか、既存のP3C『オライオン』の機体寿命延伸にも取り組む。
これ以上、尖閣列島周辺での中国軍の跋扈を許さぬため今回の日本列島周辺での偵察監視能力、強化は当然といえる。
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