−2014~2018年の新中期防別表で、米国の関心は“水陸両用車”、“オスプレイ”と“F-35”に集まる–
長文のため全体を3つに分割、掲載する。
2014-01-14 松尾芳郎
政府は昨年末(2013-12-17)に新たな防衛計画の大綱(防衛大綱)と平成26~30年度(2014~2018)の中期防衛力整備計画(中期防)を決定した。それによると、今年度から5年間の中期防期間中の防衛費を総額24兆6,700億円として、中国や北朝鮮からの脅威増大に対処する。期間中に導入する新しい装備の主なものは「中期防別表」として公表された。
*中期防別表(2014~2018)年の5年間に調達予定の主要装備を示す表)
陸自 | 機動戦闘車 | 三菱重工で開発中、国産 |
99輛 |
水陸両用車* | United Defense社製AAV7A1を想定、輸入 |
52輛 |
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テイルトローター機* | ベル・ボーイング製V-22、輸入 |
17機 |
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海自 | 護衛艦(含むイージス艦2隻) | 国産 |
5隻 |
P-1哨戒機 | 川崎重工製、国産 |
23機 |
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空自 | F-35A戦闘機* | ロッキードマーチン製、4機輸入ののち三菱でライセンス生産 |
28機 |
新早期警戒管制機 | ノースロップグラマン製E-2C またはE-2Dを想定、輸入 |
4機 |
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新空中給油・輸送機 | ボーイング製KC-767 または米空軍の KC-46Aを想定、輸入 |
3機 |
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C-2輸送機 | 川崎重工製、国産 |
10機 |
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滞空型無人機 | ノースロップグラマン製RQ-4グローバルホークを想定、輸入 |
3機 |
図1:(防衛省) 別表の10項目を観ると5項目は米国から完成品を輸入、さらにF-35Aはライセンス生産で、中期防期間中の防衛装備は大半を米国に依存する形。国産の「イージス艦2隻の増強」と「機動戦闘車の開発・配備」については昨年12月に、また「滞空型無人機」については今年1月に、それぞれ紹介済みである。
近着の米誌情報によると、米国では日本が輸入する装備のなかで “水陸両用車”、“テイルトローター機”、それに“F-35A戦闘機”に、輸出増加の観点から関心が集まっている、と云う。
その書き方は次ぎのようだ。
『国家主義者の安部首相が“新中期防で、最近の中国の活動振りに明確に反対の意思を表明した”。続けて“安部首相は、日本は積極的平和主義(pro-active pacifism)を進める”として無人の尖閣諸島の防衛に力を入れようとしている』。そして『日本はこのちっぽけな島(islet)を守るために、迅速に侵攻に対応できる米国の海兵隊に似た水陸両用部隊を創設しようとしている』と記述。さらに余計なことに、中国新華社通信の意見を紹介し『日本が普通の国になろうとするなら、それは(戦後秩序を定めた)歴史に対する挑戦であり、近隣諸国の怒りを買うだけだ。馬鹿な考えは止めてアジアの諸国と協力せよ』とまで書いている。
日本が受けている中国の脅威を、同盟国でありながら立場をわきまえず、さながら傍観者の態度で述べているのには違和感を覚える。米国の関心は、もっぱら自国製品の輸出増に向けられているだけ、のようだ。
ともあれ、ここではその3項目について技術的な観点から客観的に紹介して見よう。
(その2に続く)