新中期防で調達予定の主な米国製品は(その3)


−2014~2018年の新中期防別表で、米国の関心は“水陸両用車”、“オスプレイ”と“F-35”に集まる–

 

2014-01-14  松尾芳郎

 

*  F-35A戦闘機

F-35 stealth fighter factory

図5:(Lockheed Martin)フォートウオース(Fort Worth, TX)にあるロッキードマーチン社のF-35生産ライン、この工場は[Air Force Plant 4]と呼ばれる。2013-12-17には100機目のF-35が完成、ロールアウト式典が行われた。同社によると、2019年までに空軍用F-35Aの単価はインフレ率を考慮に入れても8,500万㌦(約85億円)に低減できる、としている。

 

開発が難航していたF-35だが、最後に残った技術上の問題“ヘルメットの件”は、昨年10月に解決した。予定していたBAEシステムズ製の採用を断念、代わりにビジョン・システムズ(VSI=Vision Systems Int’nl)が作る“ヘルメット取付け式デイスプレイ(helmet-mounted display)”が採用された。”VSI”社は、イスラエルのエルビット社と米国のロックウエルコリンズ社の合弁企業。BAE提案のヘルメットはデイスプレイがやや不安定で、夜間高機動時で問題があったが、新しいヘルメット”Gen-3”は機能を簡略化したので表示が安定していると云う。”Gen-3”ヘルメットは、2016年から引渡し開始の少数初期生産”LRIP 7 “ 「ロット7」(35機予定)から装備される。

もう一つ、搭載する“兵装システム”関連プログラムの完成度だが、2015年3月の引渡しを目指し開発が進んでいる。海兵隊用のF-35Bは、500lbs(250kg)型レーザー誘導爆弾、1,000lbs(500kg)統合直接攻撃爆弾GBU-32 (JDAM)、および空対空ミサイルAIM-120を搭載する。海兵隊ではF-35Bの初期運用(IOC =initial Operational Capability)を2018年に予定しており、そのためには”ブロック3F”ソフトが必要だが、その完成までは一部の兵装使用制限のある”ブロック2Bおよび同3I”が使われる。

F-35飛行全点検

図6:(US Air Force photos by Sr. Airman Brett Clashman) 2013-04-04ネリス空軍基地(Nellis AFB, Nev.)の第422試験評価中隊所属B. マサーン空軍大尉(Capt. Brad Matherne)が飛行前点検を行なっている様子。F-35Aは、全長15.7m、翼幅10.7m、最大離陸重量31.8㌧、各種兵装搭載量8.1㌧、戦闘行動半径は1,000kmを超えるかなり大型の多目的戦闘機である。エンジンはP&W F-135推力はドライ時28,000lbs(125kN)、アフトバーナ時43,000lbs(191kN)、を 1基。

 

イタリアはF-35AとF-35Bを合計で90機を購入する計画で、米国以外では(テスト用を除き)英国に次いで導入が早い。2014年中期から引渡し開始予定の「ロット6」生産分36機の中からF-35A 3機の受領で始まる。イタリア政府は、昨年から同国北部のカメリ(Cameri)空軍基地内に総工費10億㌦(1,000億円)を投じ、最新の最終組立検査施設(FACO=Final Assembly & Checkout)の建設を開始した。工場は「アレニア・エアロマッキ(Alenia Aermacchi)の協力で運営され、2016年には1号機が完成し、同国空軍に納入される。FACOでは、イタリア空軍向けの最終組立だけでなく、広くヨーロッパ、中近東のF-35の整備を受持ちたい考えだ。

もう一つの最終組立検査施設(FACO)は、日本の三菱重工により名古屋近郊小牧南工場に建設される。日本は現在F-35Aを42機導入する計画で、LRIP 8 (ロット8)生産分から完成機4機を受領し、残りをFACO施設でライセンス生産する予定。42機中の28機が中期防期間中に導入される。防衛省は2017年3月に初号機を受け取りたい意向だが多少遅れそう。この42機は航空自衛隊が運用中のF-4EJファントムの更新として導入されるもので、将来予想されるF-15の退役でさらに100機程度の追加が必要となりそうだ。

防衛省2013(平成25年度)予算では、F-35A 2機とF135エンジン3基、それに教育機材、整備費用をふくめ合計455億円が計上済み。さらに、三菱重工にFACO設置費用として640億円、IHIとエンジン部品生産準備用として180億円、三菱電機とレーダー部品生産準備用として56億円、の契約がそれぞれ締結された。

平成25年度予算でのF-35A関連経費は、合計で1,330億円、F-35Aの単価は約140億円となっている。

F-35の価格については日本でも関心が集まっているが、米国では議会、政府を中心にメーカー各社を含めて、毎月のようにコスト削減が議論されている。昨年秋に国防省はF-35のLRIP 6 (36機生産)/2014年第二四半期から引渡し、とLRIP 7 (35機生産)/2015年第二四半期から引渡し、の契約を結んだ。このなかでF-35Aの機体価格が初めて1億㌦(100億円)を切ったと大きく報道された。

実際の引渡し価格は、これにエンジン価格14億㌦と予想改修価格7.4億㌦が加わるのでLRIP 6の価格は120.7億㌦、LRIP 7は115.7億㌦(115億7,000万円)になる。生産が本格化するに伴い今後さらに安くなりそうだ。

この値はLRIP 7のうち空軍用のF-35Aの価格であり、海兵隊用のSTOVL型F-35Bは145.7億㌦、海軍用のF-35Cでは133.7億㌦と多少高い。

しかし我国やイタリア等がFACOで生産する場合は、設備費、ライセンス費等が含まれるので割高になるのはやむを得ない。

−以上−

 

本稿(その1、2、3)作成に参考にした記事は次ぎの通り。

Golden Eagles News Dec.18, 2013 “Lockheed Boosts F-35 will cost less than “Any 4th gen. Fighter” by Colim Clark

Golden Eagles News Dec. 18, 2013 “Ospreys and F-35s on Japan’s $240B shopping list” by Richard Sick in Air, Naval, Policy

Aviation Week Oct. 7, 2013, page 31~32 “Cost Target” by Amy Butler

Aviation Week Jan 6 2014, page 58~61, “Fight and Train” by Amy Butler

「F-35Bの離着艦試験は大成功」2013-02-08 by 松尾芳郎

「F-35 Lightning IIの近況」2013-02-20 by 松尾芳郎

「F-35の配備計画進む」2013-06-22 by 松尾芳郎