−トルコ空軍が受領した最新の早期警戒管制機のレーダー・システム−
2014-02-12 松尾芳郎
図:(Northrop Grumman)ボーイング737 AEW&C早期警戒管制機のレーダーは平板状ドームに納められたMESA(multi-role electronically scanned array)システム。胴体上部下部に見える多数のブレードアンテナはUHF, VHFの通信用。
図:(Northrop Grumman)平板状ドーム内に、AESAレーダー・モジュールが背中合わせに2基、上部ハット部分に1基装備され、360°周囲を監視する。各レーダー・モジュールは送受信素子288個から成り、電子的にビームを走査する。
737 AEW&C(早期空中警戒・管制機)には、ノースロッププグラマン社製の最新型MESA(multi-role electronically scanned array)(多機能型電子スキャンアレイ)レーダーが装備されている。
ノースロップグラマン社は、米国、EU、日本などが運用するボーイングE-3AあるいはE-767 AWACS(早期警戒管制機)システムの開発・供給で40年の歴史を持つ。これを背景にして新しく開発した次世代型レーダー・システムがMESAだ。
MESAはあらゆる気象条件下で、“長距離監視レーダー”、“レーダー捜索範囲内での敵味方識別(IFF)”、“水平線までをカバーする広範囲な洋上監視”、の各機能を統合したシステムである。
MESAレーダーは周囲360°監視できるのは当然だが、特定の選択した範囲/セクターを高頻度で精密に捜査できる(Sector-selected modes)。このため疑問のある目標に接近し監視する必要がなく、戦闘空域の外から友軍機の指揮ができる。
737 AEW&C機は、これまでにオーストラリア/6機、トルコ/1機+3機発注、韓国/4機、の各空軍に採用されている。
MESA搭載の737 AEW&C機は、これまでのAWACS機の常用飛行高度25,000ft (8,200m)近辺に比べ高く40,000ft(13,000m)で運用される。このため監視範囲が距離で20~50%伸びるだけでなく、低空を山岳に隠れながら飛来する敵目標を探知する能力が高い。従って、より早く警報を出せるので対処が早くなり自軍の安全に寄与する。
MESAレーダー/IFFシステムは、3基のAESAレーダー・モジュールを平板型ドームに納め、胴体上部に取付けるので空気抵抗が少ない。
在来のAWACSは、フェイズド・アレイ型AN/APY-2アンテナを使用、それと背中合わせにIFFアンテナが回転式ドームに納められている。アンテナを機械的に回転・スキャンする方式のため1回のスキャンに10~12秒かかる。
MESAレーダー・モジュールは、多数(288個)の強力な送受信素子を使い、電子的に走査するAESA(active electronically scanned array)方式なのでスキャン速度を任意にでき、疑いの目標があれば集中的に監視できる。
このモジュールは、平板型ドーム内に背中合わせに2枚とドーム上部のハット部分に1枚、合計3基取付けられて360°を監視する仕組みになっている。
このシステムは、前述の“長距離監視”、“IFF(敵味方識別)”、“洋上監視”に共通のLバンド(1~2GHz)を使い、統合化している。Lバンドは雨中での探知能力と長距離監視の点で、高い周波数のXやCバンドを使うレーダーに勝っている。
MESAは、通常10秒間隔のスキャンレートを使うが、これで34万平方マイル(88万平方キロ)以上の範囲を監視でき、毎秒3万平方マイル(7.8平方キロ)をスキャンできる。雑音や妨害の多い場合の目標捕捉/追尾にはパルス電波を使う“Multiple pulse repetition frequencies方式”で行なう。先進型電子妨害防御機能(EP=electronic protection)があり、これでジャミングなど妨害電波を排除する。
前述の“セクター選択モード”(Sector-selected modes)では探知距離が大きく伸び、同時に360°全周の監視も続行できる。この“セクター選択モード”を使うと、在来の回転式ドームAWACS機に比べ目標捕捉率が3~4倍に、また目標追尾の情報更新が8~10倍も早くなる、と云われている
−以上−
本稿の作成に参照した記事は次ぎの通り。
Northrop Grumman “Multi-role Electronically Scanned Array (MESA) Surveillance Radar”