米露、相次いで核戦力の機動演習


2014年5月14日(JST.11:15)                     Aaron Terruli & John Bosnitch 米露双方の核戦力部隊がここへきて相次いで機動演習を行ったことが判った。ノーボスチ通信,RT(ロシア・ツデー)等が報じた。核兵器搭載が可能な戦略爆撃機などの即時対応能力を改めて検証したと見られる。背景には米露ともウクライナ情勢を睨んでの動きと見ていい。 先陣を切ったのは、ロシア側。ウクライナ東部の住民投票前日の5月8日、予告なしに実施した。当日、投入したのは、移動型1CBMSS-25『トーポル』、弾道ミサイル搭載(SLBM)の複数の原潜。それに戦略爆撃機トゥポレフTu-95『ベア』。 『トーポル』はカムチャッカ半島、クーラ・ミサイル実験場の標的に命中、精度の良さを誇示した。SLBMは北海、太平洋艦隊から参加、短距離ミサイルを試射したという。更に、空軍の戦略爆撃機トゥポレフTu-95『ベア』は巡航ミサイルを6発発射、軍の即応体制の万全ぶりを内外に示した。 当日は、参謀本部の戦闘司令室にウラジミール・プーチン大統領が乗り込む力の入れよう。旧ソ連邦構成国で政治、経済面で関係が密なベラルーシ、アルメニア、タジキスタン、キルギスタンの各大統領も加わった。 一方、米軍は一足遅れて、5月12~16日に戦略爆撃機16機を動員した『Global Lightning 14』の名称で軍事演習を実施中。参加した機体はボーイングB52H『ストラトフォートレス』10機とステルス爆撃機、ノースロップ・グラマンB2『スピリッツ』6機。敵の攻撃に直ちに立ち向かう核戦力の三本柱の一翼を担う。 露軍はウクライナとの東部国境付近に40,000~80,000人の兵力を展開したままで、NATO(北大西洋軍事機構)は衛星写真の分析で兵力を移動させた様子はないと分析している。そこへ核戦力の即応能力を実証することで、『ウクライナ、NATO加盟国に”無言の圧力”をかけたと見られる』(NATO軍事筋)。 米側の演習はロシアへの露骨な敵視策ではなく、『クレムリンへのある種の警告と見られる』(軍事アナリスト)。 しかし、核戦力の超大国がこの種の動きにほぼ同時に出たことは、クリミア半島併合後のウクライナ情勢が決して予断を許さないことを示唆している。 bombers_b52_0014 [(US AIR FORCE,Boeing)米空軍の核戦力で依然、第一線に留まるB-52』 2013_Tu-142M_02_500 [(UAC,Beriev JSC)トゥポレフTu-95戦略爆撃機の姉妹機、偵察型改修機]