珠海での中国航空ショー「中国国際航空航天博覧会/Airshow China」


2014-11-17松尾芳郎

 

マカオ近郊の珠海(Zhuhai)で11月11日から16日まで中国航空ショーが行われた。豊富な国防費を背景にした中国空軍の躍進振りが公開され、衆目を集めている。

最も注目されるのは、開発中の瀋陽(Shenyang) J-31戦闘機と西安(Xian) Y-20大型輸送機の2機種が飛行展示された点だ。

J-31ステルス戦闘機はショウー開始の前日から殆ど連日デモ飛行が行われ、Y-20輸送機も飛行展示され、大型機ながら軽快な飛行振りを示した。もう一つ目を引いたのはY-20輸送機の隣に駐機していたKJ-2000早期警戒管制機(AWACS)。KJ-2000はロシア製イリューシン(Ilyushin) Il-76輸送機をベースにして作られ、すでに実戦配備されている。

さらに中国空軍が購入を要望しているロシア製スーホイ(Sukhoi) Su-35も珠海ショーにお目見えした。曇天で湿気の多い空をサターン117Sエンジンの轟音を響かせながら飛行する姿に観衆は圧倒されたと云う。

民間機の展示は限られていたが、ハルビン航空機が製作した小型旅客機Y-12が米国の航空会社から20機の受注に成功したのもニュースだ。Y-12はP&WC PT-6ターボプロップを装備する高翼機で、FAA型式証明を取得済みの唯一の中国機である。発注したのはラスベガスとグランドキャニオンを結ぶ路線を運航する会社で、現在はDHC-6 Twin Otter(19席)を16機使っているがDHC-6が製造中止となったため、その代替として同サイズのY-12の購入を決めたもの。

J-31試作機

図:(Chinese Military Review)瀋陽(Shenyang) J(殲)-31は、2012年10月に初飛行、存在が公開された中国空軍の次世代型ステルス戦闘攻撃機である。以前はF-60あるいはJ-21と呼ばれていた。エンジンが双発であることを除けば、米国のロッキードマーチン製F-35と形が良くいている。先に公表された大型のJ-20ステルス戦闘爆撃機を補完し、対空、対地戦闘を主任務とする機体。エンジン性能が立証されれば、東南アジア諸国向けの輸出競争力は大きくなる。

試作1号機31001はロシアのRD-93 (推力19,000lbs/84kN)エンジンを2基搭載している。中国空軍はRD-93を国産化したGuizhou WS-13(推力22,000lbs/100kN)をすでにJF-17戦闘機に搭載している。そしてこれを改良、開発中のWS-13Aエンジンが完成すれば量産型J-31に採用する予定。

J-31は、全長16.9m、翼幅11.5m、高さ4.8m、全備重量17.6㌧、戦闘行動半径1,250km。

J-31は試作1号機31001のみが飛行している。

J-31量産機

図:(Aviation Week Bill Sweetman)J-31の量産型モデルのモックアップ。原型機と垂直尾翼が異なり、エンジン排気ノズルが波形になっている。

WS-13エンジン

図:(Aviation Week Bill Sweetman)Guizhou WS-13ターボファン・エンジン。スーホイ系列機用クリモフ(Klimov)RD-93ターボファン・エンジンを国産化したモデルで、中国/パキスタン共同開発のJ-17戦闘機に搭載。WS-13は推力86kN(19,000lbs)、開発中の改良型WS-17Aは推力100kN(22,000lbs)で、推力増強と信頼性向上を目指している。GE F404エンジンに相当する。

Y-20大型輸送機

図:(人民日報)西安(Xian) Y(運)-20大型輸送機、貨物等の搭載量は66㌧、最大離陸重量は220㌧、昨年(2013)末に初飛行し、現在試作機3機が試験飛行中。中国空軍ではアジア太平洋地域での迅速な兵力展開のため、今後10年間で300〜400機を配備したいとしている。エンジンはロシア製D-30KP-2を4基装備しているが、将来は自国産の”WS-20”推力14㌧クラスのターボファンを使う予定。

KJ-2000 AWACS

図:(人民日報)KJ-2000早期警戒管制機は、イリューシンIl-76をベースにし、南京電子技術研究所が開発したAESAレーダーを3基、三角形、固定式に配置し、レドームは回転しない。2003年に発飛行、現在4機が配備されている。

Shukhoi Su-35

図:(Flight Global)珠海航空ショーで曇天下を飛行するロシアのスーホイSu-35。前身となるSu-27から、カナードとエアブレーキを廃し、アビオニクスとレーダーを近代化し、推力偏向装置付きのエンジンに換装した機体で2007年に初飛行。第五世代戦闘機までの橋渡しをすると云う意味「4++ 世代戦闘機」と称している。ロシア空軍はSu-35Sを48機発注。中国は2006年から購入を希望しロシア側と折衝を続けている。中国はサターン117Sエンジン付きのSu-35戦闘機24機購入を今年中に契約したいとしている。

Harbin Aircraft Y12F

図:(Chinese Military Review)航空ショー上空を飛行するハルビン(Harbin)航空機製Y-12F小型旅客機。P&WC製PT6A-65Bエンジン2基を装備し19席、引込み脚で、同クラスのDHC-6 Twin Otter より洗練されている。中国機の中で唯一のFAA型式証明取得機だ

–以上−

 

本稿作成の参考にした記事は次ぎの通り。

Flight Global 11/10/2014 “Airshou China: J-31, Y-20, MA700 to star at Zhuhai” by Greg Waldron

Aviation News 2014/11/11 “China to Showcase New Defense Equipment at Zhuhai” Nov 3, 2014 Richard D. Fisher,Jr./Aviation Week

SUKHOI “Su-35 multi-role fighter”

Chinese Military Review “Chinese Y-20 Heavy Military transport Aircraft at Zhuhai Airshow 2014”

同“Meet Sino-BrahMos *Chinese CX-1 Ramjet Supersonic Anti-Ship Cruise Missile”

同 “Refined Model of Shenyang J-31 Falcon Eagle Steals Fighter Aircraft at Zhuhai 2014”