2014-12-22 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表(2014-12-16)によると、12月16日(火)にロシア空軍の戦略爆撃機Tu-95が2機、対馬海峡を南下して沖縄本島と宮古島の間を通過し西太平洋に向かった。これに対し、航空自衛隊は戦闘機を緊急発進させて領空侵犯を防いだ。
2機のTu-95は台湾あるいはフイリピン東方海上に向かった模様で、その後反転してシベリアの基地に戻った筈だが、復路は我国の防空識別圏を通過せずに友好国である中国上空を経由して基地に帰った模様。
最近ロシア空軍機は、我国周辺のみならず北欧諸国近辺でも活発に行動していて、イギリス、スエーデン、ノルウエー諸国では空軍機がその都度緊急発進で対応している。原油価格の下落で経済危機に見舞われているロシアだが、このような挑発的行動に出るのは何を意味するのか?プーチン政権の求心力維持のため、対外緊張を高める狙いがあるのか。
図:(防衛省統合幕僚監部)ロシア空軍Tu-95 戦略爆撃機2機の飛行経路。ロシア空軍は2009年以降重爆撃機部隊を極東シベリア地区、旧満州ハルビンの北約600kmのアムール川畔にあるウクライニカ(Ukrainika)空軍基地に集中配備している。従って今回のTu-95もここから飛来したものと思われる。ウクライニカ基地から台湾あるいはルソン島東方海域までは3,000〜3,500km、Tu-95は燃料を満載すれば途中給油無しで往復できる。
図:(防衛省統合幕僚監部)ツポレフTu-95ベア(Bear)は1956年に配備が始まった戦略爆撃機だが今でもロシア空軍の重要な一翼を担う。1984年から新型のTu-95MSに更新、63機が配備されている。Tu-95MSは長射程巡航ミサイルを16基搭載可能。軸馬力14,800hpのクズネツオフ(Kuznetsov) NK-12MAターボプロップを4基装備し最大離陸重量185㌧、最高速度925km/hr、航続距離は6,400km。海軍用の哨戒機型としてTu-142がある。
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