2015-02-19 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表(2015-02-13, -14, -15)によると、2月13日(金)正午頃海上自衛隊大湊基地第15護衛隊護衛艦「はまぎり」と第1航空群鹿屋基地所属のP-3C哨戒機が沖縄本島–宮古島間の海峡を東シナ海から太平洋に航行する中国艦艇を発見した。海峡を通過したのはソブレメンヌイII級ミサイル駆逐艦1隻とジャンカイII級フリゲート1隻。また、続いて14日と15日には同海峡を往復する情報収集機Y-9それぞれ1機ずつを発見した。
この相次ぐ中国軍による我国の領海、領空接近に対し、海自は哨戒機で、空自は戦闘機の緊急発進で対応、侵犯を防いだ。
また前後して、中国海警局所属の警備艦が連日のように沖縄県尖閣諸島の接続水域に侵入し、我が海上保安庁の巡視船と睨み合いを続けていた。
これに先立つ1月29日には、習近平主席が中国軍高官との会議の席上で「軍事外交の重要性が増している。・・・“強軍”の実現に貢献せよ」と訓示して新しい人事を発表している。その中で、腹心の陸軍南京軍区高官“苗華”を海軍のNo. 2に充て、東海艦隊と南京軍区の連携強化を図った。この人事は尖閣諸島や南シナ海での紛争を念頭に置き「陸海両軍の統合作戦が今後重要になる」ので、その布石とされている。
また近着の外電(Defense Industries Daily 2015-02-18)によると、島嶼上陸作戦に必要なZubr級エアクッションド・ランデイング・クラフト(LCAC)の輸入問題で、中国はロシアと合意した、と報道されている。内容は明らかにされていないが、中国は4隻を輸入し以後は技術移転で量産を図る考え、と云う。Zubr級LCACは大型で500名の兵員、あるいは3輛の戦車、または10輛の装甲車を乗せて、速度60 ktで海上を疾走し上陸作戦をおこなえる。米海軍(91隻)と海上自衛隊(6隻)が運用するLCACはずっと小さく、積載量はZubr級の半分以下で、戦車は1輛しか搭載できない。
今回の中国艦艇の動向と情報収集機の飛行は、習近平の掲げる目標達成に向けての活動の一つと受け止めるべきだろう。折からの春節で大勢の中国人が来日し、お土産品の売上が急増するのを喜んでばかりはいられない。
図:(統合幕僚監部)中国海軍にはソ連から購入したI型2隻と、新たにロシアに発注したII型2隻がある。艦番号138「泰州」は2005年末就役。後甲板にヘリを搭載する。対空ミサイルは射程25kmのSA-N-7が2基。艦橋脇両舷にマッハ3の対艦ミサイルSS-N-22 4連装(斜めに見える)を搭載する。東海艦隊に所属している。
図:(統合幕僚監部) 「江凱II」型フリゲートの一隻、「徐州」艦番号530、2008年就役、満載排水量約4,000㌧。現在同型艦は20隻が就役中で北海、東海、南海、の各艦隊に配備されている。対空ミサイル短SAM HHQ-16 は米海軍と似た32セルのVLSに納められている。この他にYJ-83対艦ミサイル4連装発射機2基を備える。
図:(統合幕僚監部)2月14日、15日に沖縄本島–宮古島間を往復飛行した情報収集機Y-9の航跡。2月13日に東シナ海から太平洋に抜けた中国艦艇もこの海域を航行、南東に向かった。
図:(統合幕僚監部) 航空自衛隊機が撮影した「Y-9情報蒐集機」、陜西(Shaanxi) 航空機が製造中の「Y-9」4発中型輸送機に電子装備を施した情報蒐集機。「Y-9」輸送機は「Y-8」を改良し航続距離を伸ばした機体で、初飛行は2010年の新鋭機。最大離陸重量77㌧、航続距離は5,700km。昨年12月6日から3日間連続して同じ空域を通過したため空自戦闘機が緊急発進を繰り返して対応した。
–以上−