2015-03-22 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表(2015-03-20)によれば、ロシア空軍戦略爆撃機Tu-95の2機が3月20日相次いで我国領空に接近したため、航空自衛隊戦闘機が緊急発進し領空侵犯を防いだ。1機は日本海から対馬海峡を南下し九州北部の領空に近づき南西に向け飛行、北方に反転した(図1参照)。他の1機は東シナ海から沖縄本島と宮古島の間を通過、太平洋にでて北東に変針、本州太平洋岸をかすめて北海道国後島上空を通過して樺太方面に飛び去った(図2参照)。
図1:(防衛省統合幕僚監部)ロシア空軍Tu-95型機の航跡1。
図2:(防衛省統合幕僚監部)ロシア空軍Tu-95型機の航跡2。
図3:(防衛省統合幕僚監部)3月20日に我国領空に接近したロシア空軍戦略爆撃機Tu-95。ツポレフTu-95ベア(Bear)は1956年に配備が始まった戦略爆撃機だが今でもロシア空軍の重要な一翼を担う。1984年から新型のTu-95MSに更新、63機が配備されている。Tu-95MSは長射程巡航ミサイルを16基搭載可能。軸馬力14,800hpのクズネツオフ(Kuznetsov) NK-12MAターボプロップを4基装備し最大離陸重量185㌧、最高速度925km/hr、航続距離は6,400km。海軍用の哨戒機型としてTu-142がある。
ロシア空軍は、我国周辺だけでなく世界各地で挑発的な示威飛行を繰り返している。イギリス国防省によると、去る2月18日には英国領空近くにロシア空軍のTu-95戦略爆撃機2機が飛来したため、英空軍の戦闘機が緊急発進して侵犯を阻止した、と云う。すなわち、イングランド南西部のコーンウオール(Corn Wall)半島に近い大西洋上空に2機編隊のTu-95が飛来したため、タイフーン戦闘機が緊急発進してロシア機を領空外の洋上に誘導した。
NATO(北大西洋条約機構)は、2014年11月までのほぼ1年間で、加盟国の空軍機がロシア軍機に対し緊急発進した回数は400回以上になり、2013年の回数の50%を超えた、と発表している。
図4:(英国防省)2015年2月18日、英国南西部大西洋上空に飛来しロシア空軍戦略爆撃機Tu-95と緊急発進した英空軍タイフーン戦闘機(下)。
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