北海道宗谷岬付近でロシア海軍艦艇の動きが活発化


2015-06-25(平成27年) 松尾芳郎

 

ここ数日、北海道北端の宗谷海峡でのロシア海軍艦艇の動きが再び活発化している。統合幕僚監部の発表によれば次の通り。これら4件の発表のうち3件は「キロ級」潜水艦1隻ずつが宗谷海峡をオホーツク海から日本海に向け通過したとの報告である。去る6月5日、同9日、同10 日に同型艦1隻ずつが宗谷海峡を東進していることから、今回の3隻はオホーツク海からウラジオストック基地に帰投するところだったらしい。

 

・27-06-19発表:6月18日午後1時ごろ、宗谷岬の北東130 kmの海域をキロ級潜水艦1隻が南西に向かい宗谷海峡を通過し、日本海に入る。発見したのは八戸基地、海上自衛隊第2航空群所属の「P-3C」哨戒機。

 

・27-06-22発表:6月19日午後8時ごろ、宗谷岬の西北西100 kmの海域をウダロイI級ミサイル駆逐艦2隻(艦番号572と543)が東進しオホーツク海方面に入った。発見したのは海上自衛隊大湊地方隊第1ミサイル艇隊(余市基地)の「わかたか」と八戸基地海上自衛隊第2航空群所属「P-3C」哨戒機。「わかたか」については図8を参照。

 

・27-06-22発表:6月21日午前10時ごろ、宗谷岬北東135 kmの海域を西へ向かい宗谷海峡を通過し日本海に入るキロ級潜水艦1隻を確認した。発見したのは八戸基地所属の海自「P-3C」哨戒機。

 

・27-06-23発表:6月23日午前5時ごろ、宗谷岬の北東120 kmの海域を西に向かい日本海に入るキロ級潜水艦1隻を発見した。発見したのは八戸基地所属の「P-3C」哨戒機。

キロ級06-18

図1:(統合幕僚監部)6月18日午後1時ごろ宗谷海峡を西進し日本海に入る877型「キロ級」潜水艦。太平洋艦隊には877型キロ級潜水艦を8隻配備中、これらは主力がウラジオストックに、一部がペカムチャツカ半島南部太平洋に面したトロパブロフスク・カムチャツキー(ビリチンスクとも呼ぶ)に駐留している。キロ級には877型と636型があり、後者が新型である。

キロ級艦橋06-18

図2:(統合幕僚監部)図1の艦橋付近。もやのため鮮明ではないが、艦橋前部には窓、上部には乗員4名とロシア海軍旗、潜望鏡、通信用アンテナ、潜望鏡、レーダーなどが見える。艦橋には艦対空ミサイル(SAM)ランチャーがあり、浮上中は対空戦闘ができる。西側にはSAM装備の潜水艦はない。

06-19ウダロイ1級

図3:(統合幕僚監部)6月19日午後8時ごろ宗谷海峡を東進しオホーツク海に向かう「ウダロイI級」ミサイル駆逐艦、艦番号572。もう1隻の同級艦、艦番号543の写真はない。両艦は去る2015-02-05に対馬海峡を南に航行したことを確認済み。ウダロイ(Udaloy)I級ミサイル駆逐艦は満載排水量8,500㌧の大型対潜艦。強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、対潜ヘリコプター2機、それにSA-N-9型個艦防空ミサイルを装備する。1980年から1991年にかけて12隻が就航し、現在8隻が現役にある。太平洋艦隊にはこの内4隻が配備されている。

06-21キロ級潜水艦

図4:(統合幕僚監部)6月21日午前10時ごろ宗谷海峡を通り日本海に入る「キロ級」潜水艦

06-21キロ級艦橋

図5:(統合幕僚監部)同艦の艦橋

06-23キロ級

図6:(統合幕僚監部)6月23日午前5時ごろ宗谷海峡を西に向かい日本海に入る「キロ級」潜水艦。

06-23キロ級艦橋

図7:(統合幕僚監部)同艦の艦橋付近。乗員が双眼鏡などで海自P-3C哨戒機を見ている。艦橋前端にガラス窓がついている。

わかたか

図8:(JMSDF)海上自衛隊大湊地方隊余市防備隊所属第1ミサイル艇隊の「わかたか」PG-825。同型艇は「はやぶさ型」として6隻配備中。基準排水量200トン、速力44ノット、艦首に62口径76 mm速射砲1門と艦尾に90式SSM対艦ミサイル連装発射装置2基を備える。推進装置はGEが開発しIHI生産のLM500-G07出力5,400 hpを3基搭載、ウオータージェット方式。

 

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