ロータックス・エンジンの改良キット、「ハイブリッド推進装置(HPS)」が出現


-2015年パリ航空ショーでイスラエルとイタリアの開発グループが発表-

 

2015-06-24(平成27年) 松尾芳郎

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図1:(Israeldefense.co.)「ハイブリッド推進装置(HPS)」キットを装備したロータックス・エンジン。HPSキットは、新しいギアボックスとプロペラシャフト、交流発電兼用の電動モーター、新型の出力調整装置、蓄電用のリチウム-ポリマー電池で構成されている。

 

ロータックス製軽飛行機用エンジン「Rotax 912および914」の改良用キットが発表された。

これは、軽飛行機や小型無人機に使う革新的な「ハイブリッド推進装置(HPS= hybrid propulsion system)」で、先日行われた「2015年パリ航空ショー」で公表された。「ハイブリッド推進装置(以後HPS)」は、イスラエルの国防企業“アショット・アシュケロン(Ashot Ashkelon)”社が中心となり、イタリアの軽飛行機メーカー”CFM Air”と“エフェスト(Efesto)”社が協力して開発したもの。

「Rotax 912および914」エンジンの改良キット「HPS」は、“アショット”社が新しいギアボックスを開発、それに“エフェスト”社開発の発電兼用のDC/ACモーターと制御装置を介して、新しいプロペラシャフトを駆動する。“エフェスト”社は、大容量のリチウム-ポリマー電池も用意した。

この「HPS」キットの重量は30 kgで、6つの機能でプロペラを回転する。すなわち、主エンジン故障の場合や、特に無人機などで“静粛モード(silent mode)”で飛ぶ場合は主エンジンを止め、プロペラシャフトとの接続を切り、バッテリーの電力でプロペラを回し飛行する。

離陸時に必要があれば、主エンジンと電力駆動を併用してプロペラ出力を上げ、障害物を避けて急上昇できる。着陸時には、電動モーターでプロペラを“逆回転モード”にし逆推力を発生させ、滑走距離を短くする。主エンジンに取り付けられているAC/DCモーターは、バッテリーの充電と主エンジン始動用スターターの役をしている。また電力推進は、低高度を飛ぶときに不愉快な振動を抑えスムースに飛ぶため“アクデイブ・バイブレーション・ダンピング(active vibration dumping)”モードで飛行することもできる。

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図2:(CFM Air)2015年パリ航空ショーではCFM Air社が作るDARDO軽飛行機に「ハイブリッド推進(HPS)」キット付きのロータックス・エンジンを搭載、デモ飛行を披露した。

 

DARDO軽飛行機は、図2のように単発2人乗り、ロータックス912または914エンジンを搭載、引き込み式ランデイングギヤ、定速プロペラ、最大離陸重量は600 kg、主翼や胴体などは炭素繊維複合材製、巡航速度250 km/hr (156 mph)、航続距離1,000 km、の小型機。エンジン停止などの非常時に備え胴体にパラシュートを装備するが、「HPS」改修キットを取り付ければ不要となる。

「HPS」の機能でエンジン停止後6分間は電動飛行が可能となり、この間に着陸地点を見つけ安全に着陸できる。

余談だが、CFM Airの主席パイロット”モリジオ・チェリ(Maurizio Cheli)”氏はイタリア空軍中佐を退役後、CFM Air社を設立した。現役時代にイスラエル空軍のパイロット”イラン・ラモン(Ilan Ramon)氏と一緒にNASAの宇宙飛行士訓練を受けた。これが縁となり今回の共同開発となった、と云う。

“ロータックス(Rotax)航空エンジン“は、オーストリアの”BPRパワートレイン”社が設計製作中の4気筒水平対向型空冷エンジン(我が国の富士重工製乗用車スバルのエンジンと同じ形式)。それ自体、信頼性が高く実用や研究用の軽飛行機用として世界中で評価され、現在約200機種に使われている。

基本形は80馬力の”912”型、これを100馬力にした”912S”型、それに115馬力型の”914”型を生産中である。これらが「HPS」改修キットの顧客となる。

-以上-

 

本稿作成に参照した主な記事は次の通り。

Aviation Week Show News Jun 16, 2015 “Hybrid-Electric Propulsion for Rotax” by Moam Eshel

Israel Defense 3/06/2015 “Isaeli Development: Ina state fo enginee failure- additional flight time to prepare for an emergency landing”