日・英・伊共同開発の次世代戦闘機「GCAP」の近況



2026-07-04(令和8年) 松尾芳郎

図1:(BAE Systems) BAEが発表した2027年末に初飛行する技術実証機の想像図。これまで発表されてきた想像図とは異なり一段と精悍な姿に変貌した。

2026年6月末にBAEシステムズは、一部の欧州専門メデイアにほぼ完成に近づいた日英伊共同開発の戦闘機[GCAP]の技術実証機を公開した。(BAE Systems exhibit UK’s new combat war plane, GCAP, flying demonstrator to the small group of European experts, which expect to fly end of 2027. )

英国ランカシアー(Lancashire)にある BAEのサムレスバリー(Samlesbury)工場ではユーロファイター・タイフーン(Eurofighter Typhoon)戦闘機の胴体部分を生産中だが、ここの一隅で新戦闘機の技術実証機モデルの組立が進んでいる。

イタリア、日本、イギリス3カ国が共同で開発する第6世代戦闘機「[GCAP]/Global Combat Air Program(世界戦闘機計画)」の実証機がそれだ。レーダー反射面積の少ない形状(LO=low-observable)で胴体にミサイル収納用ウエポン・ベイを備えている。

BAEの前身が、ユーロファイター・タイフーンの開発に先立って1980年代に「技術実証機計画(EAP=Experimental Aircraft Program)として実証機を作り飛ばした経験がある。この実証機は1986年8月8日の初飛行で超音速飛行を達成した。このお陰で生産型タイフーンの開発は順調に進んだ。これで技術実証機は獲得した知見を生産型機に反映する“鏡”の役割を果たすことを証明した。

英国は今回の[GCAP]でも同じ「技術実証機計画(EAP)」を適用するすることを決めた。これが2027年末に初飛行予定の「技術実証機」である。BAEは昨年(2024)7月のファーンボロー(Farnborough)航空ショーでこのように説明している。

BAE幹部トニー・ゴッドボルド(Tony Godbold)氏は「タイフーンで実施した「EAP」と同じことを「GCAP」でも実行する。これを通じて(技術・製造工程にある未解決の問題点)つまり“境界(boundary)”、を埋め、目標の「GCAP」を円滑に完成する」と話している。

実証機の75 %(容積で)の部品はすでに完成済みで、最終組立ては約1年半後になる。

前部胴体、中部胴体、後部胴体は“レーザー使用精密ジグ”を使って組立中、スキンをドリル付けし、テイル・フィンを取付けるばかりの「コア」(cigar tube/葉巻の形)に出来上がっている。これから近くのワートン(Warton)工場に移動し、ここで主翼と2枚のテイル・フィン(tail fin)を取付ける。

図2:(BAE Systems) サムレスバリー(Samlesbury)工場で組立中の胴体。

実証機の「コア」部分は「GCAP」と殆ど同じ。短いデルタ翼(cropped delta)には、2台のエンジンと長い曲がりくねったダクト2本を内側に収める。

[GCAP]開発で、エンジンが期待通りの性能を発揮できるダクトを設計し製作するのには大変な努力が必要だが、実証機の製作でかなりの時間をセーブできる。従来は複雑な機械加工が必要だったインレット・ダクト先端にTi製インテイクを取付ける工程には、3Dプリント製造法 (additive layer manufacturing)を使い大幅に時間を短縮する。

図3:(BAE Systems)2024年7月に公表されたGCAP実証機の胴体フレーム。

主翼には(フラップ・エルロンなど)補助翼を動かすアクチュエータがあるが、これを取付ける「受け台(cradle)」は「熱間等方圧加圧装置 (HIP=Hot Isostatic Press)」を使い、粉末チタンで作る。[HIP]工作法は、異種素材間の接合・組立に使われる最新の加工法)で、これで時間と材料費がかなり節約できる。

フライト・コントロール基準(Flight Control Low)の作り方にも最新のソフト技術を適用し、テスト・パイロットは既に300時間以上もシミュレーター飛行を達成し、操作上のデータを逐一フライト・コントロール基準(の改善)に反映させている。

こうして全体のプログラムは来年末の初飛行に向け、順調に推移している。実証機には、2台のユーロジェット(Eurojet) EJ200エンジンが取付けられる。

GCAP/実証機のサイズは未発表だが、機体の長さは現用戦闘機タイフーンの10.9 mより3分の1ほど大きい。全長は20 mを超え、ロシアのステルス戦闘機Su—57 (全長20.1 m)に匹敵する大型機になりそうだ。米国製のF-22 (18.9 m),F-35 (15.7 m)を大きく上回る戦闘機となる。これに伴い2基あるウエポンベイも空対空ミサイルAMRAAMだけでなく空対艦ミサイルの搭載も可能になりそうだ。

イギリス国防省は、今年6月30日に国防費支出計画(DIP=Defense Investment Plane)を発表した。この中で、GCAP開発継続に必要な経費をF-35A戦闘機12機の追加発注費用などと共に計上した。

スターマー首相は6月30日、「国防投資計画」を発表し、2029年までに国防費を年間800億ポンド、日本円で約17兆1000億円まで引き上げると表明した。その中で、日本、イギリス、イタリアが進める[GCAP]次期戦闘機の共同開発に86億ポンド、およそ1兆8000億円を支出すると発表した。

イギリスの財政難による支出削減で{GCAP}の開発に支障が出るとの懸念があったが、これで技術実証機の完成が確実になった。

終わりに

防衛省が公表している「次期戦闘機の開発について」によると、

2020年ごろの我が国の戦闘機保有数は320機、これは中国の4分の1、ロシアの3分の1、程度。

2030年ごろの機数は、F-15近代化機(約100機)、F-2(約90機)、F-35(147機)であり、2035年ごろにはF-2の退役が始まり更新として日英伊共同開の「GCAP」の導入を予定。

図4:(防衛省)令和7年(202512月の我国戦闘機部隊の配置状況。F-35は147機取得予定(F-35A/105機プラスF-35B/42機)で、F-35Aは三沢基地と小松基地に2個飛行隊ずつ、5番目の飛行隊は千歳基地に配備される。図中の略号は「SQ=飛行隊」「UG=改良型」。

開発には3カ国の企業が参加している。

イギリス:主契約はBAEシステムズ、ロールスロイス/エンジン、レオナルドS.p.A/電子機器

日本  :主契約は三菱重工、IHI/エンジン、三菱電機/電子機器

イタリア:主契約はレオナルドS.p.A、アビオ・エアロ/エンジン、MBDA/ミサイル

2030年に生産型初号機の製造開始、2035年に初号機の納入、を予定している。

2027年末の技術実証機の初飛行は、先月末の英国スターマー首相の予算措置決定で確実となった。生産型機の製造・配備までには長い道のりが予想されるが、実証機の飛行で多くが解決されることを期待する。

―以上―

本稿作成の参考にした主な記事

  • FlightGlobal 2026-06-30 “How BAE’s future fighter technology demonstrator is shaping up”
  • FlightGlobal 26 June 2026 “BAE Systems to launch fuselage final assembly on UK’s combat air flying demonstrator” by Creg Hoyle
  • TBS NEWS DIG 7月1日20216年“日英伊時期戦闘機に1兆8000億円支出へえ、英「国防投資計画」
  • 乗り物ニュース7月2日2026年 “日英伊の次世代戦闘機 色々と「でかい」驚愕の姿明らかに?実証機はもう75 %完成!?”