ロシア海軍の艦艇多数が宗谷海峡を通過


2015-07-15 (平成27年) 松尾芳郎

 

衆議院での安保法制を巡る騒ぎの最中、7月10日から翌11日にかけてロシア海軍艦艇多数が北海道宗谷岬沖を通過、日本海に入った。

防衛省統合幕僚監部の7月13日発表によれば、10日(金)午前2時半から11日(土)午前7時半ごろにかけて、宗谷岬北東60 kmの海域を西進するロシア海軍艦艇合計12隻を発見、その後宗谷海峡を通過したことを確認した。

発見したのは宗谷海峡の警戒監視に当たっている海自第一ミサイル艇隊余市基地所属の「くまたか」と八戸基地の第二航空群所属の哨戒機P-3Cである。

 

宗谷海峡を通過したロシア海軍艦艇は次の通り。カッコ内の数字はそれぞれの艦艇番号を示す。

(1)  7月10日午前2時半ごろ、ロプチャーI級戦車揚陸艦1隻 (055)

(2)  7月10日午後10時ごろ、グリシャV級小型フリゲート1隻 (323)

(3)  7月10日午後11時半ごろ、アルタイ改級補給艦1隻 (IZHORA)

(4)  7月11日午前5時半ごろ、タランタルIII級ミサイル護衛哨戒艇3隻 (971) (978) (937)

(5)  7月11日午前6時半ごろ、ウダロイI級ミサイル駆逐艦1隻 (543)

(6)  7月11日午前7時ごろ、グリシャV級小型フリゲート3隻 (390) (350) (354)およびアリゲーター IV級戦車揚陸艦1隻 (081)

(7)  ‘月11日午前7時半ごろ、オビ級病院船1隻 (IRTYSH)

 

以下に通過したロシア海軍艦艇の写真を掲載するが、哨戒機P-3Cが撮影した写真2枚は鮮明だが、ミサイル艇「くまたか」が撮影したと思われる10枚の写真は、靄がかかった状態の不鮮明なものが多いので、数枚のみを掲載する。

11ロプチャー戦車揚陸艦055

図1:(統合幕僚監部)ロプチャー(Ropucha)型はプロジェクト775型と呼ばれ、ロシア海軍の揚陸艦部隊の中核的存在。現在19隻が在籍中、太平洋艦隊の第100揚陸艦旅団に所属している艦は4隻ほどで、沿海州からカムチャツカへの物資輸送に活躍している。満載排水量4,000トン、タンクデッキに貨物500トン及び装甲車両24輌を搭載、兵員225名を輸送できる

10グリシャV級323

図2:(統合幕僚監部)グリシャ(Grisha)型は1124型小型対潜艦と呼び、1970年代から90隻以上建造された。グリシャV型はその最新版で28隻が就役中。満載排水量1200トン、速力34 kt、対潜ロケット砲2基 (96発)など強力な対潜装備を持つ。

10アルタイ補給艦

図3:(統合幕僚監部)アルタイ改級補給艦

11タランタル哨戒艇971

図4:(統合幕僚監部)タランタル(Tarantul)ミサイル護衛哨戒艇はコルベットで、ロシア海軍では1241型大型ロケット艇と呼んでいる。11日に通過したのは艦番号(971) (978) (937)の3隻である。満載排水量約500トン、対艦ミサイル3M-80連装発射機2基を備え、敵水上艦隊の撃破を主任務とする汎用哨戒艇。さらに個艦防空用の対空ミサイル9K38イグラ発射機1基を持つ。最大速力41 kt。20隻以上が現役として配備中とみられる。

 

11グリシャV級フリゲート353

図5:(統合幕僚監部)本級については図2参照。

 

統幕監部が発表した11日早朝撮影のウダロイI級ミサイル駆逐艦 (543)の写真はあまりにも不鮮明なので別の写真を示す。

ウダロイ543

図6:ウダロイ(Udaloy)級駆逐艦はロシア海軍では1155大型対潜艦と呼ばれ、対潜、対空任務に重点をおいた汎用艦である。前級ソブレメンヌイ級駆逐艦の後継となる新型艦。満載排水量8,500トン、最大速力約30 kt、AK-100 100 mm単装砲2門、対空機関砲30 mm CIWS 4基、対空ミサイルSA-N-9 8連装VLS 型8基、対潜ロケット12連装発射機2基などを装備する。太平洋艦隊には4隻が配備中。日米海軍のイージス艦に近い性能を持つ。

 

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