新型哨戒機P-1、英フェアフォード空軍基地で初の展示飛行


2015-07-21(平成27年)  松尾芳郎

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図1:(Royal International Air Tattoo News)海上自衛隊の新型哨戒機、川崎重工製「P-1」が7月15日英國フェアフォード空軍基地に到着、17-19日開催の王立国際軍事航空ショー(RIAT 2015)でデモ飛行を行い、注目を集めた。

 

海上自衛隊は新型哨戒機「P-1」2機を初めて海外の航空ショーに出展するため、英国のフェアフォード空軍基地に派遣した。ここでは例年世界最大の軍事航空ショー「王立国際軍事航空ショー(RIAT =Royal International Air Tattoo)」が行われるが、今年は7月17-19日に開催された。

2機の「P-1」は厚木基地第51航空隊の所属の5504と5507号機で、7月10日(金)に厚木基地を出発し太平洋を横断、米国東海岸のオセアナ海軍航空基地(NAS Oceana, Virginia)に着陸、乗員の休養と給油の後、大西洋を無着陸で横断して英国に到着した。「P-1」2機はRIAT 2015の展示飛行後、海自海賊対処部隊が駐留する東部アフリカ、ソマリア北部のジフチ(Djibouti)空港に立ち寄り、高気温下での運用試験を行ってから帰国する。

現地の報道では「P-1」を次のように紹介している;—

「P-1」の飛行展示は簡単ではあったが有効なデモ飛行であった。超低空を飛ぶローパスは2回で、うち1回は爆弾倉ドアを開いて行われた。[P-1]の外形はかってのDC-8に似ているが、ずっと若々しく洗練された形で、ランウエイを1,500 mほど滑走し離陸するや急角度で上昇した。また、離陸して間もなく低空のまま急旋回して再びランウエイ上空に戻り、運動性の良さを見せた。

「P-1」は、過去15年間のショーで展示された航空機の中で最も野心的な機体の一つである。世界中でこの期間に開発された洋上哨戒機あるいは対潜攻撃機(submarine hunter)は、川崎「P-1」とボーイング「P-8」ポセイドンの2機種だけ。ショー期間中の地上展示では、両機は隣同士に並べられ比較し易いようになっていた。

今回の「P-1」の英国Air Tattoo 2015への参加は、日本製軍用機にとり初めての国際舞台への登場であり、これはAir Tattooの歴史上でも画期的なことである。

「P-1」は、性能、構造、エンジン、電子装備、電気系統いずれを取っても日本の航空機産業の先進性を示している。海上自衛隊では、1981年以来30年以上使ってきた対潜哨戒機ロッキード「P-3C」の後継機として開発を進めてきた。原型機「XP-1」は2007年9月に初飛行、これを基にした「P-1」が正式採用されたのは2013年3月になる。海上自衛隊では70機を調達する予定だ。

日本は四面海に囲まれ多数の島々を領有しており、これらを外敵から守るため、長大な距離を飛べる哨戒機の保有が必要不可欠である。

「P-1」は、最大後続距離は8,000 km (4,300 海里)、機首レドームとその下には東芝製の最新型AESAレーダー「HPS-106」を4面装備する。兵装は翼下面のハードポイントと胴体下部の爆弾倉に収納され、対艦ミサイルAGM-84ハープーン(Harpoon)および「91式空対艦誘導弾(ASM-1C)」、空対地ミサイルAGM-65マベリック(Maverick)、対潜魚雷、対潜爆雷、などを携行できる。

エンジンはIHI製F7-10推力約13,000 lbsターボファン4基を装備する。操縦系統には世界初のフライ・バイ・ライト方式を採用している。乗員は操縦要員3名、ミッション要員8名の計11名である。

今年2月には第51航空隊所属の「P-1」2機が、米國ハワイ、カネオヘ基地に展開、ハープーン対艦ミサイルの発射試験を実施、成功を収め、対潜能力だけでなく高い対艦攻撃能力のあることを証明した。

英国空軍は40年間使ってきた対潜哨戒機BAeニムロッドを2011年に退役させ、今年末までに後継機を決める予定である。「P-1」は米国が押す「P-8」ポセイドンと共にその有力候補となっている。

「P-8」は、性能、価格ともに「P-1」と大差ないが、米海軍の配備は2012年2月に始まり、現在は20機+が稼働中、合計122機を取得する計画と言われる。輸出では、インドが8機発注し6機が引渡し済み、またオーストラリアは12機を発注、引渡しは2017年からの予定とされている。

 

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本稿作成の参考にした記事は次の通り。

The Royal International Air Tattoo 17-19 July 2015 News “JAPANESE P1 FLYS AT RAF FAIRFORD” 16 July 2015

The Royal International Air Tattoo 17-19 July 2015 News “JAPAN MAKES AIR TATTOO HISTORY” 07 July 2015