2015-07-29 松尾芳郎
世界最大の規模を誇る飛行機の祭典、全米試作機協会主催の航空ショー(EAA AirVenture Oshkosh)が、今年も7月20-26日の間ウイスコンシン州オシュコシュで開かれた。
図1:(John Morris/Aviation Week)毎年1週間、EAA AirVenchureの期間中、オシュコシュ・ウイットマン(Oshkosh Wittman )飛行場は世界で最も忙しい空港となる。
今年は、参加者が55万人となり、これまでの記録を更新した。またこの一週間ウイットマン飛行場に飛行機が出入りした回数は16,300回に達した。毎日午後の時間帯に多彩なデモ飛行がおこなわれ、その数は75種に達し参集した観客を魅了した。
米国にとり今年は対独・対日戦勝利の70周年に当たることもあり、これまでで最大の軍用機の展示が行われた。“9年振りのF-22の訪問”、“初のF-35Aの参加”、“戦略爆撃機B-52の初の地上展示”などに参加者の注目が集まった。民間機ではエアバスが2009年に巨人機A380のデモ飛行を行って以来2度目となる最新型旅客機“A350XWBの展示飛行”を行った。
以下に今年のショーのトピックスを紹介する。
図1A:(Mo Spuhler/Aviation Week)EAA AiVenture 2015に参加するため、オシュコシュ・ウイットマン空港に飛来した飛行機は10,000機をはるかに超えた。
9年振りにオシュコシュを訪問したF-22ステルス戦闘機
図2:(Jeremy Dwyer-Lindgren/Flight Global)観客の前で急上昇するF-22ラプター。
図3:(John Morris/Aviation Week)最大のニュースは、2006年にこの航空ショーでデモ飛行をしてから9年ぶりに姿を見せた米空軍戦闘機F-22ラプター(Raptor)。F-22は世界初の第5世代戦闘機で、全米各地で184機が配備に付いている。翼幅13.6 m、全長18.9 m、最大離陸重量38トンの大型機。エンジンはP&W製F-119-PW-100アフトバーナ時推力35,000 lbs、ドライ時推力26,000lbsを2基装備する。マッハ1.5で超音速巡航ができる。秘密保持のため一般公開は長らく行われていなかった。
図4:(John Morris/Aviation Week) F-22はデモ飛行で高い運動性を披露したが、その秘密はエンジン排気口に2次元型推力偏向ノズル(thrust vectoring exhaust nozzle) を装備していることによる。
F-35AライトニングIIステルス戦闘機の初展示
図5:(Jeremy Dwyer-Lindgren/Flight Global)轟音を轟かせて大観衆の頭上を飛ぶロッキード製F-35 ライトニングII。
図6:(John Morris/Aviation Week)米空軍最新のステルス戦闘機F-35AライトニングIIが初めて民間の航空ショーに姿を見せた。飛来したのはエグリン空軍基地(Eglin AFB, Florida)の第33戦闘航空団所属の2機である。一見小さく見えるが翼幅10.7 m、全長15.7 m、最大離陸重量は31.8トンになる。機体構造は重量で35%が複合材で作られている。エンジンはF-22用のF119を基に開発したP&W製F135、推力はドライ/28,000 lbs、アフトバーナ/43,000 lbsを1基装備する。兵装は胴体内爆弾倉と翼下面ハードポイントに合計8.1トンを携行できる。
空軍用F-35A、海兵隊用F-35B(STOVL=短距離離陸垂直着陸)、海軍用F-35Cの3機種があり、米軍では2037年までに合計2,457機を導入する計画。米国以外では共同開発に参加した英国、イタリア、オーストラリア、カナダ、ノルウエイ、デンマーク、オランダ、トルコ、それにイスラエルが購入する予定。
我が航空自衛隊は42機の導入を決め、最初の4機は完成機で輸入する、すでにLRIP-8(少量初期生産ロット8)として昨年末から生産が始まっている。残りの38機は三菱重工でライセンス生産される。同じくF135エンジンはIHIでライセンス生産される。
F-35Aの単価は、現在(LRIP-8)9,800万ドル、量産に入る2018年には8,500万ドルになると見込まれている。いずれもエンジンを除く価格。
図7:(John Morris/Aviation Week)F-35AのP&W製F135エンジン排気ノズル
エアバスA350がオシュコシュ訪問
図8:(EAA Airventure)北米主要空港を販売活動のため巡回した次世代型325人乗りのエアバス製大型旅客機A350XWBは、初めてオシュコシュに飛来しデモ飛行を行った。エンジンはロールスロイス製トレントXWB。ランウエイ36に着陸後ボーイング・プラザに駐機し3日間展示された。この機体は胴体の後半を黒白の網目模様に塗装してある。これは主翼や胴体をアルミではなく炭素繊維複合材で作っていることを強調するため、素材の模様を描いたもの。
この2号機(MNS002)は今年5月エビエーションウイーク誌がパイロット報告で試乗した機体と同じ。(詳しくは「エアバス最新技術の結晶、A350のパイロット報告」2015-06-08を参照)
今回の飛行は、エアバスのフランク・チャップマン(Frank Chapman)機長が行った。同氏はこれまで何度もパリ航空ショーでデモ飛行を行ったが、ショーの行われるルブージェ(Le Bourget)空港はシャルルドゴール(Charles de Gaulle)空港に近く非常に緊張を強いられた、と話している。しかしここウイットマン(Wittman)は近くに大きな空港はなく、その点デモ飛行は比較的楽、と云う。同氏は2009年にはA380を操縦してオシュコシュ航空ショーでデモ飛行をしているので、今回は2回目。
デモ飛行は主翼前縁の高揚力装置(DNDとスラット)、後縁のフラップを出した状態、Configuration 3、にセットして行う。これでA350のフライ・バイ・ワイヤ操縦システムは最もキビキビ反応する。
(以下その2に続く)