中国艦隊、日本海での島嶼上陸演習を終了し大半は宗谷海峡を東進


2015-09-01 松尾芳郎

 

先週、中国海軍とロシア海軍は、日本海の沿海州水域で島嶼上陸訓練を行っていたが、8月28日に演習を終了した模様で、一部の中国艦艇は対馬海峡を南下東シナ海に入ったが、その他は宗谷海峡を東に航行しオホーツク海に入ったことが判った。

以下は防衛省統合幕僚監部が相次いで発表した中国艦艇とロシア艦艇の動向である。

1)    8月30日発表; 8月29日(土)午後4時頃、八戸基地第2航空群所属のP-3C哨戒機と大湊基地第1ミサイル艇隊所属の「くまたか」が、宗谷岬北西90 kmの海域を東進する中国海軍艦隊を発見した。艦隊はルージャオ級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイII級フリゲート2隻、ユージャオ級揚陸艦1隻、フチ級補給艦1隻の合計5隻の編成。なおこれらは8月17日(月)に対馬海峡を北上日本海に入った艦艇と同一である。

2)    8月30日発表; 8月29日(土)午後9時半頃、鹿屋基地第1航空群所属のP-3C哨戒機と佐世保基地第3ミサイル艇隊所属の「しらたか」が、上対馬北東65 kmの海域を南西に向かう中国艦艇を発見した。同艦隊はソブレメンヌイII級ミサイル駆逐艦1隻とユーチンII級揚陸艦で、対馬海峡を南下して東シナ海に入った。なお、両艦は8月17日(月)に対馬海峡を北上し日本海に入ったものと同一である。

3)    8月31日発表; 8月30日(日)午後6時半頃、八戸基地第2航空群所属のP-3C哨戒機と大湊基地第1ミサイル艇隊所属の「くまたか」が、宗谷岬の西150 kmの海域を北東に進むロシア海軍ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦1隻を発見、その後同艦はオホーツク海に入った。

 

以下に統幕監部が発表した、8月29-30日に日本近海で行動した中国海軍、ロシア海軍の艦艇の写真を掲載する。写真の説明は「中国海軍とロシア海軍、日本海で島嶼上陸の合同演習開始」2015-08-22 と重複するが同じものを記載する。

830ルージョウ級駆逐艦115

図1:(統合幕僚監部)ルージョウ「旅州(Luzhou)」級ミサイル駆逐艦、艦番号115、「瀋陽(Shenyang)」。2006年秋の就役。「旅洋I,II」型の後継防空艦で、ロシア製SAM 射程150kmのSA-N-20を8連装回転式VLSから発射する(8基装備する)。同型艦「116 石家荘」とともに北海艦隊に所属する。

0830ジャンカイII級フリゲート547

図2:(統合幕僚監部)ジャンカイII「江凱II」級フリゲート、艦番号547「臨析」(Linyi)は2012年末に就役した新鋭艦。もう1隻の同型艦、艦番号568「衡陽」2008年就役も同行している。満載排水量約4,000㌧。現在同型艦は20隻が就役中で北海、東海、南海、の各艦隊に配備されている。対空ミサイル短SAM HHQ-16 は米海軍と似た32セルのVLS(前部甲板)に納められている。この他にYJ-83対艦ミサイル4連装発射機2基を備える。後部にはKa-2ヘリ1機を搭載する。

0830ジャンカイII級フリゲート568

図3:(統合幕僚監部)図2説明を参照。

830ユージャオ揚陸艦989

図4:(統合幕僚監部)ユージャオ「玉昭(Yuzhao)」級ドック型揚陸艦の3番艦、艦番号989「長白山」で2012年秋に就役した新鋭艦。満載排水量は18,500トンと云われ、全長210m、ウエルドック内に大型エアクッション揚陸艇4隻を収納、上甲板格納庫にはヘリコプター4機、兵員500-800名と装甲車両15-20両を搭載できる。速力20ノット、航続距離は6,000海里とされる。同型艦3隻は南海艦隊に配備済み、さらに1隻が建造中で東海艦隊が使う予定。

0830フチ級補給艦889

図5:(統合幕僚監部)フチ「福池(Fuchi)」級補給艦の3番艦で艦番号889「太湖(Taihu)」で2012年就役。中国海軍最新最大の補給艦で4隻就役中の1隻。満載排水量23,000トンで、燃料10,500トン、真水250トン、弾薬等の貨物680トンを搭載し、優れた外洋行動能力を持つ。前部のポストは給油用、後部はドライカーゴ用ポストである。艦後部には中型ヘリコプター1機を搭載する。ソマリア沖海賊対策に参加している。

830ユーチンII級揚陸艦997 (1)

図6:(統合幕僚監部)ユーチン「玉亭(Yuting)」II級戦車揚陸艦、艦番号997「雲霧山」は、「玉亭I」級の改良型で、9番艦として2005年に就役、南海艦隊に所属している。満載排水量約5,000トン、速力17ノット、輸送能力は戦車10両と揚陸部隊250名。艦首には観音開きドアとランプ、艦尾にもランプを備え、戦車、兵員を迅速に揚陸できる。

830ソブレメンヌイII級駆逐艦138

図7:(統合幕僚監部)ソブレメンヌイ(Sovremenny)II級ミサイル駆逐艦、艦番号138、「泰州(Taizhou)」。2005年末就役、ロシア製ソブレメンヌイII級のなかの1隻で、後部の130mm砲を取り外し飛行甲板を拡張している。満載排水量8,000トン、速力32ノット。兵装で注目されるのは、両舷に装備する超音速対艦ミサイルSS-N-22 SSM の4連装発射筒。

831ソブレメンヌイ級駆逐艦715

図8:(統合幕僚監部)ロシア海軍ソブレメンヌイ級(Sovremennyy-class)ミサイル駆逐艦は満載排水量8,000トン、最大速力33ノット。主な兵装は、対艦ミサイルMoskit SSM P-2704連装発射筒2基、対空ミサイルShtil SAM 24連装2基、など。Ka-27ヘリ1機を搭載する。1980年から就役、21隻が作られたが現在現役は5隻。中国海軍が4-5隻を運用中。

 

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