安保法案報道に見る“新聞の自殺”・報道は公正で正確か?


2015(平成27年)-09-07   政治アナリスト 豊島典雄

 

新聞は嘘を書く

 

「新聞は嘘を書く。なぜ、安保法案反対派の声や集会だけを取り上げるのか。どうして賛成派の声や集会を取り上げないのか。公正ではない」。大学生にマスメディアについての意見を聞いたレポートの中の一節である。他にも同じ意見があった。

ある放送局の控え室でも音楽関係の女性から「私は沖縄出身です。沖縄の二紙は偏っています。普天間基地の移設でも、安保法案でも反対派の声だけを取り上げます。本土の新聞も同じです。おかしい」と話しかけられた。

8月3日に、朝日新聞の特別編集委員が、朝日の公認を受けたツィッターでナチスの紋章「かぎ十字」が描かれた旗を持つ人々の写真を紹介し、「東京で行われた国家主義的デモ。彼らが安倍首相を支持している」と英・仏語で書き込んでいたことがわかった。ネット上で安倍首相に対する悪意ある書き込みだとの批判が集まり、結局は削除された。

昨年の特定秘密保護法案、この安保法案に関する朝日新聞等の各紙の報道は著しく公正を欠き、「このツィッターに現れているように安保法案潰し、安倍内閣潰しに狂奔し、政党の機関紙のようだ」との批判が上がっている。

 

悪化する我国の安全保障環境

 

集団的自衛権の限定行使を含むこの法案が必要な背景には、国際情勢の悪化がある。7月9日に米国下院の公聴会で統合参謀本部議長予定者(ダンフォード米海兵隊司令官)が「米国にとりロシアが最大の脅威だ」との認識を表明し、2番目に中国、3番目に北朝鮮を挙げた。この三カ国すべてと接するのは我国である。

この10年間で中国の国防費は167%増であり、この軍事力をバックにして南シナ海と東シナ海で他国の領土と資源に手を出している。ロシアはウクライナからクリミアを強奪している。北朝鮮は大量破壊兵器開発に狂奔している。

最近も北の敷設した地雷で韓国軍の兵士が負傷し、北の砲撃に韓国も反撃し朝鮮半島の緊張が高まった。半島は相変わらず危険な火薬庫なのである。日本周辺、波高しである。

弱肉強食のジャングルの掟が支配している国際社会である。しかも、同盟国米国のオバマ政権はレイムダックである。わが国の抑止力の向上が緊要である。

我国自身も戸締りを一段と強化しなければならない。しかるに、一部新聞は、一部野党のように、伝説のダチョウのように迫りくる危険に目を背ける“オストリッチ・ポリシー(現実逃避策)”である。反対のための反対であり、責任ある対案を提示していない。新聞が政党の機関紙化したら読者の信頼を喪失するのではないか。

 

倫理綱領は守られているか

 

マスメディアは第一権力といわれる影響力を持つ。当然のことながら、報道関係者には高い倫理が求められる。

フランス革命(1789年)直後に、エドマンド・バークは英国下院の新聞記者席を見上げて、「あそこに第四身分が座っている。彼らは議員全体より重要だ」と述べ、新聞の影響力を見事に喝破している。

日本新聞協会の新聞倫理綱領には「新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追究である。報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない」とある。

朝日新聞綱領にも「不偏不党の地に立って言論の自由を貫き…………」「真実を公正敏速に報道し………」とある。朝日新聞記者行動基準には「記者は自らの職務に誇りを持ち、特定の個人や勢力のために取材・報道をしてはならず、独立性や中立性に疑問をもたれるような行動をとらない。事実に基づく公正で正確な報道に努める……」とある。

公正をかなぐり捨てている現実の紙面と、これらの建前との隔離は大きすぎる。読者の不信は高まる。一般紙の発行部数は4312 (2012年)から4312万部(2013年)と減っている。毎年、地方紙が二紙つぶれていることになる。昨年(2014)は4168万部と急減している。朝日新聞は慰安婦報道などで読者の信頼を大きく失ったが、この安保法案報道でさらに信頼を失わないか。新聞の自殺にならないか。猛省が必要なようだ。

-以上-