中国機多数が沖縄本島および宮古島付近で活動


2015-11-29 (平成27年) 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部の発表(27-11-27)によれば、同日、爆撃機編隊を含む中国軍機11機が沖縄本島—宮古島周辺の空域で活発な活動を繰り返した。一部は東シナ海上空を周回し立ち去ったが、多くは沖縄本島—宮古島間を往復飛行した。航空自衛隊では那覇基地から戦闘機を緊急発進させ、領空侵犯の警戒に当たった。

これだけ多くの中国軍機が沖縄列島周辺に飛来するのは極めて異例なこと。

中国側の発表は、「H-6K戦略爆撃機部隊と情報収集機で西太平洋への進出訓練を行った、西太平洋に進出する空軍の訓練は今年4回目で、空軍の遠距離作戦能力を向上させた」、と自賛している。

我が国軍事専門家筋では、「H-6K爆撃機は最新のDH-10長距離空対地巡航ミサイルを運用できるので、フィリピン沖からグアム島の米軍基地を攻撃することを想定した演習を行ったらしい」と推定している。

 

空自が探知した当該中国機の行動は次の通りである。

H-6型爆撃機    :4機ずつの2グループ、合計8機

Tu-154型情報収集機:1機

Y-8型情報収集機  :1機

Y-8型早期警戒機  :1機

 

H-6爆撃機:中国では「轟炸6」と呼ばれ、ロシア・ツポレフ設計局製のTu-16爆撃機バジャー(Badger)を中国でライセンス生産した機体。1957年に旧満州ハルビン航空機工場組立てのTu-16初号機が初飛行、その後ほぼ完全に国産化したH-6A型が1968年末に初飛行に成功した。以来C型、D型など改良が進められ、2007年以降は最新のH-6K型が作られている。

H-6K型は、構造に複合材を多用し、エンジンは従来のWP-8(渦噴8)からロシア製D-30KP-2に換装され、推力、燃費ともに2-3割改善されている。兵装は翼下に射程1,500 km以上の巡航ミサイルCJ-10Kを6基搭載、さらに機雷搭載能力もある。アビオニクスも一新され近代的な爆撃機に生まれ変わっている。戦闘行動半径は3,500 km以上とされる。中国海空軍は旧型機を含め120機運用している模様。

11-27中国機

図1:(統合幕僚監部)H-6爆撃機4機の①グループは沖縄本島に接近後北上、同じく他の4機グループ②は④のY-8情報収集機1機とともに沖縄−宮古島間を通過往復した。またY-8早期警戒機1機⑤は尖閣諸島北東空域で旋回飛行を繰り返した後にシナ大陸方面に立ち去った。

11-27H-6

図2:(統合幕僚監部)H−6爆撃機①グループのうちの1機。この4機は尖閣諸島北東に接近、反転して北上した。

11-27 H-6その2

図3:(統合幕僚監部)H-6爆撃機②グループの1機。この4機は沖縄本島—宮古島間を通過、西太平洋上で演習を行った。

Tu-154情報収集機

図4:(統合幕僚監部)ツポレフTu-154旅客機を中国が輸入、電子偵察機に改造したのが「Tu-154情報収集機」。エンジンはロシア製D-30KUターボファン推力23,000 lbsを3基、航続距離6,600 km.

Y-8情報収集機1

図5:(統合幕僚監部)④ Y-8型情報収集機。ロシア・アントノフ設計局製のAn-12輸送機のコピー機、中国製4発の中型輸送機Y-8(西安運輸八型)を元にした「Y-8G」と思われる。胴体側面の大型フェアリング、機首下面と垂直尾翼前面のアンテナ・フェアリングが外見上の特徴。

Y-8情報収集機2

図6:(統合幕僚監部)⑤ Y-8型早期警戒機。「KJ-200」(空警-200)と呼ばれる早期警戒機(Airborne Early Warning & Control)である。Y-8F-600を基本にした機体。最大の特徴は胴体上部の支柱で取り付けたAESAレーダー(スエーデン・Saab 製Erieyeと推定)である。エンジンは P&W Canada PW150Bターボプロップ2基、アビオニクスはハニウエル(Honeywell)製である。2009年の軍事演習で初公開された最新鋭機だ。

 

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