中国艦隊、相次いで東シナ海から太平洋に進出


2015-12-15 (平成27年) 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部の発表によれば、12月7日(月)および同13日(日)に、中国艦隊が相次いで東シナ海から東に向かい西太平洋に進出した。満載排水量23,000トンの最新鋭大型補給艦を伴っているところから、西太平洋あるいは南シナ海で演習あるいは示威行動を行う可能性が大きい。

12月7日:

午後2時半ごろ海上自衛隊鹿屋基地の第1航空群所属のP-3C哨戒機が、屋久島の北西420 kmの海域を東シナ海から太平洋に向け南東に航行する中国海軍艦艇3隻を発見した。艦艇は、ルフ級駆逐艦、ジャンカイII級フリゲート艦、およびフチ級大型補給艦、各1隻ずつであった。その後艦隊は鹿児島県の大隈半島南端の佐田岬と種子島の間にある大隈海峡を通過して東の太平洋に航行したのを確認した。

12月13日:

午前5時ごろ海上自衛隊那覇基地の第5航空群所属のP-3C哨戒機が、宮古島間の北東130 kmの海域を東シナ海から太平洋に向け南東に航行する中国海軍ジャンカイI級フリゲート艦2隻を発見した。その後追跡監視を続けたところ2隻は南下してやや西に変針、午後11時ごろには与那国島の南220 kmの海域を南西に向かったのを確認した。

ryukyu-archipelago

図1:中国艦隊の航跡。12月7日午後には3隻の艦隊が九州南端と種子島間の大隈海峡を通過、太平洋に向かった。12月13日には2隻が宮古島を迂回するような航路を取り太平洋を南に向かった。

12-7ルフ駆逐艦113

図2:(統合幕僚監部)ルフ(Luhu)級052A型駆逐艦は、中国が西側技術、装備を大幅に取り入れ建造した初の大型艦。艦番号113は「青島(Qingdao)」1996年就役である。前甲板には100mm連装砲、個艦防空用にクロタルHQ-7短SAM 8連装を艦首に1基、艦中央には対艦ミサイルYJ-83 4連装発射筒を4基、さらに艦尾には30mm CIWSを装備する。満載排水量4,700トン、速力31ノット。同型艦は2隻ある。クロタルHQ-7短SAMは、本来フランス・タレス社製の短距離防空ミサイルだが、中国がコピーしたものと見られる。

12-7ジャンカイII576

図3:(統合幕僚監部)ジャンカイII「江凱II」級フリゲート、艦番号576「欽州」(Qinzhou)と思われるが、2013年末に就役した新鋭艦。満載排水量約4,000㌧。同型艦は20隻が就役中で北海、東海、南海、の各艦隊に配備されている。対空ミサイル短SAM HHQ-16 は米海軍と似た32セルのVLS(前部甲板)に納められている。この他にYJ-83対艦ミサイル4連装発射機2基を備える。後部にはKa-2ヘリ1機を搭載する。

12-7フチ補給艦889

図4:(統合幕僚監部)フチ「福池(Fuchi)」級補給艦の3番艦で艦番号889「太湖(Taihu)」で2012年就役。中国海軍最新・最大の補給艦で4隻就役中の1隻。満載排水量23,000トンで、燃料10,500トン、真水250トン、弾薬等の貨物680トンを搭載し、優れた外洋行動能力を持つ。前部のポストは給油用、後部はドライカーゴ用ポストである。艦後部には中型ヘリコプター1機を搭載する。

12-13ジャンカイI級525

図5:(統合幕僚監部)江凱I(Jiangkai I)054型フリゲート、艦番号525「馬鞍山(Maanshan)」は2005年に就役。同型艦は図6の526「温州(Wenzhou)」がある。満載排水量4,000トン、速力27ノット、兵装はクロタルHQ-7短SAM 8連装1基、30mm CIWS 4基、対艦ミサイルYJ-83 4連装発射筒2基、等を備える。煙突前方マストの先端には364型シーガル対水上レーダーのアンテナ。364型シーガル対水上レーダーは、イタリア製RAN-10Sを国産化したものをベースにして、中国船舶重工集団が作った2次元レーダーで、30mm CIWS用の目標指示に使われている。

12-13ジャンカイI526

図6:(統合幕僚監部)艦番号526「温州」。

 

−以上−