エアバスA320neoの就航はルフトハンザで開始


2015-12-11(平成27年) 松尾芳郎

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図1:(Airbus)エアバスA320neo (new engine option)系列機は、前身のA320ceo (current engine option)に比べ燃料消費率が20%改善されている。2015年11月現在で世界中から4,400機以上の確定注文を獲得。PW1100G-JMエンジン付きA320neoは2015年11月に欧米の航空当局から型式証明を受領済み。今後はPW1100G-JM付きA321neoとA319neoの証明を取得し、それからLEAP-1Aエンジン付きA320neoの取得作業に入る。

 

エアバスはこのほどA320neo初号機の引渡し先を、予定していたカタール(Qatar)航空からルフトハンザ(Lufthansa)に変更した。

業界筋の話では、搭載のP&W製PW1100G-JMエンジンに運用上の制限が課せられているため、と云う。制限を解消するためにP&Wは駆動シャフトのベアリングと関係ソフトの交換を進めている。この改修が終わるまで、エンジンは始動後3分間アイドル運転を続けなくてはならない。つまりタキシー開始まで3分待つ必要がある。

ローンチ・カストマーのカタール航空は、改修が完了するまで受け取りを保留することにした。改修完了までには数週間かかると見られる。

一方ルフトハンザは、運用制限に関わる補償がなされることを条件に、このままの状態でA320neo初号機を受領する、としている。両者の合意が成立すれば、A320neo初号機は12月22日にハンブルグ(Hamburg-Finkenwerder)工場からルフトハンザに引き渡される。エアバスは初号機の引渡しを年内に行うと公表していたが、これで約束は実現する。

ルフトハンザは、A320neo初号機を1月6日から当面整備基地の整ったフランクフルト−ハンブルグ路線就航させる予定で、2016年中に合計5機を受領する。

ルフトハンザに続いてカタール航空が2番目のユーザーとなり、それにインデイゴ(Indigo)が続く。

ルフトハンザはA320neo系列機101機を発注済みで、カタール航空はA320neoとA321neoを合計50機注文している、またインデイゴは最大の顧客で2回に分けて合計430機を注文中である。いずれもPW1100G付き系列機である。

PW1100G-JM写真

図2:(Pratt & Whitney)PW1100G-JMエンジン。「-JM」とは開発に協力する日本企業とドイツのMTU社の頭文字を表したもの。推力24,000-35,000 lbsで、ファン直径は81 inch、ファン・バイパス比は約12。全体構成はファン1段、低圧コンプレッサー3段、高圧コンプレッサー8段、タービンは高圧2段、低圧3段。低圧タービンは高速回転し3:1の減速ギアを介してファンを駆動するのが特徴。2014年12月にFAA型式証明を取得済み。

日本3社(JAECを構成するIHI, MHI, KHI)は全体の25%、ファン、低圧コンプレッサー、低圧シャフト、燃焼器の一部を担当。ドイツMTU社は18%のシェアで、低圧タービンと高圧コンプレッサーの一部を担当している。

 

PW1100GエンジンのメーカーP&W社は「エンジンは昨年末に型式証明を取得済みで、初号機の今年中の引渡しの準備は整っている。新しいGTFエンジンは燃費、騒音、排気ガス、いずれも設計目標を満足しており、いつでも就航できる。」と述べている。証明取得のために3機のPW1100Gエンジン付きA320neoを使い、1,070時間以上の試験飛行と350回の飛行をしてきた。

PW1100Gエンジン付きA320neoは、11月末にEASA(ヨーロッパ航空安全局)とFAA(米国連邦航空局)から型式証明を受領している。2014年9月の試験飛行開始以来、途中で何回かのエンジン問題に遭遇したがその都度解決して今日に至っている。

1)2015年4月:A320neo初号機MSN6101でバード・ストライクを起こしたエンジンを検査したところ、高圧コンプレッサーの内側シール部に深い摩滅が見つかり、エンジン交換となった。このため初号機は4ヶ月間飛行停止を余儀なくされ、飛行再開は9月になった。

2)2015年5月:今年3月から飛行試験に加わった2号機MSN6286は、初号機と同じシール問題を改善するため5月から7月下旬まで飛行停止となった。その後は順調に飛行試験と訓練飛行に従事できた。

3)3号機は、主に飛行試験項目の消化とエアライン路線の模擬飛行に使われ、フランスからスペイン、フィンランドを結ぶルートを12月まで飛行したが、この間にエンジンに関わる問題は生じなかった。

4)2015年10月:UAE(アラブ首長国連邦)のAl Ain空港でA320neoの1機を使い高温条件の下での運用試験を無事に終えた。試験完了後エンジンのボア・スコープ検査をしたところ、片方のエンジンで、高圧コンプレッサー・ブレードの先端とケース内側のシールにわずかの擦れが発見された。このため、エジプトのSharm el-Sheikhまで飛び、そこでエンジン交換を行い、11日後に試験飛行に復帰した。同機は現在南米ボリビアのEl Alto空港で高地における離着陸性能試験を行っている。

こういうことでA320neoのエアラインへの初号器引渡しは、予定通り2015年第4四半期に実現しそうだ。

−以上−

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

Aviation Week Dec 9, 2015 “Pratt Engine Issues Prompt Airbus A320neo Launch Operator Change” by Jens Flottau and Guy Norris

A320neo Airbus Home page

Pratt & Whitney PW1100G-JM home page