2016-02-09(平成28年) 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表によれば、既報の「1月27日(水)に東シナ海から対馬海峡を北上し日本海に入った4隻の中国艦隊」は、その後2月2日(火)午後に、青森県竜飛岬沖から津軽海峡を通過、太平洋に向かった。これは第4航空群厚木基地所属のP−3C哨戒機と余市基地の第1ミサイル艇隊所属の「わかたか」が発見、追尾し確認した。
その後同艦隊は本州東岸沿いに南下、新聞で報道されたように、同月4日から8日にかけてそのうちの一隻「ドンデイアオ級情報収集艦」が、千葉県房総半島沖の我国接続水域の外側で北東と南西に向け往復航行を繰り返してから三宅島と八丈島の間を通り南西方面に立ち去った。
この異常な動きは、2月7日の北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えて迎撃体制に入った我国の「弾道ミサイル防衛システム」に対する偵察行動ではないかと推察される。
以下にP-3C哨戒機が2月2日津軽海峡で撮影した中国艦の写真を再録する。
図1:(統合幕僚監部) ルフ級駆逐艦は、西側技術を大幅に取入れ建造した初の大型水上艦。写真は艦番号112「ハルビン」。満載排水量4,700㌧、フランス製短SAM HQ−78連装発射機1基、YJ-83対艦ミサイル4連装発射機4基、などを備える。後部アンテナマスト前後に対艦ミサイル発射機4基が写っている。
図2:(統合幕僚監部) ジャンカイII「江凱II」級フリゲート、艦番号538「煙台」(Yantai)は2011年に就役。満載排水量約4,000㌧。現在同型艦は20隻。前甲板上の矩形状は対空ミサイル発射機32セルのVLS。艦中央には対艦ミサイル発射機2基が見える。
図3:(統合幕僚監部) ドンデイアオ(Dongdiao=東調)級情報収集艦、艦番号854。「東調」級は満載排水量6,000 ㌧、艦尾にヘリ甲板、大小3個のパラボラ・アンテナを備え、敵の通信傍受や電子偵察、それに戦術弾道ミサイルや長距離対艦ミサイルの試験発射時の測定を行うのが任務。2月4日〜8日に房総半島沖を遊弋、ここでも我国の弾道ミサイル防衛体制を偵察した模様。
図4:(統合幕僚監部) フーチン「福清(Fuqing)」型補給艦、艦番号881「洪澤湖」。中国海軍初の大型補給艦で1979-85年に4隻建造され、2隻が現役。満載排水量22,000㌧、燃料11,000㌧、真水200㌧などを搭載できる。今回はドンデイアオ(Dongdiao=東調)級情報収集艦を中心とする艦隊の日本本土全周の長期航海の補給任務を担当した。
図5:(統合幕僚監部)2月2日午後、津軽海峡を太平洋に向け航行する中国艦隊。左先頭から「ハルビン」、「煙台」、「ドンデイアオ」級情報収集艦。
図6:(統合幕僚監部)2月4日—8日にかけて房総半島沖を遊弋、我国の「弾道ミサイル防衛体制」(BMD)の状況を偵察した中国海軍「ドンデイアオ」級情報収集艦は、三宅島—八丈島間を抜け、南西方面に立ち去った。公海上の行動とは云え、我国の安全保障上、見過ごせない事態と言うべきである。
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