2016-03-07 (平成28年) 元・国務大臣秘書官 鳥居徹夫
■□わかりくい民主と維新の合流、存続政党は民主党
民主党の岡田克也代表と維新の党の松野頼久代表は、さる2月26日に、両党の合流で正式合意した。
維新が解党して民主党が吸収合併する方式で、新党は衆参両院で150人規模となる。
3月27日の結党大会に向け、これから党名や綱領、ロゴマーク、基本政策などの検討に入りを行う。
民主と維新の合流は、本当にわかりにくい。今回の合流は、民主党は議員の大半がいったん離党して再入党する形で合流する。
この存続合併の方式は、平成10(1998)年に発足した「新民主党方式」を踏襲することなる。このときは平成8(1996)年に誕生した旧民主党が存続政党となり、民政党、新党友愛などが解散して合流。政党要件に必要な5人が民主党に残り、残りの議員が無所属となった後に再入党して「新民主党」を結成し、「対等合併による新党」を演出した。
なお国会法の規定で合流できない維新の参院議員5人は当面、無所属として新会派に参加する見込みと言われる。
■□政党名をインターネットで募集することへの違和感も
新たな党名の案について、新党協議会「党名検討チーム」は、3月4〜6日に、インターネットなどで党名を募集した。
党名を公募で選ぶことについて、民主党の両院議員懇談会では「自分の名前に、町内会でアンケートをとるのか」と違和感を示す発言もあったという。政党名というのは、ポリシーとか信念とか理念を表すもので、本来なら政党内で自ら議論して党名や理念、政策を国民に提示し、支持を訴えていくのが本筋である。
インターネット上では、多種多彩な案が大喜利のように飛び交っていた。日本野合の党、もたれ合いの会、新党泥舟、自分たちの生活がいちばんの党、帰ってきた民主党、岡田と松野と愉快な仲間たち、再起不能党なども。
■□有力候補にはじかれる参議院比例の連合候補も
労働団体の連合は、夏の参議院議員選挙の比例代表に、組織内候補を12名擁立する。
連合の神津里季生会長は3月2日、民主党の岡田克也代表らとの会談で「国民の期待は、新党が目新しい名称でスタートすることではない」と迫り、「民主」存続を重ねて求めた。政党名を大幅変更した場合、夏の参院選で無効票が続出する可能性も高いからである。
しかも参議院比例には有力候補も多い。個人票で有力なのが、現職では有田芳生、白真勲、藤末健三、小野次郎らがおり、小沢グループの谷亮子も民主党に鞍替えするかも。
また民主党が出馬を働きかけている(タレントの)石田純一や(格闘家の)魔娑斗なども、比例となれば多くの個人票が見込まれる。
参議院の比例は、政党名でも個人名でもOKである。
2010年の参議院選挙の比例では、民主党は総得票1845万票(16人当選)のうち個人名21%で402万票。2013年は総得票713万票(7人当選)のうち個人名は32%で230万票であった。つまり政党名得票が7〜8割であった。
一方、連合組織内の比例の個人名得票は、毎回180万票前後である。有力候補の多い中、連合組織内は厳しい。
新たな政党名が定着しなければ、政党票のウエイトが下がり、比例議席は候補者の個人票数が影響する。
■□選挙のたびに違う政党から立候補し、非難していた勢力と合流する無節操
民主党と合流する維新の党の大半は、例えば松野頼久代表らは民主党離党組の「出戻り」である。
民主党を離党することになったのは、当時の野田政権がマニフェストに書かれていなかった消費増税を強行しようとしたことであった。
当時、松野頼久氏は「労働組合の支援を受ける政党に未来はない」と批判した。それが再び民主党に合流した。また連合は、このような議員や候補者を推薦するのであろうか。
解散総選挙のあった2012年当時、民主党議員の離党ドミノは止まらなかった。
衆議院解散の11月16日には、離党届を持ってきた初鹿明博議員に対し、幹事長室の入り口の前に田中美絵子議員(いずれも当時)が立ちはだかった。
「止めに来た。行かないで」、「民主党に残って、一緒に頑張ってください」「民主党に初鹿さんは必要です」と語ったが、初鹿氏は、説得を振り切って幹事長室に入り、離党届を提出した。
初鹿氏は、「みどりの風」を経て、「日本未来の党」から立候補した。「私の考えは全て民主党の方針と正反対になってしまった。自分の信念を曲げてまで
大きな組織に依存し続けることはできないと考え、信念を貫くために民主党を離れる決断をした」「民主党は自民党と変わらない新自由主義の政策を取るようになっている。第3極と言われる維新の会も基本的には民主、自民と同じ新自由主義。そして、外交面ではどこもタカ派」と記し、民主党だけでなく、維新をも批判した法定ビラを配っていた。
ところが初鹿氏は、2014年の年末の衆院選には、維新の党から出馬して当選し、今度は民主党と合流。女性議員を振り切って離党した議員が、モトのサヤに戻ったのである。
維新の党の松木謙公幹事長代行は、「日本をダメにしたこの民主党議員たち」(日本文芸社)を出版し、そこでは岡田克也幹事長(当時)を「理解不能、無機質な能面男」と名指しで批判を浴びせていた。
かつて「不倫は文化」と公言した石田純一が、新党から、比例からの出馬を働きかけられている。そういえば「民主党は嫌いだけど、民主主義は守りたい」と自虐的につぶやいているポスターもあった。 (敬称略)
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