2016-05-25(平成28年) 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表(28-05-24)によれば、同日の午前9時から午後1時にかけて中国艦艇6隻が相次いで沖縄列島与那国島の南約360 kmの海域を太平洋から南シナ海に向けて西進した。発見追尾したのは海上自衛隊第5護衛隊佐世保基地所属の護衛艦「あきずき」である。
通過した6隻の中国艦艇は;—
ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦 1隻 (海上自衛隊で初めて存在を確認)
ルーヤンII級ミサイル駆逐艦 1隻
ルーヤン I級ミサイル駆逐艦 1隻
ジャンカイII級フリゲート艦 2隻
フチ級補給艦 1隻
これら艦艇は西太平洋において各種訓練を実施していたことも確認済みである。
図1:(海上自衛隊)航行中の「115あきずき」基準排水量5,050 ton、満載排水量6,800 ton、速力30 kt、主機はRR スペイSM1C改良型(川崎重工ライセンス生産)ガスタービン16,000馬力4基。兵装はMk.45 62口径5 inch単装砲1基、20mm CIWS対空機関砲2基、Mk. 41 VLS対空ミサイル発射装置 32セル型1基、90式SSM対艦ミサイル4連装発射筒2基など。2012年竣工の新鋭艦で同型艦は4隻がある。
以下の写真はいずれも「あきずき」の艦上から直接、または搭載ヘリから撮影したもの。
図2:(統合幕僚監部)旅洋III(Luyang III)級ミサイル駆逐艦「合肥(Hefei) 174」(052D型)は、「図3旅洋II級(052C型)」の改良型で、2015年12月就役の新型艦。満載排水量7,000 ton、速力30 kt、主要兵装はH/PJ-38 130mm単装砲1基、30mm CIWS 1基、HHQ−9対空ミサイル(SAM)などを西側海軍と同じ32セル型VLS 2基に装備。艦橋4面にはアクテイブ・フェーズド・アレイ(AESA)レーダーが取付けられ、データリンクも西側のそれに相当する。中国版イージス艦。同型艦の3番艦で、10隻を建造する予定。計画が完了すればイージス艦相当の艦が合計16隻に達する。
図3:(統合幕僚監部)旅洋II(Luyang II)級ミサイル駆逐艦「蘭州(Lanzhou) 170」(052C型)、2004年10月就役で、同型艦6隻の1番艦である。満載排水量7,000 ton、速力30 kt、ARSAレーダー装備の中国版イージス艦、HHQ-9艦隊防空ミサイル(SAM)を回転式6連装VLSセル8基に収めている。単装砲はH/PJ-87 100mm砲。
図4:(統合幕僚監部)旅洋I(Luyang I)級ミサイル駆逐艦「広州(Guangzhou) 168」(052B型)、2004年7月就役で、同型艦は本艦を含み2隻のみ。満載排水量6,600 ton。ロシアから輸入したソブレメンヌイ級と同じ防空システムを採用した防空艦。対空ミサイル9M317 SAM単装発射機2基を装備し,ミサイルは24発保有する。本艦を改良したのが[図3ルーヤンII級]および[図2ルーヤンIII級]となる。
図5:(統合幕僚監部)江凱II(Jiangkai II)級フリゲート「三亜(Sanya)574」(054A型)。満載排水量4,000 ton、速力27 kt、2013年12月就役で、同型艦は建造中2隻を含め24隻に達する。フランス、ロシアの技術を導入、中国海軍初の艦隊防空艦である。ロシアの9M38M2ミサイルを国産化したHQ-16対空ミサイルを国産VLS 32セル1基に搭載している。
図6:(統合幕僚監部)江凱II(Jiangkai II)級フリゲート「玉林(Yulin)569」(054A型)、2010年2月就役。他は図5と同じ。
図7:(統合幕僚監部)、度々紹介しているが、中国海軍最新の大型補給艦で7隻就役中の1隻、艦番号963「洪湖」(Honghu)は昨年末(2015年12月)就役したばかり。さらに1隻が進水しており本年中に就役予定。完成すれば大型補給艦8隻体制となり、中国海軍の遠洋行動能力が著しく増す。満載排水量23,000tonで、燃料10,500ton、真水250ton、弾薬等の貨物680tonを搭載し、優れた外洋行動能力を持つ。前部の補給ポストは給油用、後部はドライカーゴ用ポストである。
図8:(統合幕僚監部)左がミサイル駆逐艦「蘭州(170)」と右のミサイル駆逐艦「合肥(174)が中央の大型補給艦「洪湖(963)」から洋上補給を受けているところ。
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