2016-06-12(平成28年) 松尾芳郎
図12:(GE Honda Aero Engines) HF120エンジンのファンは、幅広型後退角付きチタン合金製で、ブレード・デイスク一体構造。GEの技術で製作。
図13:(GE Honda Aero Engines) 外観は、直径54cm (21.2 inch)、長さ112cm (44 inch)、重さ180kg (400 lbs)、の超小型である。
GE Honda Aero Engines社は、1,000lbsから3,500 lbs推力のビジネス機用エンジンを製造する目的でGE とホンダ航空機の両者が折半出資し2004年に設立された。ホンダ自身では、ホンダジェットHA-420に取り付けるべく1986年からエンジン開発に取組みHF118を完成、地上及び飛行運転を行ってきた。
一方強力な大型エンジンと最新の軍用エンジンで世界をリードするGEは、小型のリージョナル機やビジネス機用エンジンの分野への進出を望んでいた。その結果、ホンダとGEはこの合弁で次世代型の小型、軽量、低コスト、高効率のビジネスジェット用エンジンを作ることになったのである。
GE Honda Aero Engine社が開発製造したGE Honda / HF120は、すでにFAA(2013-12-13)とEASA(2016-04-20)から型式証明を取得済みである。
最初はGEのリン(Lynn, Massachusetts)工場で作られたが、GE Honda Aero Engine社の工場がバーリントン(Burlington, North Carolina)に開設されたのに伴い、現在はここで製造されている。バーリントン工場は面積86,100 sq. ftでホンダ航空機の所在地グリーンスボロから50 kmほど東にある。
バーリントン工場は、2015-03-17にFAAからPART 21に基づく製造証明(production certificate)を交付されている。
HF-120は推力2,050 lbs (9,100 N)2軸式ターボファンで、高圧、低圧の両ローターが互いに反対方向に回転するユニークな構造である。
HF120は、ホンダの優れた空力設計とGEが提供する3D設計のチタン製ファン及びコンプレッサー素材を組合せて、同クラスエンジン対比で、燃費が最も良く、推力・重量比が優れ、耐久性が高いのが特徴である。
バイパス比(By-pass Ratio)は2.9:1、圧力比は24。推力/重量比は4.5、オーバーホール間隔は5,000時間で同クラスの他と比べ4割以上長い。騒音レベルはCFR36 Stage 4の制限値270 EPNdbを、20db以上余裕を持ってクリアし、このクラスでは最も静かで、最もエミッションが少ない。
図14:(GE Honda Aero Engines)HF120エンジンのカットビュー。図の左から;—ファンは、ワイド・コード(幅広型)で高効率、ブレード・デイスク一体型構造(BLISK)で、低騒音、耐久性に優れる。その直ぐ後は2段式低圧コンプレッサー(LPC)、高圧コンプレッサー(HPC)はチタン合金製遠心式で高圧力比。その直ぐ右は1段式高圧タービン(HPT)で先進型単結晶ブレード。HPTの上下にはコンパクトな燃焼室のカットが描かれているが、これは浸透式冷却(effusion cooling)で、レーザー加工で94,000個の空気孔を開けてあり、耐久性に優れる。右の2段式低圧タービン(LPT)は、HPローターと逆回転する。一番右の排気ダクトはファン排気とコア排気を効率よく混合し、軽量化と騒音低減を図っている。
(続く)