中国・ロシア海軍艦艇の動き、我が国周辺で活発化


2016-06-15(平成28年) 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部の発表(28-06-15)によれば、6月15日午前3時半頃中国海軍のドンデイアオ級情報収集艦1隻が鹿児島県屋久島の西にある口永良部島の西側領海に侵入、南東に進むのを鹿屋基地第1航空軍所属の「P-3C」哨戒機が発見した。この情報収集艦は屋久島南の領海を出て南東方面に向かった。中国海軍艦艇が日本領海に侵入するのは極めて異例で、2004年11月に中国海軍原子力潜水艦による侵犯事件以来のことである。外務省アジア太平洋局長金杉氏は在日中国大使館次席公使に電話で「抗議」ではなく「懸念」を申し入れた。同時刻に周辺海域では日米印3ヶ国海軍の共同演習「マラバール」が行われていて、演習に参加するインド海軍の補給艦とフリゲートの2隻がこの海域を航行していた。

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図1:(南方網)ドンデイアオ(Dongdiao=東調)級情報収集艦、艦番号851「艦名は海王星?」は1999年就役、日本周辺で任務についている。満載排水量6,000 ton、全長130mで後甲板にヘリ1機を搭載する。弾道ミサイルや対艦巡航ミサイルの発射時の各種測定をするのが任務とされる。3基のドーム状アンテナはミサイル追尾用、兵装は37 mm及び25 mm連装機関砲、3連装短魚雷発射管を2基装備する。中国海軍は「815」型を改良した「636」型情報収集艦も就役させていて、フィリピン近海やハワイ周辺で活発な情報集活動を行っている。昨年12月23日に我が国の横須賀軍港近くの房総半島南東の接続水域を外れた海域に出現、北東/南西に数回往復したのは艦番号851である。

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図2:(Yomiuri Online) 6月15日午前3時半頃中国海軍のドンデイアオ級情報収集艦1隻が鹿児島県屋久島の西にある口永良部島の西側領海に侵入、南東に航行、屋久島の領海を侵して南東に立ち去った。

 

また、別の統合幕僚監部の発表(28-06-13)によれば、6月12日(日)午前11時ごろ、海上自衛隊第3ミサイル艇隊佐世保基地所属の「おおたか」及び鹿屋基地第1航空群所属の「P-3C」哨戒機が、下対馬の南55 kmの海域を東北東に進むロシア海軍太平洋艦隊旗艦スラバ級ミサイル巡洋艦「バリヤーク 011」を発見、追跡した。同艦はその後対馬海峡を北上、日本海に入った。

スラバ級巡洋艦011

図3:(統合幕僚監部)艦番号011は1989年就役の「バリヤーク」と呼ばれロシア海軍太平洋艦隊旗艦で、2008年にオーバーホールを完了。満載排水量11,300㌧、強力な防空力と打撃力で空母機動部隊攻撃を主任務とする。3隻が現役配備中。両舷4個の筒の中には、射程距離700km、速度マッハ2の「P-1000ブルカーン」対艦ミサイル発射機、各機に2基ずつ、合計16基を搭載している。これまで度々北海道宗谷海峡沖や対馬海峡近辺に出没している。

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図4:(海防) 6月12日(日)午前11時ごろ、 ロシア海軍太平洋艦隊旗艦スラバ級ミサイル巡洋艦「バリヤーク 011」は下対馬の南55 kmの海域を東北東に東水道を進み、日本海に入った。

 

中国・ロシア海軍の動きは我が国周辺で活発に推移しており、この2件の他に6月に入ってからすでに3件が報告されている。すなわち;—

 

・  6月8日(水)北海道宗谷岬北東55 kmの海域をオホーツク海から日本海に向かうグリシャV級小型フリゲート1隻及びカメンカ級測量艦2隻。発見追跡したのは函館基地第45掃海隊所属の「ながしま」と八戸基地第2航空群所属の「P-3C」哨戒機。

・  6月8日(水)沖縄県尖閣諸島久場島と大正島の間の接続水域にウダロイ級駆逐艦を含む3隻の艦隊が南方海域より侵入、接続水域を北上、東シナ海に抜けた。発見追跡したのは海自護衛艦「はたかぜ」。ほぼ同時に中国海軍江凱型フリゲート1隻が同じ海域に北西から侵入、護衛艦「せとぎり」の警告を受け、北東に変針し立ち去った。日本政府は本件について中国政府に「抗議」している。この件は大きく報道された。

・  6月2日(木)北海道宗谷岬北北東40 kmの海域をオホーツク海から日本海方面に進むロプチャーII級戦車揚陸艦1隻、タランタルIII級ミサイル護衛哨戒艇2隻。発見追跡したのは八戸基地第2航空群所属の「P-3C」哨戒機。

 

—以上—