木星探査機「ジュノー」、捕捉軌道に入り最初の遠地点を通過


2016-07-31(平成28年) 松尾芳郎

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図1:(NASA/JPL)木星周回軌道に入った探査機「ジュノー」の想像図。ロッキード・マーチン社の製作で、科学計測装置9個を搭載する。3方に開いているのはソーラーパネルで直径は20 mになる。中央は探査機本体、右上に突き出ているのは磁力計。ジュノーは木星探査機としては、1995-2003年に探査を行った原子力発電装置付きの「ガリレオ(Galileo)」に続く2機目である。ジュノーの電源は400 watt発電のソーラーパネルのみで、55 amp/hのLi-ionバッテリ−2個を使っている。

 

5年前にケープ・カナベラルを出発して木星に向かった探査機「ジュノー(Juno)」は、去る7月4日に木星の南北を周回する捕捉軌道(Capture Orbits)に到着、木星の北から南に回る長大な楕円軌道に入り周回飛行を開始した。そしてほぼ1ヶ月後になる7月31日には木星から810万km離れた「アポジョブ(apojove)」と呼ぶ遠地点を通過して再び木星の北極上空に向かう。この捕捉軌道の飛行は1周53.5日かかり、これを2回繰り返してから探査ミッションに入る。

ジュノーは2011年08月05日に打ち上げられ、地球の太陽周回軌道に沿いながら飛行し、地球重力を利用したフライバイで木星へ向かって飛行を続けてきた。

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図2:(NASA/JPL)ジュノー探査機は、フロリダ州ケープ・カナベラルを2011-8-5に出発し、太陽周回軌道を回り、地球フライバイを2013-10-9に行い、加速して木星に向かい、その周回軌道に到着した。

ジュノー木星軌道

図3:(NASA/JPL-Caltech)ジュノー探査機が飛行する木星周回軌道の図。到着後先ず(緑色)で示す長楕円の捕捉軌道(capture orbit)を2周し、それから(青色)で示す14日周期の探査軌道に入り本格的な観測を始める。

 

ジュノーは7月4日に予定通りロケットエンジンを35分間噴射して木星に到着、その重力を使って一周53.5日の長楕円の捕捉軌道に入ることに成功した。2周目の終わりに再びエンジンを噴射して減速し、14日で一周する軌道に移行して2016年10月から科学探査活動を始める。

捕捉軌道の第1周目は8月27に終わるが、この時にジュノーは木星表面の雲の上4,200 kmまで接近する。ジュノーに搭載する観測機器類は全てオフの状態にしてあるが、この初の最接近の機会を捉えて、全観測機器を試験運用を兼ねて作動させる予定にしている。

NASAジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory in Pasadena, Calif.)の

ジュノー・プロジェクト課長リック・ナイバケン(Rick Nybakken)氏は「ジュノーの作動状況は完璧で全ての観測機器は試験済み、木星の至近距離からの様子を送ってくれる筈だ」と語っている。

搭載する観測機器は強力なもので、液化水素が高圧で金属化していると考えられる木星深部の構造、大量の雲に覆われた大気循環の仕組み、高エネルギー磁力線が作る両極を結ぶ磁界、などを解析してくれる。また、木星の生成や進化の手がかりを明らかにしてくれそうだ。

探査機は今年10月から20ヶ月以上にわたり木星周囲を37回周回しながら科学観測を行い、2018年2月に木星に引き寄せられ大気中に突入、使命を終える。

JPLが管理するジュノー・ミッションは、サウスウエスト研究所(Southwest Research Institute in San Antonio, Tex.)のスコット・ボルトン(Scott Bolton)氏が責任者を務めている。また、「ジュノー」はNASAのニュー・フロンティア・プログラムの一つで、マーシャル・スペースフライト・センター(Marshall Space Flight Center inHuntsuville, Alabama)の管轄下にある。

 

—以上—

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

NASA July 30, 2016 “Five Years Post-Launch, Juno is at a Turning Point”

TokyoExpress 2018-07-07 “NASAの木星探査機「ジュノー」が木星周回軌道に到着“