アメリカン航空B767、10月28日シカゴでエンジン大破・離陸中止


2016-11-04(平成28年) 松尾芳郎

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図1:(youtube)アメリカン航空767型機がシカゴ・オヘア空港ランウエイ28Rから離陸滑走中に右エンジンが破裂、火災となり離陸を中断した。

 

アメリカン航空ボーイング767-300型機[N345AN] がシカゴ・オヘア空港(Chicago O’Hare International Airport)からAA-383便としてマイアミに向け離陸中の出来事だった。乗客161人、乗員9名を乗せて現地時間午後2時50分、オヘア空港のランウエイ28Rから離陸滑走中に右翼から発火、直ちに離陸中断、滑走路上に停止した。乗員は消防車を要請、右翼に火災と黒煙が上がるのを認めた乗員は、胴体左側の非常脱出用スライドを展張し乗客の避難誘導を行った。乗客19名と客室乗員1名が軽い怪我を負い病院に送られた。

機体は大きく損傷し、胴体右側は主翼付け根から外板が溶け、右翼の先端部分は大きく破損し地上に垂れ落ちた。

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図2:(The Aviation Herald)アメリカン航空7370300型機の焼け落ちた右側主翼。

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図3:(The Aviation Herald)アメリカン航空767-300型機の胴体右側部分は焼け焦げている。

 

FAA(連邦航空局)は28日に「タイヤが破裂したため離陸中断」と発表したが、同日遅くNTSB(国家運輸安全委員会)は「右エンジンが破裂、そのため内側燃料タンクが破損ランウエイ上に飛び散り、その破片を踏んだためタイヤがパンクした」と訂正した。そして「エンジン破裂の原因の調査を行う」と発表した。

翌29日NTSBは「右エンジンの高圧タービン・2段目のデイスクが破裂、飛散した部品の一部は約1000 m (2920 ft) 離れたUPSの倉庫まで飛び散った。破裂したデイスクのほぼ90%は回収した。

AA 767-300型機のエンジンはGE製CF6-80C2である。この右(No. 2)エンジン破裂事故の原因調査をするNTSB担当官は、GEの助けを借りて調査を開始した。当該エンジンは1998年に製造され、破裂したデイスクは相当長期間使われていた。調査は、デイスクの素材の成分、製造時の鍛造とその後の機械加工、に着目して行われ、必要に応じて耐空性改善通報(AD)を発行し一斉検査を要求することになる。

GEによると、CF6-80C2の高圧タービン2段デイスクには、これまでFAAから耐空性改善通報が出されたことはない。高圧タービン1段デイスクについては、過去に破裂事故を起こしたことがあり、対策済みである。この2段デイスクは、GEが素材を提供しドイツのMTU社が加工している。

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図4:(GE Aviation) CF6-80C2エンジンは1985年供用開始以来、12種類の広胴型機に使われ、16種類あり、これまでに2億時間の飛行実績がある。離陸推力は52,500-63,500 lbs、ファンバイパス比4.97-5.31、ファン直径93 inch(236 cm)。今回の事故は、後部の高圧タービン2段目のデイスクが破裂し破片がケースから飛び出し燃料タンクなどを破り火災を生じた。

 

これまでのCF6系列エンジンの重大事故は;—

2006年6月にロサンゼルス空港でアメリカン航空767-200ERがCF6-80Aエンジンの試運転中に破裂事故を起こした。

1989年7月に、ユナイテッド航空のDC-10が飛行中に尾部のCF6-6Dエンジンのファン・デイスクが破裂した。このため全油圧系統不作動となりながらアイオワ州スーシテイ(Sioux City, Iowa)に緊急着陸を試みたがクラッシュ・ランデイングとなり、搭乗者296名中111名が死亡する事故となった。

NTSBの今回の調査結果に関わらず、このアメリカン航空の事故は老朽化したエンジンの使用に警鐘を鳴らすことになりそうだ。と云うのは、今回のCF6エンジンの事故は、この一年余りの間に起きたGE関連の高サイクル使用エンジンの3件目の事故になるからである。すなわち;—

①      2015年9月8日のラスベガス・マッカラン空港(Las Vegas McCarran AP)で起きた英国航空777-200ER型機のGE90エンジンの高圧コンプレッサー(HPC)の破裂事故。このエンジンは1995年から使われていた。(詳細はTokyoExpress 2015-09-17 “ラスベガスで起きた英国航空ボーイング777型機のエンジン火災“を参照)

②      2016年8月27日のメキシコ湾上空で起きたサウスウエスト航空737-300型機のCFM-56-7Bエンジンのファン・ブレードが破断、ノーズカウルが脱落した事故。(詳細はTokyoExpress 2016-09-02 “サウスウエスト航空737のCFM56エンジン破損、NTSB調査を開始“を参照)

 

—以上—

 

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

 

The Aviation Herald Oct 28th 2016, updated Oct 31, 2016 “Accident; American B763 at Chicago on Oct 28th 2016, rejected takeoff, fire at right hand wing due to uncontained engine failure” by Simon Hradecky

Aviation Week Network Nov. 2, 2016 “Probe Continues into American CF6 Failure” by Guy Norrris