ミサイル防衛の近況


 2017-02-04(平成29年) 松尾芳郎

 

北朝鮮の相次ぐミサイル発射実験と中国のロケット軍(一昨年まで第二砲兵軍と呼称)の大規模な増強に世界の注目が集まっている。現在ロシアと中国など西側諸国と対立する国々は6,300発の弾道ミサイルを保有しているが、2020年までに8,000発に増えると見られている。

我国はこの脅威に対抗するため、2016年度第3次補正予算で低層域防空用“PAC-3”ミサイルの性能向上改修[PAC-3 MSE]化の費用を計上、承認された。さらに中層域防空用の新型ミサイル”THAAD(サード)”や、地上配備型イージス・システム「SM-3イージス・アショア」導入の検討が始まっている。

 

ここでは、これまで紹介した“弾道ミサイル防衛「BMD」”関連記事と重複する箇所もあるが、「ミサイル防衛の動き」について、レイセオン社が公表した最新情報などを参照して、まとめてみたい。

 

ミサイル防衛[BMD=Ballistic Missile Defense]とは

中露、北朝鮮、イランなどによる弾道ミサイルの発達、増強は、我国のみならず米国、NATO諸国などにとり、国家安全保障上の重大な脅威となっている。

弾道ミサイルは時速24,000 km/hrの極めて高速で飛来し、射程は非常に長く、ロシアや中国内陸の基地から、我国は勿論のこと北米大陸の攻撃もできる。弾頭の重量に制限があるため、炸薬ではなく一般に核弾頭を搭載、1発でも着弾すれば広範囲に想像を絶する被害が及ぶ。

弾道ミサイルの攻撃から身を守るには、ミサイルの発射を素早く探知、来襲する弾頭を追跡し、迎撃する。あるいは、事前に発射の兆候を捉え、先手を打って敵基地を攻撃、破壊する、ことが必要である。

ミサイル攻撃を防ぐため、米国と同盟諸国は複数の重複する防衛手段を開発してきた。この中でレイセオン社は重要な役割を果たしてきた。

 

  1. 追尾と識別(Tracking and Discrimination)

ミサイル攻撃を食い止めるには、発射の検知から始まる。

レイセオン社は、来襲が予想される敵ミサイルに関する形式、弾道、目標、弾頭などの情報を、関係業界と共有しつつ以下のようなシステムを開発してきた。

 

a) 宇宙–追跡・監視システム–実証衛星(STSS-D = Space-Tracking and Surveillance-Demonstrator Satellites)

[STSS-D]ノースロップ・グラマン社が主契約社として開発するが、これにはレイセオン製の可視光線センサーと赤外線センサーを搭載している。

STSS-Dは低地球周回軌道を120分で周回する2機1組の衛星で、弾道ミサイルの発射を直ちに検知・追尾するシステム、2009年に発射され、以来軌道上で試験を重ねながら任務についている。

STSS-D衛星

図1:(Raytheon) STSS-D実証衛星は2010年以降、長距離弾道ミサイルから短距離弾道ミサイルまで各種ミサイルの発射の捕捉・追尾の試験を行っている。

STSS-D衛星2

図2:(Raytheon) STSS-D実証衛星は、赤外線センサーと可視光線センサーで弾道ミサイル発射を探知、追尾し、情報を迎撃システムに通報する。

 

b) 地上固定型早期警戒レーダー(Early Warning Radars)の性能向上:

このレーダーはカリフォルニア、アラスカ、英国、およびグリーンランドに配備されている。UHF波(超高周波)帯の強力な電波で遠距離から発射された多数のミサイルを同時に捕捉、追跡できる。

後述する、センチメートル波(SHF)とも呼ばれる高周波数/超短波(4-12 GHz / 数cm)を使うAN/TPY-3レーダー(Xバンド使用)や、大気圏内低層域で迎撃するPAC-3用レーダー(Cバンド使用)は、飛来する小型目標の追尾精度に優れている。

これに対し早期警戒レーダーのように周波数のやや高いUHF極超短波 (0.3-3 GHz /10 cm-1 m)帯 レーダーは広範囲での遠距離・多目標の同時探知・追跡能力で優れている。

つまり、[SHF]帯と[UHF]帯レーダーを使い分け、重層化することで、目標の探知精度を高めている。

UEWR

図3:(Raytheon) 地上設置の新型早期警戒レーダー(UEWR=Upgraded Early Warning Radar) は、数千キロ離れた地点で発射された多数のミサイルを探知・識別できる。

UEWRの送受信素子

図4:(Raytheon) UEWRのレーダー面に並ぶ数千個の送受信素子(T-R Units)。

 

我国の固定型早期警戒レーダー網は、米国に次ぐ世界第二の規模と云われかなり充実したシステムとなっている。日夜、中国、ロシア、北朝鮮から飛来するミサイル、航空機などの監視に当たっている。

長距離用としては、数千キロの探索能力のある「FPS-5」が全国4箇所に配置されている。また中距離用として探知距離600 kmの「FPS-3改」が7箇所に配置されている。いずれも三菱電機製で航空自衛隊が運用している。「FPS-5」はLバンド(0.5-1.5 GHz、波長24 cm)およびSバンド(2-4 GHz、波長数cm)の2波長を使う[AESA]レーダーで、米国のUEWRと同様、巨大なアンテナ面に数千個の送受信素子を並べる。「FPS–3改」はXバンド(8-12 GHz、3 cm波)を使い、これも多数の送受信素子の[AESA]レーダーで、ドーム内のアンテナを回転させ600 km以上の範囲を監視する。

FPS-5

図5:(防衛省)沖縄県沖縄本島与座岳に設置されている「FPS-5」レーダー、中国本土のほぼ3分の1、北京、西安、海南島を含む広大な区域の上空を監視する。

空自レーダー配置図

図6:(防衛省)空自・航空警戒管制部隊「レーダーサイト」の配置図。長距離用「FPS-5」は4箇所、中距離用「FPS-3改」は7箇所に配備されている。

 

c)自走式海上Xバンド・レーダー[SBX]

9階建ビルの高さ(250 ft) の排水量50,000 tonの自走式双胴型の海底油田掘削装置を改造、台上にXバンド・レーダー(SBX=Sea-based X-Band Radar)を装備する。台船を含む全体を[SBX]と呼ぶ。

定置港はアラスカ州になっているがハワイ・パールハーバーに整備基地があり、多くはここに在泊する。2006年に完成、2013年4月には北朝鮮弾道ミサイル発射を探知している。弾道ミサイルを4,000 km (2,500 miles)の遠距離で探知、捕捉、追尾する。

SBX

図7:(Raytheon) ドームの中に収められているSBXレーダーは、約4,500個の送受信素子を並べた世界最大のAESAレーダー。ドームは直径40 mの球形で風速70 m/秒の強風にも耐えられる。

d)  地上配備型ミサイル防衛レーダー[AN/TPY-2]

AN/TPY-2レーダーは後述の「THAAD迎撃ミサイル」の眼の役目をするレーダーとして知られる。弾道ミサイルを長距離・大気圏外で探知、捕捉、識別、追尾する[8.55-10 GHz] (波長3 cm)のXバンド使用型である。AN/TPY-2には“前線基地モード”と“ターミナル・モード”の2つがあり、前者は前線に配備され弾道ミサイルを発射後「ミッドコース段階」で捕捉、後者はPAC-3やTHAAD迎撃ミサイルの基地近くに配備され「ターミナル段階」で敵を捕捉・追尾し迎撃ミサイルの誘導をする。探知距離は約1,000 kmとされる。

米陸軍はAN/TPY-2レーダーを青森県の空自車力分屯地(2007年6月)及び京都府経ヶ崎米軍通信所(2014年12月)にそれぞれ配備済み。これらはハワイ(2009年6月)及びグアム(2013年4月)に展開中のTHAAD発射中隊の前線基地レーダーの役割を担っている。

サード・レーダー

図8:(Raytheon)AN/TPY-2レーダーは車載式のAESA (active electronically scanned array)型でレイセオン社が製作し、敵弾道ミサイルを「ミッドコース段階」の終わりから「ターミナル段階」で捕捉するが目的、探知距離は1,000 kmと云われる。地上設置レーダー(GBR=ground-based radar)とも呼ばれ、全視界を見渡せる9.2 m2のレーダー面にXバンドの送受信素子25,344個を配し飛来する目標を捉える。

 

e) 次世代型対空・対ミサイル防衛レーダー(AMDR = Air and Missile Defense Radar) [AN/SPY-6(V)]

AMDR [AN/SPY-6(V)]レーダーは水上艦艇用で、強力な識別能力と精度を備える。米海軍の次世代イージス駆逐艦DDG-51 Flight III向けとして開発している。

AMDRは、多数目標を同時に探索、識別、追跡できる。目標に向かうSM-3ミサイルと通信する役の”S”バンド・レーダーと、比較的近くで精密探索、迎撃ミサイルを誘導する”X”バンド・レーダーとの二つの機能を持つ。

我国を含め現用イージス艦はAN/SPY-1D(V)レーダーが使っているが、新しいAN/SPY-6(V)は、低価格、高精度、高信頼性で汎用性の高いレーダーでなる。

AN/SPY-6(V)は、窒化ガリウム(GaN)送受信素子使用の一片60 cm (2 ft) の立方体モジュール(RMR = Radar Module Assembly)で構成され、必要なサイズに積重ね組立てる方式である。あらゆる艦船に(将来は航空機にも)搭載可能とされている。イージス艦のAN/SPY-1D(V)と同能力であればRMR 9個で代替でき、サイズは半分になる。AN/SPY-1D(V)はガリウム砒素(GaAs=Gallium Arsenide)送受信素子製だが、窒化ガリウム(GaN)製にすれば価格は34%下がる。

我国は世界に先駆けてAESAレーダーの送受信素子を“GaAsからGaN” への変更・実用化に成功している。すなわち、F-2戦闘機の[J/APG-1]と同[改]が、また2009年就役のヘリ空母「ひゅうが」で[FPS-3改]が、それぞれ実用化済み。さらに、次の各種新型ミサイルには、シーカーとして「GaN」素子製の小型レーダーを搭載、命中精度を高めている;—

  • 空自:F-2及びF-15に装備が進む射程100 kmの「99式空対空誘導弾(改)」通称「AAM-4B」、
  • 陸自:九州と沖縄で配備の始まった地対空ミサイル「03式中SAM改」および射程200 km+の「12式地対艦誘導弾」、
  • 海自:開発中の[ SM-6]並みの長射程(360 km?) 性能を持つ「新型艦対空誘導弾」、

イージス艦レーダー

図9:(Raytheon)米海軍や海自が配備するイージス艦の「AN/SPY-1D(V)」レーダー・アンテナは8角形で大きさは4.3 m x 4.3 m、艦橋側面の4面に取付けられている。新型のAMDRに比較的容易に換装できる。

AMDRモジュール

図10:(Raytheon) RMA立方体モジュールの説明。1 RMAは一片60 cmの立方体。現用のSPY-1レーダーと同性能であれば9個のRMAで十分。現在のSPY-1レーダーと同じ面積には37個のRMAが入るが、これで性能は+15 dB増加する。さらに69個に増やせば性能は+25 dB増加する。

 

  1. 迎撃システム(Interception)

 

米国と同盟諸国は、多様な高度から来襲するミサイル・弾頭を迎撃するため、長距離・中距離・短距離/高層域・中層域・低層域にそれぞれの迎撃手段を構じている。

我国のBMD(弾道ミサイル防衛)体制は、長距離・高層域をイージス艦搭載の「SM-3」が担当、撃ち漏らしたミサイルを短距離・低層域で地上配備型「PAC-3」が迎撃、と云う2段階で構成されている。しかし、これでは不十分とされ、「SM—3」の陸上配備型「イージス・アショア」と、中距離・中層域の迎撃ミサイル「THAAD」の採用検討が始まっている。

BMD3層

図11:(Lockheed Martin)「BMD」(弾道ミサイル防衛)の階層図。左上の大きい部分は「イージス(Aegis)」システムで迎撃する範囲(高度160 km以上、半径500 km以上)を示している。真ん中は「THAAD」システムが防衛できる範囲(高度150 km、半径200 km)、そして右下の小さい部分が「PAC-3」で対処する範囲(高度15 km、半径20 km)である。Lockheed THAAD Extended Range(THAAD ER)紹介ビデオから抽出した図。

 

a) イージス(Aegis)高層域および中層域対応:

イージス・システムは元来艦載用の中短距離弾道ミサイル防御用の武器システムだが、近年ヨーロッパには地上配備型のイージス・アショア(Aegis Ashore)システムが展開中である。艦載システムは、イージス艦では各種ミサイル90発程度収納可能なMk 41 VLS(垂直発射装置)に搭載する。搭載は[SM-3]の他に対空用の[SM-2]、対潜用の「アスロック」、対地攻撃用巡航ミサイル、などがあり、ミッションに応じてそれぞれの数が決まる。

地上配備型では、1例しかないが「SM-3」24発をMk-41 VLSに収めている。レイセオン製スタンダード・ミサイル「SM」系列には大別して次の2つがある。

  • スタンダード・ミサイル-3 [SM-3]

来襲する敵目標を高層域・大気圏外で迎撃、炸薬のない衝突・撃破型弾頭(hit-to-kill vehicle)を直接衝突させて破壊する。米海軍は、アーレイ・バーク(Arleigh Burke)級62隻とタイコンデロガ(Ticonderoga)級22隻の合計84隻のイージス艦にこれを搭載している。我国のイージス艦は ”こんごう”級、 ”あたご”級で、運用中6隻+建造中2隻だが、これでも世界第2位の数になっている。

SM-3弾頭部

図12:SM-3ミサイルがブースターから分離して目標に向かう様子。左端の”Hit-to-Kill”弾頭は未だ付いたままの状態。

 

現在「SM-3」ではIBおよびIIA型への改良が進んでいて、IIA型は日本と米国が共同開発中で2018年から配備開始の予定である。ロケット・エンジンが大型化し(直径13.5 inchから21 inchへ)射程が伸び、弾頭も大きくなっている。配備は艦載型と陸上配備型が同時に始まる予定。

Aeigis Ashore

図13: (US Missile Defense Agency) ルーマニア・ドベセル(deveselu, Romania)基地に配備のイージス・アショア(Aegis Ashore)システム。SM-3 Block 1Bミサイルが8セル型Mk-41 VLS 3基に計24発収納される。側にはSPY-1D(V)レーダーが見える。NATOの対ロシア、対イラン弾道ミサイル防衛(BMD)網の一つである。2016年5月から運用を開始、同様の装置がポーランドにも建設中で、2018年の完成を目指している。

 

  • スタンダード・ミサイル-6 [SM-6] /中層域および巡航ミサイル対応:

「SM-6」はアクテイブ・シーカー付きの多目的ミサイルで、来襲する弾道ミサイルを大気圏で迎撃するだけでなく低空を飛来する航空機や巡航ミサイルも迎撃できる。イージス艦などに搭載する艦載型の垂直発射装置Mk 41 VLSから発射され、正確に目標に衝突・撃破する。射程は未公表だが360 kmと云われている。シーカーは中距離空対空ミサイルAIM-120 AMRAAMと同じものを装備。「SM-6」は2013年から配備が始まりすでに300発が引渡し済み。米海軍は1,000発以上を追加発注した。

我が海自は採用を決めていない。

 

b)  地上配備型ミッドコース域防衛( Ground-based Midcourse Defense)ミサイル/遠距離・高層域対応:

このシステムは大型・強力な地上配置型防衛ミサイル(GBI)で、アラスカおよびカリフォルニアに設けた地下サイロから発射される。弾頭はレイセオン製で、センサーと進路調整用スラスター付きで大気圏外で敵ミサイルに衝突、撃破する。GBIは弧を描いて飛来する弾道ミサイルの中間点、すなわち弧の頂点付近・ミッドコースで迎撃する。

 

c) 地域高空防衛「サード」システム (THAAD = Terminal High- Altitude Area Defense)/中層域対応:

地上配備型「サード(YHAAD)」は飛来する弾道ミサイルを大気圏上層域で迎撃、衝突・撃破する[hit-to-kill]システム、SM-3やPAC-3と同じ方式である。米陸軍で2008年5月から配備が始まっている。未公表だが、射程は200 km、迎撃高度は150 kmと言われている。従って大気圏外・高層域で迎撃する「SM-3」と大気圏内低層域で迎撃する「PAC-3」との中間域を担当する迎撃システムである。

サード・システム図

図14:(Business Insider.com) THAADミサイル・システムのAN/SPY-2レーダーの配置図。前線基地とターミナル域に配置される代表例。

 

「THAAD」は既述のようにレイセオン製Xバンド(波長3 cm)のAN/TPY-2レーダーが、目標を1,000 kmの彼方で探知、追尾し、THAADミサイルを誘導する役を担っている。

1個サード発射中隊(1 FU=Fire Unit)は、発射機9両で編成、1両にサード・ミサイルを8本搭載、さらに戦闘指揮車両(TOC=tactical operation center)2両と地上レーダー(GBR=ground-based radar)1両で構成される。

THAAD 発射機

図15:(US Missile Defense Agency)「THAAD」システムの発射機。1両につきミサイル8本を搭載する。

 

米陸軍は、「THAAD」発射機(Launcher)を80-99両、地上レーダー(GBR)を18両、そしてミサイル本体を1,422発、導入する。一部既述のようにフォートビル(Fort Bill, Tex.)、ハワイ、グアムにそれぞれ一個中隊を配備済みである。2017年7月までに韓国慶尚北道青洲群に配備される。韓国配備については、中国は自国の北京一帯、山東半島などがAN/SPY-2レーダーの監視下に入るとして強硬に反対しているが、マテイス米国防長官が2月3日の訪韓で「THAAD」配備を再確認した。

 

d) ペイトリオット(patriot)「 PAC-3」/低層域対応:

PAC-3 (Patriot Advanced Capability-3) で代表される低層域担当の迎撃ミサイル、我国を含む13カ国で使われている。現在レーダーを窒化ガリウム(GaN)素子のCバンド方式に改める計画が進んでいる。レーダーの換装を含むその他の改良はPAC-3 MSE (Missile System Enhancement)改修としてキット化されている;—

  • 弾頭の誘導精度を向上した[GEM-T = Guided Enhanced Missile]
  • ロケット部分とフィンを大きくし、射程を30 km+に延伸、さらに機動性を向上。

我国では PAC-3を空自が担当、「SM-3」の迎撃をくぐり抜け「ターミナル域」に飛来した弾道ミサイルを高度15 km付近で迎撃、撃破して直径20 kmの区域を防衛する。現在、全国に6個高射群を配備している。各高射群はそれぞれ4個高射隊で編成、各高射隊には発射機(Launcher) 5両がある。1ランチャーに搭載できるPAC-3は最大16発。改修型の「PAC-3 MSE」は弾体が太くなるので12発搭載となる。こうして24個高射隊120両の発射機で全国の基地、主要都市、発電所、空港、港湾施設などの防空を担当している。既述のように平成28年度第3次補正予算で「PAC-3 MSE」への改修が認められたので、これから改修が進む予定だ。

詳述は避けるが、これでは某政府高官の話によるまでもなく「弾道ミサイルに対する防衛体制としては全く不十分」とされている。

 

e) 先進地対空ミサイル・システム (NASAMS = National Advanced Surface- to-Air Missile System)

レイセオン製の3種類のミサイルを同一装置で発射できるシステムで、対象は“艦対空ミサイル・改良型シー・スパロー”、“中距離空対空ミサイルAMRAAM”、”短距離空対空ミサイルAIM- 9X”。

 

終わりに:

最後にレイセオン社が作成したビデオ[Raytheon’s Ballistic Missile Defense Systems Provide Layered Defense Around the World]を紹介する。「THAAD」用のAN/SPY-2レーダーと「SM-3」ミサイルの発射から弾頭が分離し目標に衝突・撃破するまでを図解した内容である。時間は約3分。

https://youtu.be/ae5VmVwfWmk

 

—以上—

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

Missile Defense Agency Fact Sheet “Space Tracking and Surveillance System”

Raytheon “Space Tracking and Surveillance System-Demonstrator (STSS-D)”

Missile Degenxe Agency “A Brief History of the Sea-Based X-band Radar-1”

USNI News May 12, 2016 “Aegis Ashore Site in Romania Declared Operational” by Sam LaGrone

Raytheon “Air and Missile Defense Radar (AMDR)”

Raytheon 21 May 2015 “Air & Missile Defense Radar (AMDR) AN-SPY-6 (V)” by Tad Dickenson, Director/Program Manager

US Missile Defense Agency “Terminal High Altitude Area Defense (THAAD)”

Business Insider Oct. 16, 2015 “China is spooked about this super-advanced missile system that US wants in South Korea” by Amanda Macias

TokyoExpress 2016-08-18 “防衛省ミサイル防衛体制(BMD)強化を急ぐ“

TokyoExpress 2016-08-29 “不安定な世界情勢に対処、新ミサイル防衛手段の数々“

TokyoExpress 2016-10–27 “防衛省、弾道ミサイル防衛(BMD)計画の前倒し実施へ“

TokyoExpress 2011-01-29 “レーダーの基本”