2017-09-17(平成29年) 松尾芳郎
2017-09-17改訂(China Military Onlineを参照)
防衛省統合幕僚監部によれば(29-09-15)、9月14日夜10時頃中国海軍艦艇4隻が下対馬南西120 km海域を北東に進み対馬海峡を北上し、日本海に入った。
発見、追尾したのは鹿屋基地海上自衛隊第1航空群所属のP-3C哨戒機と舞鶴基地第14護衛隊所属の護衛艦「まつゆき」及び佐世保基地第3ミサイル艇隊所属のミサイル艇「おおたか」である。
対馬海峡を通過日本海に入った中国艦艇は次の通り。
ルージョウ(Luzhou)「旅州」級ミサイル駆逐艦 (116) 1隻
ジャンカイ(Jiangkai) 「江凱」II級フリゲート (576) 1隻
フチ(Fuchi) 「福池」級補給艦 (960) 1隻
ダラオ級潜水艦救難艦 (867) 1隻
9月15日午前7時に、北朝鮮が平壌近郊の順安から中距離弾道ミサイルを発射、北海道上空770 kmを通過し3,700 kmを飛行して太平洋上に落下した。中国艦隊の14日夜間の行動はこれとタイミングが一致する。すなわち、中国は発射の情報を事前に知り、その前日に北海艦隊から艦艇を出動させ、日本海に派遣したのではないか。北朝鮮のミサイル発射が予測される場合には、日米両海軍はイージス艦などの艦艇を日本海に展開して備えるのが通例となっている。この日米の対応を探知、牽制するのを狙ったのかも知れない。
一方中国軍の英文ニュースサイトChina Military Onlineによると、この中国艦隊はロシア海軍との共同演習のため日本海に入ったもので第3国を対象にしたものではない、と報じている。すなわち、これら4隻は山東半島南岸の青島軍港を13日に出港、ウラジオストクに向かった。演習は日本海とオホーツク海で行われる予定で、両国海軍の共同演習としては去る7月にバルチック海で行われたのに続く2回目となる。今回は潜水艦救難訓練を始めて行う。
図1:(統合幕僚監部)051C型と呼ばれる新型防空駆逐艦で僚艦防空機能を持つ。大連造船所で建造された2隻のうちの2番艦、艦番号116「石家荘」(Shijiazhuang)で2007年3月就役、北海艦隊に所属している。前身の051B型との違いは対空ミサイルを、HQ-7(フランス製クロタル)を廃し、ロシア製S-300FM 射程100 km級の対空ミサイル、8連装回転式VLSを前甲板に2基、後部構造物に4基、合計48発搭載に改めている。満載排水量は7,100 ton。
図2:(統合幕僚監部) 054A型と呼ばれる次世代型フリゲートで1番艦「舟山」は2008年1月、艦番号576「大慶」(Daging)は17番艦で2015年1月就役。建造中を含め同型艦は25隻になる。満載排水量4,500 ton、速力27 kts。対空兵装はロシアの)M-38Mを改良した射程25-42 kmのHQ-16(紅旗16)を32セル垂直発射装置(VLS)に収め僚艦防空能力を持つ。対艦、対潜水艦兵装にも優れており、4,000 tonを超える大型で航行性能が高く、遠洋航海を容易にこなせる。
図3:(統合幕僚監部)903型補給艦で、艦番号960は2015年12月就役の「東平湖」(Dongpinghu)、本格的な洋上補給艦で、空母打撃艦隊を支援するのが主任務、同型艦はすでに8隻が完成している。満載排水量23,000 ton、速力20 kts、甲板に、前方/燃料移送、後方/ドライカーゴ用の門型ポスト2基を備えている。搭載補給物資は艦船用燃料7,900 ton、航空燃料2,500 ton、弾薬食料等トライカーゴ680 ton。
図4:(統合幕僚監部)926型と呼ばれ、2010-12年に就役した3隻のうちの3番艦、艦番号867「長島」(Changdao)、満載排水量9,500 ton、後部甲板には大型クレーン、潜水艦救難装備を搭載する。搭載する救難艇はイギリス製LR-7型1隻。
—以上—
本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。
日本周辺国の軍事兵器2013-04-12 “0 51C型駆逐艦(ルージョウ型/旅州型)”
日本周辺国の軍事兵器2016-07-17 “054A型フリゲイト(ジャンカイII型/江凱II型)”
日本周辺国の軍事兵器2013-02-22 “926型潜水艦救難艦”