2017-11-01(平成29年) 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部によれば(29-10-30)、同日ロシア空軍戦略爆撃機Tu-95型機2機が、本州日本海側舞鶴付近で我が国防空識別圏(ADIZ)に侵入、そのまま能登半島、佐渡島、男鹿半島沖を北上し、北海道宗谷岬沖を経て、北海道をほぼ半周、そこから宮城県沖を南下、千葉県の犬吠埼沖に達しそこで反転北上、同じコースを通り宗谷岬に達し、シベリア方面に退去した。
これに対し航空自衛隊は、小松基地第6航空団、千歳基地第2航空団などに所属する戦闘機を緊急発進させ領空侵犯を防いだ。
図1:(統合幕僚監部)ロシア空軍戦略爆撃機ツポレフTu-95型機。1956年に配備が始まったが今でもロシア空軍の重要な一翼。Tu-95型機はこれまでにも頻繁に我が国周辺に飛来、領空に接近飛行を行い、我が空自の対応を試し、対空レーダー機能の偵察を含む飛行を行なっている。
1984年から新型のTu-95MSに更新、63機が配備されている。タス通信は報道していないが、今回飛来したのは、去る8月22-24日と同様、最新型のTu-95MSと見られる。
軸馬力14,800hpのクズネツオフNK-12MAターボプロップを4基、最大離陸重量185㌧、最高速度925km/hr、航続距離は6,400km。海軍用に対潜哨戒機Tu-142がある。
Tu-95MSは、射程2,500 kmの巡航ミサイルKh-15を6発、胴体内のドラムランチャーに搭載可能、我国全域がその射程に入る。また、Tu-95MS-16型では、ラドガKh-55巡航ミサイルをランチャーに6発と翼下面に10発、合計16発を搭載する。
Kh-15は対地攻撃用巡航ミサイルで、射程は300 km、発射後高度40,000 mに上昇、それから目標に向かい急降下して速度マッハ5に加速、目標に着弾する。
Kh-55は亜音速巡航ミサイル、射程2,500 km、速度マッハ0.75、核弾頭搭載可能、中国に輸出している。いずれも警戒すべき巡航ミサイルだ。
図2:(統合幕僚監部)10月30日飛来したロシア空軍戦略爆撃機Tu-95 2機の飛行経路。我が国防空識別圏(ADIZ)のかなり内側、領空に接近して飛行を続けた。
図3:参考に我国の防空識別圏(ADIZ= Air Defense Identification Zone)を示す。日本の防空識別圏は、大東亜戦争の終結直後1945年(昭和20年)に米軍が設定した空域をそのまま踏襲し、当時の防衛庁により昭和44年(1969年)に設定された。その後中国が平成25年(2013年)11月に尖閣諸島の領有権を持ち出し、自国の防空識別圏を拡大設定し、現在に至っている。我が国政府はこの中国による一方的な防空識別圏設定を認めていない。
図4:(平成28年度防衛白書)航空自衛隊戦闘機航空団の配置図。第6航空団/小松、第2航空団/千歳、第3航空団/三沢、第7航空団/百里、第5航空団/新田原、第8航空団/築城、第9航空団/那覇の各基地に配備されている。
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