元・国務大臣秘書官 鳥居徹夫
モリカケも吹っ飛ぶ小池ワンマンショー
この1年、ニュースの主役は何といっても小池百合子都知事であった。
昨夏の都知事選挙を皮切りに、今年に入ってからの千代田区長選、都議選、衆議院総選挙と、いずれも小池知事が政局の中心であり、小池知事本人の浮沈も、まさしくジェットコースターそのもの。
小池百合子は、昨夏の都知事選で「ホップ」、今夏の都議選で「ステップ」と跳躍したが、ジャンプを目指した今秋の衆議院総選挙では「ドボン」と沈んだ。
解散を視野に国会で安倍政権を追及する民進党など野党は、モリカケ(森友・加計騒動)に見られるように安倍総理の個人攻撃に終始したが、何一つ立証できなかった。
野党共闘をめざす動きも頓挫した。今秋の総選挙では民進党が公認候補を出さず、小池知事が代表を務める希望の党への合流を目指した。
あるラジオ・パーソナリティは、取材は「永田町でなく西新宿(都庁、都議会)だよ」と苦笑するほどの小池ワンマンショー(ウーマンショー?)だった。
朝鮮・韓国に「待った!!」をかけた小池知事
昨年夏に小池都知事が就任して最初に手がけたのは、舛添要一前知事がすすめていた韓国学校の用地貸与計画を白紙としたことであった。
これは新宿区矢来町にあった旧都立「市ケ谷商業」の跡地を、待機児童の多い新宿区が保育所の敷地に求めた要望を、こともあろうに舛添前知事が拒絶し韓国学校増設の用地としようとした。
また小池知事は、東京都内で朝鮮学校11校を運営する東京朝鮮学園の教育環境や経営状況を調査した報告書を、都のホームページに再掲載させた。
この報告書は、朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)と朝鮮学校の「緊密で不可分な」関係を提示していたが、いつの間にか削除されていたという。
今年に入ってからも小池知事は、都立横網町公園(墨田区)で9月1日に営まれる関東大震災犠牲者追悼式典への追悼文送付を断った。
この式典の事務局は日朝協会で、6000余名も朝鮮人が虐殺されたという虚偽宣伝がはびこっていた。
これらは、自民党都議団が手をつけられなかった。それは韓国と関係の深い自民党議員が少なからず存在したからと言われる。
日替わりメニューの政治情勢
小池知事は、希望の塾を立ち上げ、地域政党として「都民ファースト」を発足させ、都議選に向け候補者の擁立を図った。
今年2月の千代田区区長選挙で、都民ファースト推薦候補が、自民党推薦候補の3倍の得票で大勝したことから、既成政党が脅威に感じた。
そのため多くの民進党の現職都議や前都議が離党し、小池百合子知事が代表の「都民ファースト」の公認・推薦候補者となった。
都民ファースト候補者は公明党の推薦や連合東京との政策合意もあり、7月の都議会議員選挙では49議席を獲得し、追加公認を合わせて都民ファーストは55議席と大躍進した。
23名当選の公明党を合わせると小池与党で、都議会127議席の過半数を大幅に超える圧勝であった。
離党者が相次ぐ民進党は5議席(4年前は15議席)と大敗。蓮舫代表が辞任し、新代表に前原誠司が就任した直後から、国会は解散をめぐって大揺れとなった。
一方、小池知事は、国政政党として「希望の党」を立ち上げ、都議選の勢いが総選挙も続くかと思われた。
国会解散の9月28日、民進党は「候補者を擁立せず、希望の党に公認を申請する」ことを決定したが、希望の党の基本政策に異議を唱えた枝野幸男らが立憲民主党を立ち上げ、また無所属で選挙に挑む候補者もいた。まさに政局は日替わりメニューそのもの。
民進党は、「小池にはまってさあ大変」どころか「枝野が出てきて枝分かれ」となり、野党共闘がめざす「与党1、野党1」の構図も崩れた。
共産党の志位委員長は、「希望でなく、失望の党」と失望を隠さなかった。
しかし小池氏が率いる「希望の党」は、風を吹かすことができず、現有議席を確保できなかった。
都議選との大きな違いは、自公連立を優先する公明党が、希望の党の候補者を推薦しなかったこと。また連合と希望の党との間に、政策協定が締結されなかった。
ちなみに連合推薦候補者は、解散前に手続きを終えた民進党所属だけであった。
小池百合子の逆襲も!! ポスト安倍は不在
小池知事は、これから都政に専念するというが、このままでは終わらないのではないか。
三国志の「赤壁の戦い」で大惨敗を喫した魏の曹操が、最後は中原を制した。
平成に入ってからでも山岸章が率いる「連合の会」は、平成4(1992)年の参議院選挙で22候補者を擁立したが全敗した。
選挙の争点がPKO(国連平和維持活動)の自衛隊派遣への対応であったことから、パーフェクト・ノック・アウト(PKO)と皮肉られた。
にもかかわらず、翌平成5(1993)年に非自民連立の細川護煕政権が誕生した。この細川政権誕生の渦中に小池百合子がいた。
小池百合子は、ポスト安倍に有力候補がいないことから、総理をめざして戦略再構築を図ろうとしても不思議ではない。(敬称略)
ー以上ー