2018-01-29(平成30年) 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の一連の発表によれば、1月に入ってロシア軍の我が国周辺における活動は依然活発で、領空、領海侵犯を防ぐための警戒・監視体制を揺るがせにできない状況にある。以下に発表された3件を示す。
- 30-01-06(土);—ロシア海軍IL-38哨戒機1機が北朝鮮沖から飛来し、日本海の能登半島沖から北上、北海道沖で西に変針、シベリア方面に立ち去った。空自戦闘機が緊急発進、領空侵犯の警戒に当たった。
- 30-01-06(土);— 午前0時頃、ロシア海軍ウダロイI級駆逐艦1隻とボリスチリキン級補給艦1隻が東支那海から下対馬の南西120 kmの海域を北東に進み、対馬海峡を北上、日本海に向けて航行した。発見、追尾したのは海自厚木基地の第4航空群所属のP-1哨戒機および佐世保基地地方隊所属の護衛艦「あまくさ」である。これら2隻のロシア艦はさる10月3日対馬海峡を南下、東支那海に入ったものと同じである。
- 30-01-19(金) ;—ロシア空軍Su-24戦術偵察機1機が飛来し、日本海北海道沖から能登半島沖に南下、反転してシベリア方面へ向かった。空自戦闘機が緊急発進、領空侵犯の警戒に当たった。
図1:(海上自衛隊)1月6日、対馬海峡海域でロシア艦艇を発見、追尾した P-1哨戒機。川崎重工が開発・製造する機体でP-3C哨戒機の後継機。2013年から厚木基地の第4航空群第3航空隊に配備されている。これまでの配備は10数機、発注総数は33機である。全長38 m、翼幅35.4 m、最大離陸重量78 ton、エンジンはIHI製 F7-IHI-10推力13,500 lbs x 4基、航続距離8,000 km。対艦ミサイル、短魚雷など9 tonを搭載できる。
図2:(統合幕僚監部)2018年1月6日と同19日のロシア空軍機および艦艇の動きを示す図。発表の3件をまとめて表示した。
図3:(統合幕僚監部)イリューシンIL-18型4発ターボプロップ旅客機を対潜哨戒機に改装したのがIL-38。1967年初飛行、以来40機近くがロシア海軍で使われている。IL-18の胴体を4m伸ばし、主翼を前方に移し、尾部にはMAD(磁気探知装置)を装備する。前部胴体の下にあるドームはレーダー。胴体前後には兵装庫があり対潜魚雷などを収納できる。配備中の多くは近代化改修済みのIL-38N型で新型レーダーを搭載、半径320 kmの空域、海上の目標を探知できる。全長39.6 m、翼幅37.4 m、全備重量63.5 ton、航続距離9,500 km、兵装は対艦ミサイルなど9 tonを搭載できる。しばしば我国沿岸に飛来している。
図4:(統合幕僚監部)「艦番号548」はロシ海軍名“大型対潜艦「アドミラル・バンテレーエフ」”。ウダロイ(Udaloy)I級ミサイル駆逐艦は満載排水量8,500㌧の大型対潜艦で、強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、対潜ヘリコプター2機、それにSA-N-9型個艦防空ミサイルを装備する。1980—1991年にかけて12隻が作られ、現在8隻が就役中。太平洋艦隊にはこの内4隻が配備されている。日米海軍のイージス艦に近い性能と兵装を持つ。
図5:(統合幕僚監部)
図6:(統合幕僚監部)写真は19日に我国防空識別圏を侵犯したロシア空軍のSu-24戦術偵察機。スーホイ(Sukhoi)Su-24攻撃機の後期量産型Su-24Mを偵察機型に改装した機体でSu-24MRと呼ぶ。機首にはBKR-1側方視認レーダーを搭載、胴体下面には赤外線センサー、電子偵察機材、各種カメラを搭載、主翼下面には電子情報蒐集のELINTポッドを備えている。ロシア空軍の戦術偵察機の主力。
基本形のスーホイ(Sukhoi) Su-24フェンサー(Fencer)は、超音速の全天候攻撃機で、可変後退翼、双発で並列座席に乗員2名が乗る。1974年就役開始、1993年までに約1,400機が作られた。航続距離3,000 km、爆弾・ミサイル搭載量は8 ton。構造、電子装備の近代化改修が行われSu-24M2として配備されている。最大離陸重量は43,8 tonの大型機で、可変後退翼は飛行モードに応じて4段階にセットできる。エンジンはサターン(Saturn)AL-21F-3A、アフトバーナ付き推力24,700 lbsを2基装備する。ロシア空軍では各種合わせて約370機を配備している。
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