2018-03-02(平成30年) 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表によれば、2月末に中国海軍艦艇と情報蒐集機が相次いで東支那海から対馬海峡を通過、日本海に入り、往復した。すなわち;—
- 2月26日(日曜)午前10時下津島西南西70 kmの海域を北東に進むジャンカイII級フリゲート1隻を発見、同艦は日本海に進出したが、反転して28日(水曜)には対馬海峡を南下、東支那海に向け立ち去った。発見、追跡したのは海自厚木基地第4航空群所属のP-1哨戒機と下関基地第43掃海隊所属の掃海艇「うくしま」である。
掃海艇「うくしま」は艇番号MSC-686の中型掃海艇で、「すがしま」型の12隻中の6番艇、就役は2003年。基準排水量510 ton、速力14 kt、乗員45名、艇体は木造、イギリス海軍サンダウン級掃海艇がモデル、サンダウン級が搭載する情報処理装置、機雷探知機、機雷処理具を採用している。
- 2月27日(火曜)に中国軍Y-9情報蒐集機1機が東支那海から対馬海峡付近の我国防空識別圏(ADIZ)を侵犯、日本海に入り、再び反転して同じ航路を経由、東支那海に入った。航空自衛隊は西部航空方面隊の基地から戦闘機を緊急発進させ、領空侵犯に備えた。一方中国軍のサイトChina Military Online は2018- 03-01 付けで“中国機には国際間空域を飛行する権利がある”と題し、Huang Panyue編集長名で次のように報じている。
『中国外務省は、中国機が韓国防空識別圏を侵犯したのに対する韓国政府から受けた強い抗議を拒絶した。中国機は国際法、国際慣行に準拠して国際間の空域で演習を行なったものである。防空識別圏(ADIZ)とは領空の意味ではない。この日、中国機(Y-9を指す)は事前通告なしで4時間に渡り韓国ADIZ内を飛行した。これに対し韓国空軍はF-15およびKF-16戦闘機を合計10機以上発進させて警戒・妨害を試みた。中国軍Y-9は、午前9時34分に韓国ADIZに入り鬱陵島の北西55 kmまで飛行したあと2時1分に圏外に出た。中国軍はこれからも公海上での飛行の自由を守るため、東支那海および南支那海で同様の訓練を続ける。』
居直りとも受け取れる中国軍の声明と言えよう。中国の防空識別圏内に我が自衛隊機や韓国空軍機が進入したらどう対処するのか、考えれば分かることだ。今回の件では我国も防空識別圏を侵犯されたが、外務省は中国政府に対し抗議は勿論のこと遺憾の意の表明すら行っていない。
図1:(統合幕僚監部)2月26日(日曜)午前10時下対馬の西南西70 kmの海域を北東に進むジャンカイII級フリゲート 、同艦はその後28日に反転、再び同海域を南下、東支那海に向け立ち去った。
艦番号549は、[江凱II] 054A型と呼ばれる次世代型ミサイル・フリゲート。1番艦「舟山」は2008年1月に就役、同型艦は25隻になる。写真の艦番号549は8番艦「常州(Changzhou)」、2011年5月就役。満載排水量4,500 ton、速力27 kt。対空兵装はロシアの)M-38Mを改良した射程25-42 kmのHQ-16(紅旗16)を32セル垂直発射装置(VLS)に収めていて、僚艦防空能力を持つ。対艦、対潜水艦兵装にも優れ、フリゲートとはいえ4,000 tonを超える大型艦で航行性能が高く、遠洋航海を容易にこなせる。
図2:(統合幕僚監部)Y-9情報蒐集機・機体番号9211は、去る1月29日東支那海から対馬海峡経由、日本海に入り、反転、同じコースで立ち去った機と同一機だ。写真で見ると、機首と胴体側面前後にアンテナを収める膨らみがあるので「Y-9JB」型らしい、通信、レーダー波、などを傍受し諜報活動を行うELINT型と思われる。基本形は空軍用中型輸送機Y-9で、全長36 m、翼幅38 m、全備重量65 ton、貨物積載量20 ton、航続距離1,000 kmとされる。
図3:(統合幕僚監部)2月27日(火曜)の中国軍機Y-9情報蒐集機の東支那海・日本海の往復飛行経路。統合幕僚監部発表の地図にChina Military Online 2018-03-01の記事内容を追加した図。中国側の報道では、Y-9は鬱陵島北西55 kmまで進出、その後反転して往路と同じ航路で東支那海に向け立ち去った。位置関係は、隠岐島と竹島間は155 km、竹島と鬱陵島間は87 kmである。
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