2018-05-25(平成30年) 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表によれば、5月のロシア機の我が国近傍における行動は依然として活発である。今回の一連の行動は4月13日、同17日にIL-38およびTU-142哨戒機が同様な飛行をしたのに続く行動である。我が国マスコミは例によって一部を除き全く触れていない。
すなわち;—
5月11日:TU-142哨戒機2機が秋田県沖に飛来、南東に変針、京都丹後半島および島根県壱岐の島の北方で旋回したのち立ち去った。
5月15日:IL-38哨戒機1機が北海道西の空域に飛来、南下して京都丹後半島沖合で複雑な飛行を繰り返して再び北上、北海道西岸沖から西に立ち去った。
5月23日:TU-142哨戒機1機が北海道西岸の我国領空に4 kmまで接近しながら南下、秋田県男鹿半島沖合の空域で大きく旋回したのち、西方に立ち去った。
統幕幹部によると、いずれの場合も航空自衛隊の戦闘機が緊急発進して警戒に当たり、領空侵犯を防いだ。
これらは大型の対潜哨戒機であるところから、日本海でロシア原潜が訓練を行い、それに参加したのか、あるいは、“ロシア海軍情報管理局”が5月22日に北方艦隊の戦略原潜ユリー・ドルゴルスキーが白海で4基の弾道ミサイル“ブラバー”の一斉射撃を行なった、と報じているので、これに関連した我国BMDレーダーの反応を探るのが目的だった、のかもしれない。
目的は何であれこれら一連のロシア機の我国領空近くでの行動は、我国に対する威圧行為に他ならない。政府はその都度明確にロシア政府に抗議をすべきだと思うが、抗議をしたという話は聞いたことがない。
図1:(統合幕僚監部)ツポレフTU-142はロシア海軍の対潜哨戒機で、ロシア空軍の戦略爆撃機TU-95型機を対潜哨戒機に改造した機体。新型のTU-142MZは北極海、太平洋で活動するロシア戦略原潜の位置を把握できる能力がある。ロシア海軍では27機を運用している。軸馬力14,800hpのクズネツオフNK-12MPターボプロップを4基、最大離陸重量185㌧、最高速度925km/hr、航続距離は6,500km。
図2:(統合幕僚監部)イリューシンIL-18型4発ターボプロップ旅客機を対潜哨戒機に改装したのがIL-38。1967年初飛行、40機近くがロシア海軍で使われている。IL-18の胴体を4m伸ばし、主翼を前方に移し、尾部には潜水艦探知用のMAD(磁気探知装置)を装備。前部胴体の下のドームはレーダー。胴体前後の兵装庫には対潜魚雷などを収納する。
図3:(統合幕僚監部)ツポレフTU-142対潜哨戒機。図1の説明参照。
図4:(統合幕僚監部)5月11日、15日、23日のロシア機の行動を一つにまとめた図。
—以上—