審議拒否・採決妨害― 何でも反対の無責任野党でよいのか


2018-05-31(平成30年) 元・文部科学大臣秘書官 鳥居徹夫

 

 

「先に安倍内閣打倒」ありきの野党 

この通常国会は、(維新を除く)野党の審議拒否や暴力的採決妨害などのオンパレードである。

5月30日に一年半ぶりに党首討論が行われた。立憲民主党の枝野幸男や共産党の志位和夫はモリ・カケのみに終始。国民民主党の玉木雄一郎も日米の経済摩擦を煽り顕在化させるような質問であった。

野党は誰一人として北朝鮮による拉致・核・ミサイル問題に触れなかった。日米首脳会談が6月7日に米朝首脳会談に先立ち行われるが、野党には総理をサポートしていこうという建設的な姿勢はなかった。朝鮮半島をめぐる国際情勢は、日本の平和・安全保障が重大な関心事になり、ようやく北朝鮮による日本人拉致被害者の救出にも、糸口が開けようとしているが、国会ではなおざりにされている。

拉致被害者の全員救出と帰国には、挙国一致で与野党を超えて、一枚岩で交渉を支えなくてはならないが、野党は「先に安倍タタキ」で関心がないのではないか。それどころか野党は、安倍内閣の拉致問題の対応にケチをつけ、国際社会に国論が分裂しているかのような印象を、国内外に与えている。

さらに無責任野党は、日本の安全保障に関しては、中東から原油を積んだタンカーが通る南シナ海で、中国が人工島を造成し軍事基地化している事実、や中国の軍事費増強にも見て見ぬふりである。

言うまでもなく国会は、与野党を超えて「国民の生命、自由および幸福追求に対する国民の権利」(憲法13条)のため、また国益の増進に向けて取り組まなくてはならないことは言うまでもない。

 

かつての民主党は、野党でも国益にかなう法案に賛成した 

かつて第一次安倍政権(2006~2007年)では、防衛庁を省へ昇格させる防衛省設置法案や、「昭和の日」制定の祝日法改正法案は、当時野党の民主党も賛成し成立した。筆者(鳥居)は当時、民主党政権の国会対策委員長の政策秘書であったので、今でも鮮明に覚えている。

また2007年に成立した海洋基本法は、細野豪志ら与野党議員が共同提案者で、自民党民主党共産党国民新党の圧倒的賛成で、社民党のみが反対した。

国際海洋法条約を受けての国内法整備と体制づくり、(縦割り行政)内閣全体で一体化した横断的対応を提起した議員立法であった。

あの教育基本法案の改正法案についても、民主党は政府案への対案として「日本国教育基本法案」を提出し、自民党との合意に向けた修正協議がかなり進んでいた。ところが当時民主党代表であった小沢一郎が、(抵抗野党路線で)チャブ台返ししブチ壊してしまった。そのため教育基本法改正案の法案一本化に向けた作業が吹っ飛んでしまったのである。

 

「働き方改革」にも反対、「先に安倍内閣打倒」ありきの野党 

今国会の焦点である「働き方改革法案」は、ようやく5月31日に衆議院を通過し、参議院で審議される。時間外労働の上限規制を罰則付きで規定するなど、労働基準法70年の歴史上で画期的な改革と言える。

この法案に対し(維新を除く)野党は、高度専門職の労働時間除外があることを理由に、過労死促進法案などと事実を歪め、反対のための反対に終始している。この高度専門職の対象は年収1075万円以上であり、年間104日の休日確保などの健康確保措置を義務づけや、労使による合意や本人の同意を適用する条件としている。また予想に反して過重な労働を強いられた場合は、従前の労働条件に戻れることや、産業医・産業保健機能の強化などが盛り込まれている。

野党は、過労死促進法案と非難しているが、この法律の施行で過労死・過労自殺が激減する結果となったら、野党はどう責任を取るのであろうか。まず「隗より始めよ」で、一部国会議員の公設秘書(特別国家公務員)のブラックな労働実態の改善も、野党国会議員にこそ求められるのではないだろうか。

「先に安倍内閣打倒ありき」の野党6党(立憲、民進、希望、共産、社民、自由)は、財務省事務次官のセクハラ疑惑や、財務省理財局の決裁文書の改ざんなどを理由に、審議拒否など国会を混乱させていた。これら野党は、セクハラ疑惑で財務省事務次官が辞任したことを取り上げ、「麻生太郎財務大臣が辞任するまでは審議を拒否する」として、4月20日から国会審議をボイコット。

焦点の「働き方改革法案」が審議入りしたのは4月27日であったが、野党6党の国会欠席は続いたままであった。この4月20日からの審議拒否に対し、24日の衆院厚生労働委員会に参考人として出席した大阪市の吉村洋文市長は「なぜ、維新以外の野党の国会議員がいないのか?」「不祥事追及は大切だが重要な法案審議は別の話で、出席拒否は職務放棄」などと批判した。

さらには野党支持者からも「大型連休は最大9日間なのに、野党議員は18連休」との批判もされた。この1年5カ月間、野党はモリ、カケ、ニッポーと叫ぶだけで、週刊誌情報による政府高官のスキャンダルまで国会の場に持ち込み、政府攻撃の材料にした。

ところが、これら野党の審議拒否戦術が大失敗に終わり、批判の矛先は野党に向かった。

 

審議妨害の連続、採決妨害に手段を選ばぬ横暴 

5月連休明けから、維新を除く野党は、審議拒否でなく議事妨害の抵抗戦術に形を変えた。18日間も国会を欠席したにも関わらず、野党は、『質問時間が足りない』と言うのである。与党は国会に出席し、この間しっかりと質疑していた。そして国会内にある健康トレーニングセンターでは、汗を流す野党議員がみられたという。

法案は、野党側に割り当てられた質問時間が経過したことから採決となる。ところが野党側は採決をさせないため、厚生労働委員長解任決議案を提出した。

その理由は「委員長の職権で、委員会を相次いで開いた」とのこと。そもそも18連休をとって質疑を放棄していたのは野党なのである。野党の持ち時間での質疑要求というのは、まさに時間稼ぎのパフォーマンスに過ぎなかった。

この厚生労働委員長の解任決議案は、衆議院本会議の採決で否決された。そこで野党は5月25日に、厚生労働大臣不信任案を提出した。またもや厚生労働委員会が中断となり、衆議院本会議で否決された。

同日、厚生労働委員会が再開され採決となり、野党議員が厚生労働委員長席に飛びかかり、マイクを奪い、委員長の議事進行メモを取り上げるなど、暴力的に採決を妨害した。その混乱の中、法案は自民・公明と維新の会の賛成多数で可決した。29日になって国民民主党の泉健太国対委員長は、「国民民主党としては物理的にマイクを奪う、紙を取り上げるといった行為はしない」と、立憲民主党の乱闘国会戦術と一線を画す考えを表明した。遅すぎである。

野党は審議が不十分と抗議したことから、委員会では補充質疑が週明けの30日に行われた。長期に国会を欠席していた野党のために。しかも委員会で採決が終わっているのであるにもかかわらず。ようやく31日に衆議院本会議に上程され可決、参議院に送付された。

いまの野党は、まさしく小沢一郎と同じ「壊し屋」である。これら野党には政権交代を目指そうという意欲も気概もないし、国益や国民全体の福祉向上ではなく「反アベ」で動いていると言っても過言ではない。(敬称略)

—以上—